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出かけない主人公 ~【櫻坂46】「五月雨よ」が描く世界~

昨夜初解禁された「五月雨よ」。
今日は、もうほとんどエンリピ状態で、聴き続けていた。
爽やかな曲調で、とても穏やかな歌ということもあり、繰り返し聴いていても飽きが来ない。
サブスク全盛時代なので、このような曲は、「ながら聴き」にはぴったりだろう。そういう意味では、リモートワークの時などに、BGMとして、ふつうに流してもらえそうである。
1枚目から3枚目までが、どちらかというと「熱い」曲調だったので、今回の涼やかな路線は、新しい櫻坂46として、世間に広まっていくことが期待できる。

自分で書き起こした歌詞を眺めながら、繰り返し聴いていたのだが、今回の曲に登場する主人公は、とにかく「外」に出ない。
長く続く雨の中、好きな気持ちを悶々と持ったまま、次の一歩が踏み出せずにいる。
自分が勇気を出してアプローチできない状況を、降り続く雨のせいに出来ることで、安心している自分もいるのだろう。
雨が上がれば、出かけていって、
自分の気持ちを相手に伝えることもできるのに・・・。
雨さえ上がれば・・・。
雨が降っているから、出かけられないだけなんだ・・・。
という主人公の言い訳が聞こえてきそうである。

この「自分の気持ちを告げられずに、じっとしている」というモチーフは、乃木坂46の歌にもあったなぁと思いながら探してみたのだが、意外にあっさりと、それが見つけられた。
2013年にリリースされた「君の名は希望」である。
ただ、ここで登場する主人公は、外にいる時もある。
その点では、「五月雨よ」の主人公よりは、アクションを起こせる環境にいるのだろう。

以前、長雨で外出できない様子が「Withコロナ」の状況と似ているということを書いたのだが、このあたりが、同じモチーフを描く場合でも、主人公の行動が変化している要因と言えるかもしれない。
勇気が持てない主人公を、「広げられない・・・・傘を持っている」という表現で描写しているのが面白い。
そこでは、自分の行動が「外にある要因で左右されている」ことを表しているからだ。

「五月雨よ」は、曲としては「5分」を越える長さがある。
しかし、歌詞だけを見ていくと、全く同じ歌詞が繰り返されている箇所がある。いわゆる「サビ」に該当すると考えられるのだが、かなり長文である。

五月雨よ 晴れた後から
愛しさが 込み上げてくる
見上げたって 変わらないのに
どこかに虹 期待してしまう
五月雨よ 切なくなる
いつの日かは いつ来るんだ
広げられない 傘を持ってる
今すぐに 会いに行くために
どんな時も 耐えることだ
永遠を 愛と信じてる

「五月雨よ」歌詞(筆者書き起こし)より抜粋

楽曲からは、爽やかで広大な世界が感じられる。
それは、どこか「Buddies」や「シンクロニシティ」に通じるものとも言えるのだが、歌詞の内容自体は、かなり鬱々とした閉塞感が全体的に漂っている。
これは、今の時代の閉塞感に通じるものなのかもしれない。
そんな時代の空気を、巧みな表現で表すと、今回の歌詞のようになるのだろう。

しつこいくらいの「Wow Wow」という部分で、だらだらと続く雨=「五月雨」の風景を表現しているのだろうか。
しかし、山﨑さんを中心とした「櫻坂46」が歌うと、厚い雲の中をすごい勢いで飛んでいる昇龍のような躍動感がある。
それはまるで、この雲の向こうに、虹がかかった青空があるかのような「明るい未来」を感じさせるものである。
歌詞だけをみると、一見、暗い時代感覚を歌っているように思える楽曲でも、彼女たちが歌うことで、大きな希望が感じられるものとなっているのが素晴らしい。

陰鬱とした社会に、明るい光が差し込むように、櫻坂46の歌が、世の中を明るく照らす素敵な世界は、もうすぐそこまで来ている。

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