見出し画像

2022年5月 秩父大滝の蕎麦屋、紺屋(こうや)

西沢渓谷を13時半過ぎに出発。雁坂トンネルを抜けると、あっという間に秩父の大滝だ。いつも秩父側から行くので、どんづまりの不便で遠い場所という印象が強いが、山梨側からこれほど簡単にアプローチできるというのは拍子抜けの感がある。
目指す蕎麦屋、紺屋(こうや)へ初めて来たのは、10年前。毎年、2月末から3月アタマに、セツブンソウを観るために秩父通いを続けて来たが、その都度、新たな蕎麦屋を発掘していた。その年は、雪も残っていてセツブンソウはほんの少ししか観られず、氷柱観光などして、その帰りにたまたま立ち寄った。昼を過ぎていたので、もう今日は蕎麦は出せない、と言われたが、頼み込むと作ってくれることになり、歴史を感じさせる家の話やご主人の世界を股にかけた遍歴など聞かせてもらった、というか、聞かされた。それが面白く、しかも蕎麦も美味しかったので、以来、通い始めた。昼だけでなく、近くに宿を取って、夜の特別コースなども何度も堪能させていただくようになった。それがコロナ騒動で、営業をやめたりして、ここ2年以上、すっかりご無沙汰していた。最近、訪れた人の写真を見ると縁側を新築したようで、それも気になっていた。

真新しい木材部分が新築した箇所。
屋根下の太い梁は九州産、それを支える柱は自分の山から切り出した材。
美しい佇まいになった。施工したのは宮大工。窓の桟は秋田杉だそう。

昼の通常営業はもう終わっていて、ぼくたちだけの貸切となっている。まずは、裏のクルミの木から若芽を摘んでこなくては。昔、クルミ若芽の天ぷらを食べさせてもらったことがあり、この季節ならではの味覚。ちょいほろ苦く、旨い。食べ過ぎるとお腹をこわすらしい。

クルミの葉っぱ。中心あたりのまだクルリと丸まった部分が最適。
最年少のW君が若芽を切ってくれた。


家の裏には薪がたくさん積み上げてある。
営業は週末の金土日のみ。もともと食べるためにやってる訳ではないので、
気まぐれに休んだりもする。ま、道楽、ですな。
ここはご主人、Kさんの実家。昔から地域の庄屋的存在。
130年ほど前に近所のもらい火で焼けたのを機に、自分の持ち山の木だけで建てた古民家。
すっかりきれいになった縁側。
山椒の葉も少し揚げてもらうことにした。

料理にかかる前に、今回初訪問のW君もいることなので、ご主人に解説をしてもらった。すると、今まで入れてもらったことのない居住スペースにまで案内された。香港に商社の支社長で暮らしたこともあり、日本に帰るとき、あちらで買ってきたというのが、これらのモノ。数百万円なり。荷を送った船賃より、国内の運送料の方が高く付いたとか。

1枚の木から掘り出された飾り板。すごい細工。
この箪笥が一番高かったそうな。フツーの家には、この高さでは入れられない。
つい最近買ったというお洒落なキャビネットには数十年前の貴重な酒類が並んでいた。
ご本人は飲むつもりはないと言う。売れば、高いよ、これは。

そして、部屋の中から見た新築のガラス窓。美しいねえ。

なるべく桟を細くしてくれと特注した。
敷板はヒノキの板。

神棚と造り付けの戸棚が立派すぎる。

三峯神社のお札が並ぶ。氏子総代でもある。

土間を見れば、真新しい上がり口。自作したのだそうな。

店を休んでいた間に、いろいろ家の手入れをしていたとのこと。

さあ、そろそろ、お食事タイム。庭でいただく。

トマトもレタスも新鮮で美味しい。
秩父一帯はホルモンをよく食べる。これは辛口の味付け、小鹿野で買ってきたと言われたかな。
七輪で焼きながらいただきます。ドライバーには誠に申し訳ないが、ビールを吞んでしまった。
このキュウリは秩父キュウリという品種だそうで、加賀キュウリほど太くはないが、太めで旨い。
こんな広々した景色を眺めながら。
庭のモミジの葉っぱ。ヘリコプターが付いていた。
新築した縁側部分、釘は使われていない。

さあ、そろそろ、お蕎麦をいただきますか。

沢の水を使うので、蕎麦もひときわ美味しくなる。
久しぶりにいただく蕎麦は、実に旨い。
天ぷらは、クルミの若芽、山椒の葉、肉厚の地元シイタケ。クルミ、もう少し食べたかったなあ。

いやあ、大満足。今度は、また泊まりがけで来ないとあかんなあ。心置きなく、酒を吞みたいし。

みんな幸せそうな顔してる。By M.Ogata

ご馳走様でした。また、来ますから。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?