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オリーブの花と共に旅して ポルトガル・スペイン紀行後篇

 ポルトガルからスペインへは夜行列車で移動した。サンタ・アポローニャ駅21時25分発、ルシタニア号の1等寝台。指定された部屋には2段ベッドがセットされ、タオルと水、アメニティセットが置いてある。定時に発車すると、車掌がチケットを回収しに来た。キオスクで買った缶ビールを飲みながら車窓風景をしばらく楽しんだが、早目に寝ることにした。
 翌朝、列車はマドリードのチャマルタン駅に40分遅れで到着。ホテルまでタクシーに乗ると、大きくてきれいな車。古くて汚い車ばかりだったポルトガルとは大違い。
 マドリードは1泊のみ。プラド、ソフィア王妃芸術センターと、美術館をハシゴ。この日は、サッカーW杯のスペイン、ポルトガル戦。町中でも各所にテレビを置いて生放送中。ビールを買いにスーパーへ行くと、スペインが得点したのか大歓声が沸いた。結局、最後にポルトガルのロナウドがハットトリックを決めて3対3の引き分け。
 マドリード、アトーチャ駅からは新幹線AVEに乗車。乗り心地は快適。車窓にはオリーブ畑がずっと続く。途中駅から代行バスに乗り換え、昼過ぎ、グラナダに着いた。猛烈に暑い。6月半ばというのに気温は36℃。
 狭い路地に面したホテルにチェックインし、近くのバルでランチ。ビールを頼むと、揚げたナスが付いて来た。グラナダのバルならではのサービスが嬉しい。ボケロンと呼ばれるカタクチイワシのフライ、レタスのコルドバ風サラダ、どちらも美味しかった。
 夕方、翌日のアルハンブラ宮殿見学とフラメンコの予約をしておいた現地旅行会社へ。日本人スタッフからお勧めのレストラン情報など教えてもらった後に、オリーブの花粉症が今年は例年以上にきつく、ふだんは平気な人も苦しんでいると教えられた。旅行中、ずっと鼻がぐずぐずしていて風邪とばかり思っていたが、花粉症、しかもオリーブの花が原因とは、驚いた。
 翌日は朝一番でアルハンブラ宮殿へ。日本語音声ガイドを聞きながら、宮殿内を巡る。今日も朝からすでに30℃を超えているが、丘の上に立つ石造りの宮殿内は風が吹き抜け涼しい。なるほど最上の立地なのだ。緻密な壁の細工や鍾乳石の天井、光と影のコントラストなど、見惚けるばかり。庭の花々も丹精されている。町中では犬しか見なかったが、宮殿内には猫が多い。
 夜は楽しみにしていたサクロモンテの丘で洞窟フラメンコを鑑賞。ここはロマの人達によるフラメンコ発祥の地。少し前に観たドキュメンタリー映画の舞台でもある。案内された洞窟風の部屋に日本人ツアーの一行が入ってきたのは些か興醒めだったが、目の前で演じられたギターと踊りは一級品。とりわけ、映画にも出ていた高齢女性ダンサーの踊りには胸を打たれた。
 スペイン最後の訪問地はバルセロナ。滞在中の1日はガイド付きのガウディツアーに参加した。まずはモンジュイックの丘から地中海とバルセロナの街並みを一望。これから向かうサグラダ・ファミリアも工事のクレーンに囲まれて聳えている。
 サグラダ・ファミリアは、日本人彫刻家が制作担当という生誕の門から内部へ。ステンドグラス越しに差し込む光が美しい。エレベーターで塔の上へ上がると、市内が見渡せ、屋根の上のフルーツ群やキリスト像の顔などが間近に見えた。午後は、グエル公園、カサ・バトリョと、強烈なガウディ作品群に圧倒されっ放しだった。
 帰国前日は、午前中にピカソ美術館、午後は開催していることを偶然知った故東松照明氏の写真展と回った。バルセロナが芸術の街であることを実感。
 オリーブの花のせいか、結局、旅行中、鼻水が止まることはなかった。

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