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2024年7月 徳島

徳島へ最後に行ったのは甥っ子の結婚式。2年前の9月。長男夫妻、次男一家と勢揃いで、コロナ終息前の時期に出向いたが、台風接近により帰りが大変だった。
今回はJALのバーゲンでふたり往復で3万円ちょっとで済んだ。宿は、まあ、いろいろあって結局独身に逆戻りした甥っ子がひとり暮らすカミさんの実家。大きな家で部屋もたくさんある。

雪がほとんど消えた富士山がくっきり見えた。

空港には義弟ヨメが迎えに来てくれた。まずは荷物を置いて。甥っ子は仕事だが、元ヨメと飼っていた柴犬が昼間は留守番している。昔は吠えつかれた覚えがあるが、しばらく興奮した後で、すり寄って懐いてきた。夕食は、義弟夫妻と甥っ子と5人で亀甲でお寿司の予定。その前に、近所のスーパーへ買い出し。目の前を流れる助任川に架かる橋が工事中。数年かかる大工事みたい。そのために前の道路が渋滞するようだ。

助任橋は完全に掛け替えをするらしい。歩行者と自転車だけは迂回路が設けられている。

シャワーを浴びて、ビールをグビリ。一服してから、さて、亀甲へ。

亀甲もずいぶん客層が変わったらしい。最近は、この付近に高額なマンションや住宅が増えて、そういう住人に人気らしく、なかなか混み合うことが多いのだそうな。で、昔は居酒屋使いをして毎晩のように通っていた常連さんがこれなくなり、料金も上がったとか。

これまでは日本酒は芳水の冷酒ぐらいしかなかったのに、あれこれ置くようになってる。その中から、日本晴れ、をチョイス。神山の酒米と湧水で芳水が仕込んだ酒。仕掛けたのは、食事したこともある神山のかま屋というレストランなどを経営するグループ。フードハブ・プロジェクトと名付けられ、地産地食をキーワードに地域をあげて自然を守りつつ育てて食べる循環を作ろうと活動しているらしい。

日本晴れ。酒米の名前でもある。しっかり米の旨味を引き出していて好ましい旨さ。
トップバッターはハモ。我が家の近所のスーパーで売ってるひからびたようなのとはまるで違う。ふんわりしっとり。ジュワッとハモの味が染み出す。ワサビ醤油、酢味噌、梅肉の3通りの味でいただく。もちろんスダチは欠かせない。
生ずし。亀甲の鯖寿司も本当に美味しいのだが、最後になるとお腹いっぱいで食べられない。だから、こうして初めに生ずしでいただけるのはめっちゃ嬉しい。

さて、亀甲はなんでも美味しいのだが、とりわけここで食べるワタリガニは特別。それを今日は用意してもらっているらしい。ウワオ。

いやあ、身もカニ味噌も旨い。そして、とびきりは、甲羅にたっぷりへばりついた内子。蟹スプーンでこそげて口に放りこみ、日本酒で口中を洗う。ふー、幸せな時間。

甥っ子は、若いし、ガタイもいいので、よく吞みよく食べる。黒糖焼酎の水割りをグビグビ吞みつつ、握りをガンガン食べている。
地ダコも、カンパチ刺身も旨い。おかわりした日本晴れは、今度は常温。おお、こっちの方が濃くて旨い味わいが広がっていく。トリガイ、漬けマグロ、イカなど握ってもらい、巻物もいただき、〆はウナギ握り。皮がパリッと焼けて美味しい。そうそうシジミ汁もここは旨いんだ。いやあ、美味しかった。ご馳走様でした。
帰る時、助任川の向こう側で阿波踊りの練習をしているのが見えた。

翌朝は、2年前は台風で行けなかったお墓参りへ。

ご住職のボケ方が激しく、数年前にこのままでは勤められないのではと思ったが、案の定、違う方が住職として来られたようだ。今回は自分たちだけで、墓掃除とお詣り。

カミさんは友達と会う約束をしている。昼メシはひとりで、懐かしのお好み焼き屋いか十へ。息子に代替わりしてレベルダウンしていたが、少しはマシに成長したかと行ってみたが、12時なのに客は誰もおらず。冷房がないのは昔と一緒。冷風機の風だけ。メニュー見るとずいぶん値上がりしている。これじゃ昔なじみのお婆さんたちは来なくなるかも。

肉いか豆天、なんと1000円。昔は700円もしなかったんじゃないかな。

結果、やっぱりダメ。べちゃっとした焼き上がりは素人仕事。お母さんが焼くと、ふんわりカリッとしてたのに。もう来るまい。
新町川沿いのビルで、徳島大空襲展をやっていたので、のぞいてみた。

徳島は空襲で町の大半が焼かれた。その前の繁栄時代、焦土と化した空襲直後、そして戦後の復興期、それぞれの時代の写真が展示されていた。
空襲時にも焼け残った貴重なビル。ここで写真展が開かれていた。

いかりや珈琲店で、美味しいコーヒーを飲んで一服。無数のサギが相変わらず木に群がっている城山を抜けて帰宅。
午後は、市内から西へ少し走った国府町あたりへ。まず、市立考古資料館。

残念ながら縄文時代の遺物はあまり多くはない。
土偶ならぬ木偶があって驚いた。

資料館周辺には古墳が多いようで、すぐ裏手にも矢野古墳があるというので山へ入ってみた。

矢野古墳。横穴式の石室が見学できる。

次は、ここが目的地。人形のムラ阿波木偶文化資料館。事前に電話予約が必要。この日、午前中は団体の予約があり、15時ならと言われていた。徳島にはかつて多くの人形座があったそうで、ここ国府町は人形を作る人形師が一番多かったのだという。中でも伝説の名人、明治時代に活躍した天狗久も国府町の人。その作品も展示されている。展示される人形の数は日本一という。残念ながら展示室は撮影禁止。説明してくれたのは、各地を人形と共に回っている女性。
そもそもきっかけは、伊吹島。5月に訪れたが、まもなくイワシ漁が始まるが、その前に大漁を祈願して徳島からデコ(木偶)回しが来ると教えられたのだ。そのデコ回しの本拠地がここ。
彼女らの本来の仕事は、1~3月に正月の祝いに徳島各地で家々を回って、三番叟を演じる門付け芸。伊吹島だけは特別で、彼らにとっては正月以上に夏のイワシ漁が大切なため、漁の前に演じてもらっている。
こちらのデコ回しの特徴は、演者ひとりで人形も使い、唄も語りも行う。舞台も人形を運ぶ箱。そのため箱回しとも呼ばれてきた。人形は古いものも修理を繰り返しながら使い続ける。だから、名人初代天狗久の人形も多くが現役で使われている。

こちらの人形は三番叟以外の時に使うもので、全国各地に呼ばれて演じたりする。
人形の頭(かしら)。仕掛けが多い頭は5本の糸で片手で操る。もう片手は両腕を操るので、昔は足は動かせなかったが、今は足を使って操ることができるよう改良されている。

途中から、親方が話をしてくれて、現状の課題なども含めてかなり突っ込んだ話を聞かせてもらえた。次世代を担う子供達に教えたりもしているようだが、なんとか貴重な文化を伝承してほしい。
一度、帰宅して、今夜はカミさんとふたりで晩メシ。一度も行ったことがない店へ。

助任川に西日が差していた。架け替え工事中の自転車と人用の迂回路から。
徳島駅近くの角に立つさわらぎ。カミさんは昔、ランチで訪れたことがあるという。

予約電話は入れておいたので、カウンター端の席へ。生ビール。お通しは大きなツブ貝。いいねえ。鳴門レンコン天ぷらやナス揚げ出しなど野菜ものをまずは。そして子鮎天ぷら。
そろそろ日本酒。目の前に酒瓶が並んでいるが、なんと、おでんでんがあるではないか。数年前に亡くなった大坂屋という徳島の酒屋。そこにはずいぶんお世話になった。大好きな旭若松との出会い、蔵元を交えての交流会、阿波山田錦を使う全国の酒蔵との交流会など、どっぷり交わらせてもらったが、突然、メルマガが来なくなった。あれ、どうしたのかと思っていたら、しばらく後で旭若松の蔵へ新酒を買いに出かけた時に、前年秋、稲刈りの最中にコンバインに巻き込まれて亡くなったと教えられた。店はその後も続いているようだったが、縁もそれきり。で、大坂屋のご主人が自ら酒米を育てて仕込んでいたのが、おでんでん。基本的には会員限定酒だったが、何度か購入して吞んだこともある。それが今も続いているのか。疑問は後ほど解消された。

これがおでんでん。調べたら、27代目にあたるようだ。ふくよかな香りとぽってりした味わい。自分好みの酒である。
炙りサワラ刺身。瀬戸内方面ではサワラは好まれる。関東では刺身で食べさせる店はあまりない。炙った皮目が芳ばしく、柔らかい身と相まって、独特の美味しさを醸す。添えられた小さなレンコンもイカしてる。
イトヨリ唐揚げ。バリバリと頭も全部いただいた。

次々とお客さんがやって来て、忙しそうにしていたカウンター向こうのご主人。一段落したら、言葉を交わすことができた。大坂屋は、ご主人亡き後、奥さんや息子さんが跡を継ぐのかと周囲が思っていたら、そうはならず、結局、法人組織が買い取って営業継続。その中でおでんでんも造り続けているとのこと。へええ。よかったね。さらに、5月に蔵を訪れた阿波池田の三芳菊が、この春倒産し、買収されたとも。酒造りと経営自体は旧体制のまま引き続き委ねられているらしいが。それで、この前、蔵まで行って酒を買ったときにも、目の前にいた社長が一言も口を開いてくれなかったのか。千葉県の柏から来たと言うと、ご主人は昔、京都の料亭で修業していて、一時期、東京支店で働いており、その折に、よく柏そごうまで料理を運んでいたと話してくれた。そごうも今はないけどね。いや、いい店に出会えてよかった。

3日目は、日曜日。朝早くから、義弟夫妻と車で、びっくり日曜市へ。

朝メシは、キャベツ焼き。昔は1枚100円だったけど、150円に値上がりしていた。

土産を物色。お盆まではスダチは高いのが例年のことだが、今年はとりわけ高いようだ。駅の土産物店で見たら、1箱2500円とか3000円以上の店もあった。ここで安いのが出ていたら買うつもり。

ボウゼ(イボダイ)は、徳島の夏に欠かせない。開いて酢で締めて、ボウゼ寿司にする。祭りにつきもののご馳走。
おお、スダチが1㎏550円は安い。迷わず、買う。さらに神山の梅干しも350円で買った。

いい買い物をさせてもらった。今日もカミさんは昼は友達と会食。ぼくはひとりで県立博物館へ。

以前にも一度来たことがあると、現地へ行って気がついた。
自分の手で触ることができる展示があちこちに置かれていて楽しい。三葉虫に触れる、なんていいよね。

そして、ここでも阿波人形のコーナー。

明治時代が阿波人形の全盛期か。にしても、県内に58もの人形座とは!
初代天狗久の模型が置かれていた。名人の風格が滲み出ているような気がしてくる。
伝説の人形名人の作品。ここは撮影OK。

博物館を一巡りしてから、日帰り温泉で一休み。

えびすの湯。前に来たことがある。お湯に浸かって、湯上がりにざるうどんのランチ。

さて、県庁近くの倉庫街へ。ここがお洒落なエリアになっているらしい。最近開店して人気という洋菓子屋、PRISM LAB。

ゆったりした空間。左手には何枚もの賞状が飾られている。国内だけでなく国際コンクールの賞状も多い。広い店内には大勢のスタッフが働いていた。カウンター席もあって、イートインも可能。少々お高いけど。
洋菓子店の向かいはこんな感じ。観葉植物を売る店、お洒落な家具の店、カフェなど並ぶ。
これが買ってきたカルネ。ひとつ500円! 美味しかったけど。

最後の夜は、義弟夫妻と焼鳥屋へ。ここも初めての店。弁慶。古くからやってるそうだ。

予約してくれていたが、小上がりの席に案内されかけたので、それならカウンターの方がいいと言うと、直前に入店してテーブル席にいた若者グループが、テーブル席を譲ってくれた。ありがとう。助かります。

徳島へ来たら、親鶏を食べなくては。

親鶏のたたき。いや期待通り、期待以上の旨さ。しっかりした歯ごたえと濃い味。
天恵菇というブランドシイタケ。普通はもっと大きいのが特徴だが、これは大きくないタイプみたい。味はいい。

肝刺しがあれば絶対食べるべきと言われていたが、残念ながらこの日はなかった。でも、レバーも皮もせせりも、何でも焼鳥は美味しかった。そうそう親鶏の焼鳥も旨いのだ。酒は樽酒。メニューにイリカスがあった。こりゃ食べんとあかんわ。

牛ホルモンを牛脂で炒った徳島名物イリカス。それと野菜を炒めた一品だった。イリカスも部位によって味が違うのだが、黒いところは好きな部位。ちゃんと入っていて楽しめた。

3泊の徳島滞在、楽しく、美味しかった。ありがと!

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