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美しい日本語を届ける ~【櫻坂46】「SONGS OF TOKYO FES」地上波放送を観て~

昨日、「SONGS OF TOKYO FES 2021」がNHKで地上波放送された。
国際放送の際は、「流れ弾」と「Dead end」の2曲が披露されたのだが、2022の年頭に披露されたのが「無言の宇宙」であったことが興味深い。

今回のフェス企画では、各アーティストがほぼ1曲を披露する形式で放送された。
それぞれのパフォーマンススタイルも非常に多岐にわたっており、海外受けが良いアニメなどに留まっていないことが、日本独特の音楽文化が世界に浸透していることを示していると言えるだろう。
番組を観ていて感じるのは、日本語がそのまま理解されているということである。音楽的に優れたものが選ばれていることもあるが、そこにのっている歌詞がストレートに、世界の人々に届いている事実に驚かされる。
その中に、日本の女性グループアイドルとして「櫻坂46」が選ばれていることの意義は大きい。
欅坂46時代から、歌詞を大切にし、それをどのようにしたら観ている人たちに届けることができるかということに尽力してきた彼女たちの姿勢が、高く評価されていると考えられるからだ。

洋楽などを聴いていると、その国で話されている日常的な会話がそのまま音楽になっていることに気がつく。それは、言語自体が一定のリズムや抑揚を持っていて、それを増幅させるだけで音楽になってしまうことを表している。
その点、日本語は抑揚が少なく、リズムと言っても、少し単調なものとなってしまうことが多い。
そのため、ロックやポップスなどが海外から入ってきた時、それらの音楽形式に日本語の歌詞をのせていくことに、大変に苦労してきたというのが、日本のロックやポップスの歴史であった。
それでも、多くの天才たちの手によって、日本独自の音楽へと昇華され、発展してきたのが「シティポップ」である。

今回の番組でも、シティポップが大きく取り上げられ、それらが持つ高い音楽性が世界中で評価されているという事実を知ることができる。
とかくガラパゴス化しやすいと言われがちな日本文化が、世界に通用するものであることを示しているとも言えるだろう。

番組全体のこのような流れの中にあって、櫻坂46が披露したのが「無言の宇宙」であったというのは、納得の選曲ということができる。
3枚目シングルの中で、歌詞が最も聞き取りやすく、詰め込みすぎて早口になる部分も少ない「無言の宇宙」は、楽曲が表現したいメッセージも伝わりやすい曲である。
秋元さんが作詞された曲の中でも、国民的なヒット曲となっているのは、比較的スローテンポで、歌詞が聞き取りやすいものが多い。「川の流れのように」「ヘビーローテーション」「クリスマスキャロルの頃には」など、それほど聞き込んでいなくても、不思議と歌詞が思い出せる。
欅坂46時代も、名曲として名高いのは「サイレントマジョリティー」や「二人セゾン」である。この2曲も、早口部分が少なく、歌詞が音符にのっている。
このような楽曲は、TVやラジオから流れてくるものを無意識に聞いていても、なんとなく覚えてしまうという特徴がある。それだけ耳に残り、印象深くなるのかもしれない。

楽曲披露の少ない「無言の宇宙」が、そのような名曲たちの仲間入りをするためには、もう少し時間が必要かもしれないが、その可能性は秘めているだろう。歌詞をとりわけ大切にしてきたメンバーの皆さんにも、この曲は人気がある。
カップリング曲の中で、メンバー人気が高い楽曲としては、「最終の地下鉄に乗って」もあげることができるだろう。
この2曲は、櫻坂46の楽曲の中でも、どこか懐かしいホッとするメロディーの曲である。
劇的なヒット曲にはならないかもしれないが、彼女たちの代表曲となっていくことは間違いない。

とかく激しいパフォーマンスばかりが注目されてしまうのだが、このようにジワジワと浸透していく楽曲もあることが広まることで、表現の幅が広い魅力あふれるアーティストであることが知られるようになってくるだろう。
世界を目指す彼女たちの挑戦は、今年に入り、ますます加速していくことは容易に想像できる。
今年の幕開けは、「BACKS LIVE!!」である。
そこで、どのように進化した姿を見せてくれるのか、もう楽しみで仕方が無い。

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