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優雅な舞 ~【櫻坂46】「1st YEAR ANNIVERSARY LIVE」にむけて~

 櫻坂46の1周年ライブ「1st YEAR ANNIVERSARY LIVE」まで、あと2週間となった。各々の活動の合間を縫って、レッスンが重ねられていると思われるが、日本武道館で行われる記念すべきライブだけに期待が膨らむばかりである。

 先月終了した全国ツアーライブを思い返してみて、印象的だったのは、楽曲の間で披露されたダンストラック部分である。特に最初のカラフルな衣装から一転して、尾内さんデザインの美しい造形美の衣装にチェンジしてからが素晴らしかった。
 今までは、速いリズムに合わせるダンスが多かったのだが、先日のライブではゆったりとした音楽に合わせて、しっとりと踊るスタイルが採用されていた。
 「偶然の答え」の前、渋谷のような夜の街並みを背景にして、藤吉さんが登場する。MVでもそうだったが、藤吉さんは街を背景にしたシーンがとても似合う。ただ立っているだけ、ただ手すりにもたれかかっているだけなのだが、不思議と画になる。この雰囲気を見て、欅坂46ファンからも平手さんを彷彿とさせると言われることが多い。街並みのネオンを背景に、憂いに満ちた表情で踊る姿が非常に美しい。
 アングルが変わり、理佐さんと大園さんがが傘を手にして優雅に踊っている。背景にいる藤吉さんが見守る中、二人のダンスが静かに続いている。
 そのままの流れで「偶然の答え」にパフォーマンスが移行していく。

 「偶然の答え」が終わると、一瞬暗転し、星空に月が浮かんでいるシーンとなる。無数の星を背にしたまま一筋の光の中で、森田さんが踊るコンテンポラリーなダンス。指先や足のつま先まで神経が行き届いた所作が、美しく可憐だ。静かに踊る彼女の表情の中に、内に秘めた熱い思いが感じられる。
 坂道グループで一番小さいはずなのだが、ステージに立つと、まったくそれを感じさせない。
 この静かなダンスのまま、「ブルームーンキス」のパフォーマンスが始まる。

 ライブが進行し、「それが愛なのね」が披露された後、菅井キャプテンと山﨑さんが、激しいパーカッションをバックにダンスをし始める。年齢差が一番ある二人によるコンビネーションが心地よい。2人のびったりと揃ったダンスに、観ているこちらも思わず引き込まれる。全体に「避雷針」の要素が多いように感じたのだが、魅力たっぷりな時間であった。

 今回の3つのダンストラックを観ても、彼女たちのパフォーマンスが大きく成長していることがわかる。特に、BACKSライブに参加できなかった櫻エイトメンバーの進化が大きかったように感じた。
 広い会場の中で、一人で踊るだけでも緊張するはずなのだが、そのようなことを全く感じさせない堂々とした表情とダンスが、非常に印象的だった。
 しかも、ゆっくりとしたリズムに合わせて静かに踊るだけで、会場全体を支配できるようになっていることが素晴らしい。これは、櫻坂46のスタイルである物語性のあるパフォーマンスには欠かせない要素である。主人公となるメンバーが、歩いたり佇んだりしているだけで、聴衆の目を惹きつけることができるようになれば、パフォーマンスで表現しようとしている世界が、より伝わりやすくなるだろう。

 最近は、音楽番組などを観ていても、パフォーマンスの最中に見せるメンバーの表情が非常に豊かになっている。個々人がしっかりと表情をつくり、個性を発揮していても、全体として統一感が保たれたパフォーマンスが出来ている。
 楽曲の中から受け取ることができるメッセージは、決して一つではない。それに触れる人が変われば、違った色を帯びてくるのが歌詞の面白いところと言えるだろう。それぞれの経験や感情から、同じ歌詞が全く違った意味となって伝わることはよくあることだ。
 それと同じように、ひとつの楽曲をパフォーマンスしていても、メンバー1人ひとりがそれぞれ違った捉え方をしている部分もあるはずである。そのことが、表情の微妙な違いとなっていることは容易に想像できる。
 彼女たちの表情が豊かになったことで、その表情の細かな違いから、観る側も、それぞれが共感できる部分を見つけることができることだろう。それによって、楽曲の世界観がより直接的に伝わるようになることは間違いない。
 このように多彩な表情を一度に楽しむことができるのも、グループアーティストの魅力であると言えるかもしれない。

 次の武道館ライブで、メンバーの皆さんがどのような進化を見せてくれるのか、楽しみが尽きることはない。


 


 

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