素材を活かすことが出来ているのか ~【櫻坂46】4枚目シングルのMVを見返してみて~
昨晩のスペースシャワーTVプラスで「五月雨式に好きになれ!櫻坂46スペシャル」が放送された。
30分という短い時間の割には、4枚目シングルの各曲について、メンバーからの有意義な話を聴くことができたので、なかなかの収穫であった。
欲を言えば、すぐ後に放送された「櫻坂46MV」特集と時間配分を逆にしてもらえたら、さらに良かったのだが、そもそもこのような番組を放送してもらえるだけでも有り難いと思わないといけないのかもしれない。
大手レコード会社からデビューしているので、ついつい忘れてしまうことも多いが、まだまだ2年目の駆け出しアーティストということを考えると、なかなかの好待遇である。
スペースシャワーTVプラスというチャンネル自体が、終日ランキングやMVを放送しているため、お目当ての番組を観た流れで、他のアーティストのMVやパフォーマンスも目にすることができる。
売れているK-POPグループなどのMVは、かなり予算をかけて制作されているので、なかなかの見応えである。
どのグループも、非常にポップな造りになっていることが多く、目が醒めるような鮮やかさが特徴とも言える。
それに比べると、日本のアーティストは、夜道であったり、廃墟であったり、全体的に薄暗い中でパフォーマンスをしていることが少なくない。
翻って、4枚目シングル「五月雨よ」のMVも久しぶりに見返してみた。
改めて感じたのは、「僕のジレンマ」のクオリティーの高さである。
メンバーの話では、珍しく予定通りにサクサクと撮影が終了したようなのだが、そうとは思えないほどの出来映えに思わず感心してしまう。
映像全体から感じられる繊細な色彩とメンバーのビジュアル、細部まで造り込まれた衣装が見事にマッチしており、その圧倒的な美しさに酔いしれることができる。
映像作家とメンバーが織り成す化学反応が、非常にうまくいった例と言ってよいだろう。
それに比べると、表題曲の「五月雨よ」については、公開当時から、珍しく好き嫌いの反応がはっきり分かれた。
制作陣とメンバーは、MVの制作過程も当然熟知しているので、撮影中の苦労なども相俟って、紹介する様子から並々ならぬ意気込みが感じられるのだが、仕上がった映像だけを観て判断することになるファンにとっては、彼らの思いや情熱は思っていたより響かなかったのかもしれない。
何より、16㎜フィルムで撮影された映像自体がもつ「ざらつき」感をどう感じるのかが、一番意見を分ける要因となったのだろう。
加えて、全てアナログな手法で苦労して撮影した映像が、グリーンバックで撮影したCG画像と誤解されることも多く、傾けた情熱が上滑りしているように捉えてしまったファンも多かったようだ。
「映像作家のこだわりが、メンバーを輝かせる方向に機能していない」という厳しい意見まであがっていたようなので、次回作では大幅にテイストを変えてくる可能性もある。
どの映像作家が起用されるのかは、映像プロデューサーの匙加減一つなのかもしれないが、最近の櫻坂46や日向坂46のMVを観ていると、彼女たちの魅力を発揮しきれていないと思うこともしばしばである。
昨晩の「そこさく」の合間で流れる楽曲CMをみても、「僕のジレンマ」や「車間距離」は良いのだが、「五月雨よ」については、映像の質感が違いすぎて、何か古いCMを見せられているような気分になってしまう。
MVとして仕上げるものと同録で、高精細なデジタル映像Ver.も用意するべきだったのではないだろうか。
K-POPアーティストのMVにみられるような「底抜けに明るい映像」では、彼女たちのもつ雰囲気やグループコンセプトに合わないのかもしれないが、一種のプロモーションであるということを、今更と言われるかもしれないが、考慮に入れる必要があるだろう。
どこまでも芸術性を貫いているのが「チーム欅」時代からの伝統であり、櫻坂46の良さであることは誰もが認めるところであるが、結果として、彼女たちを輝かせるものとなっていないとすると、少々問題である。
北海道でとれる食材のように、素材が素晴らしいと、生半可な調理方法では、美味しい料理とはならない。
手を加えることで、かえって素材の持ち味をこわし、その魅力を感じることができなくなるからだ。
彼女たちも全く同じである。
彼女たちの魅力やポテンシャルを最大限に発揮することができる、超一流の腕を大いに期待したい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?