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それはただの墓泥棒ですよ

いつもより少し真面目な話

何年も前に読んだので本のタイトルや著者名は覚えていないのだけどー
日本が帝国主義だった頃。中央から北海道へやって来た学者たちが、アイヌ民族の墓から遺骨や埋葬品を持ち去ったことがある。
調査・研究のため。

現地のアイヌ民族の人に案内させて、何の断りもなく墓を掘り返し、当たり前のこととして持ち出したということが書かれていた。


案内した人と家族にとって、どんなに屈辱だったろうか。


歴史はいつだって勝者のものだ。
奪われた側の歴史は塗り替えられ、握りつぶされ、ときには所在不明になることさえある。

当時、日本の中央にいる人たちは北海道を未開の地と認識し、そこに暮らすアイヌ民族は〈勝手に墓を暴いて遺骨を持ち出しても構わない〉存在だと思っていたのだ。
もしその時の学者たちが、自分の親の墓をいきなり訪問して来た人に荒らされたらどう感じただろう?
自分たちが何をしているのか、わかっていなかった。文化人類学を研究している人がそんなことでどうする?
腹立たしい史実だ。

〈※琉球民族に対しても同様の事が行われてた〉



しかしこれは世界的に珍しいことではない。世界中の歴史は、こんなことの積み重ねでできている。
関心事はもっぱら、誰が誰より立場が上か?だ。

敗北者の歴史は地層の中に潜り込んでいて、懸命に掘り起こさなければ誰にも気付かれないまま忘れられていく。
それは知る価値のない文化だろうか?忘れてもいいほど薄っぺらな歴史だろうか?

私たちは地面の下に何が埋まっているのか、知らずに大地を踏み締めて歩いている。



今年の4月に、日本文化人類学会がアイヌ民族に対して『真摯に反省し、謝罪する』と声明を発表したという。

やっと。

やっと、ほんの少し。


世界は絶えず変わっていく。
後退することが多いように見えたりするけれど、
良い方向へ向かう事柄も
ちゃんとある。
それを見逃さないようにしたい。




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