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一緒に乗り越える ~【櫻坂46】「シャッフルライブ」のすすめ~

今年最初のイベント「3rd Single BACKS LIVE!!」が昨日から始まった。
3枚目シングルのBACKSメンバーによるライブなのだが、今回で2回目の試みである。
年明け早々の開催ということもあり、ただでさえスケジュールが詰まっている中でリハーサルをしていくのは、相当に大変だっただろう。比較的振り入れが早い齋藤さんをもってしても、少し焦りを感じるレベルの厳しい環境であったことは、先日のSHOWROOMでも明かされていた。
彼女たちは、今までもギリギリなところで、必ず仕上げてきていたので、ファンとしては全く心配していないのだが、今回の状況が、最高レベルに大変であることは容易に想像できる。

このような大変な条件をメンバー全員で越えてくるのは、日向坂46が得意とするところである。
シングルの発売ごとに行われる「ヒット祈願」企画は、毎回、汗と涙の感動物語として、ファンからも絶大な人気を誇っている。
3月に開催される念願の東京ドーム公演に向けて、これから、気合いの入ったリハーサルを重ね、過去最高のステージを見せてくれることは間違いないだろう。今から、どのようなパフォーマンスを見せてくれるのか、本当に楽しみである。

日向坂46の「全員が一丸となって」乗り越えている様子を見ていると、ついつい櫻坂46の乗り越え方と比べてしまうのは、仕方が無いことだろう。
櫻坂46の「シングルヒット祈願」は、いつも選抜メンバーによるものであった。

1枚目・・・金峰山登山(櫻エイトのみ)
2枚目・・・禅寺修行(キャプテンと副キャプテンのみ)
3枚目・・・空中ブランコ(櫻エイトのみ)

櫻坂46のヒット祈願は、常に「やる人」と「それを見守る人」に分かれており、観ている側としても、今ひとつ盛り上がりに欠けるものとなってしまうことを残念に思っていた。
櫻坂46に対しては、そのアーティスト性をより高めていくことで、十分に大変さが伝わるので、「ヒット祈願」企画は不要であるというのが持論なのだが、せっかくやるのであれば、是非とも、日向坂46のように全員で何かに挑戦する姿がみたいというのは、ファン共通の願いであろう。

今回の「BACKS LIVE!!」も、この櫻坂46の「グループを分ける」パターンに含まれるものと言えるだろう。
1回目の時は、BACKSメンバーに対して、センターやフロントのポジションでパフォーマンスをする機会を与えて、歌やダンスのスキルアップを図る場として、大きな効果があったのだが、2回目をすぐにやるのは、余り好手とは言い難い。
何故なら、人は与えられた条件の中では、どうしても学ぶことが少ないからだ。
もちろん彼女たちは、高い意識をもって活動に取り組んでいるので、与えられた条件下で、余り積極的ではない気持ちのままリハーサルをするということはないのだが、それでも、自分から発願して何かをしていく時と比べると、吸収できるものが少なくなってしまうのは仕方ないことである。

それよりは、昨年の後半のように、全員でライブを重ねていく方が、学べることは大きいだろう。
「W-KEYAKI FES. 2021」→「1st TOUR 2021」→「1st YEAR ANNIVERSARY LIVE」と7月以降、ほぼ毎月のようにライブをしていた時期は、明らかに彼女たちの成長が感じることができた。
楽曲のパフォーマンスはもちろん、途中のダンストラックやMCなど、ライブを魅力的にするための細かな部分まで大きく進化しているのが、はっきりとわかったのが、この期間である。
今回のライブも、BACKSメンバーだけではなく、櫻エイトメンバーも参加する「シャッフルライブ」であれば、前回以上のレベルアップが望めたのではないだろうか。
オリジナルではないポジションやユニットでパフォーマンスをすることで、全員にとって新しい刺激となり、多くの発見ができるからである。

このようなライブは何も新しいものではない。
日本の古典芸能である能楽でも、同じような催しを数年に一度位の割合で行っている。
能の世界は、分業体制がしっかりとしており、主役をするシテ方は、代々シテ一筋、囃子方は代々囃子方というように、それぞれの役割を代々担うことで、技術を磨いている。そのプロ集団が一堂に会することで、能の舞台は構成され、高い芸術性を維持している。
それでも、同じ舞台に立つものとして、それぞれの役割を修業している間に、他の役割もお稽古をするようである。違う立場のものを学ぶことで、自分の役割を正しく理解するための糧にしているからである。
数年に一度、「乱能」という舞台が設けられることがある。
それは、いつもの役割を離れて、違った役で演能するものなのだが、役割を変えることになっても、修業時代の経験から、きちんと舞台に立つことができるという。
シテ方の人が笛を吹いたり、太鼓をしている人がワキ方をやるという形で、役割をシャッフルして楽しむというプロ集団ならではの一種の遊びである。
いつもと違う役割を演じることで、同じ演目でも全く違うものとなり、学べることが多いという話を、実際にやったことのある演者さんから聞いたことがある。

芸事は、基本「目習い」で学ぶものである。
上手なお手本を直接目で見ることで、その素晴らしさを知り、それを真似ていく作業の中で、技の難しさを自覚しながらスキルアップをしていくというのが、「目習い」というやり方である。
そのためには、お手本が近くにいた方が上達は早くなる。
直接教えられること以上に、そこに向かう心構えや準備、姿勢、呼吸など、同じ場にいることで学べることが沢山あるからだ。
一人でやっているだけでは、気がつかなかったようなやり方や表情を見ることもできるだろう。それが刺激となって、自分の殻や限界を超えるきっかけになることが大いに期待できる。
もちろん、「教える側」と「教えられる側」に分かれてレッスンをすることで、双方が学んでいくという方法もあるのだが、どうしても大きく殻を破るというレベルまではいかないことが多いだろう。
どちらかと言うと、補習専門の予備校のように、合格点に達していない人に対して、80点以上のレベルに到達するためのノウハウを伝授するだけに留まることが多くなるからだ。

彼女たちは、プロの表現者パフォーマーである。
観客が目を背けるようなレベルでは当然ダメなのだが、無難にこなしているというレベルのままでは、何の感動も生まれない。
溢れんばかりの情熱を胸に秘めながら、冷静に歌やダンスを最高レベルの状態に維持しつつパフォーマンスをしていくことで、観客たちの感動を最も引き出すことができるだろう。
感情をパフォーマンスにのせることは、一見良いことのように思えるのだが、それだけでは、本当の意味で気持ちを伝えることができない。
パフォーマンスをしている本人は気持ちよいのだろうが、その様子を観ている側は、何か置いて行かれたような感覚となって、真に感動するところにまで到らないことが多い。
それは、「すごいんです」「感動したんです」「素晴らしいんです」と繰り返し主張しても、その凄さや素晴らしさが伝わらないのと同じで、それがどのように素晴らしかったのか、具体的に示さなければ、その感動を共有できないことに似ている。
また、カラオケに行った時に、友人が気持ちよさそうに歌っているのを観ても、コンサートに行ってプロの歌を聴いた時のような感動が生まれないことからもわかるだろう。
それこそが、プロとアマチュアの違いと言うこともできる。

全国ツアーの頃は、グループ内の交流が活発になり、互いに声をかけあって、高め合っていた様子が、インタビュー記事などからも知ることができるのだが、このように本番を目の前にして、良い意味で引き締まっている時こそ、人は大きく成長できる。
今年は、人数も少なくなり、「23人」体制である。
音楽番組やライブはもちろん、バラエティ企画などでも、全員が一丸となって、一つひとつ乗り越えていくことで、グループ全体が何回も殻を破ることができるだろう。
今年は、いかなることも「一緒に乗り越える」姿勢を貫いていただきたいというのが、ファンからの切なる願いである。

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