トゲ

何年か前の出来事。
拭き掃除をしていたら古い椅子に手が当たって・・・
トゲが刺さった。
右手親指の付け根辺り。

どうしても取れない。
取ってくれそうな人もいない。
中に入り込んでしまっている。
うわ〜
見てると鳥肌が立つ。
こういうのに滅法弱い。

よし、病院で取ってもらおう。
いつ行っても混んでる皮膚科。トゲごときで診療してもらうのはちょっと気が引ける。
けど、自力では取れないんだもの。

順番が来てお医者さんに手を見せると
「あらまあ、よ〜く刺さってるわね。」
先生、楽しそう?
「ちょっとほじくるから痛いけど、大丈夫ですよ。」
『はい。』

ほじくるとはこういうことか!
と、本当に言葉通り見事にほじくってくれた。
手強かったらしく、すんなりと取れない。時間が掛かれば掛かるほど、激痛も増す。

こういうことは苦手なので患部を見ることができない。今そこがどんな状態になっているのかを、考えないように、想像しないようにと、診察室のカレンダーやポスターに意識を向ける。AGA(薄毛)の症状は何パターンかあるという解説をじっくり読み込んでやり過ごそうとするも、ほじくられている感触が伝わってきてしまう。

容赦ないなと先生の顔を見ると、目が輝いていた。
ああ、楽しいんだね。
なら許そう。

傷口がどうなってしまっているのか確認したくないくらい、ほじくり返されてしまった。
めちゃくちゃ痛い。
なぜそんなに時間がかかるのでしょうか?
堪忍してください。


ようやく取り出したトゲを嬉々として顕微鏡?拡大鏡?に移す医師。
すごく楽しそうだ。
かなりの激痛だったけれど、
そんなに楽しいなら
うん、許そう。

「木ですね!」
最初に木の椅子だと言ったんだけどな。
確認できたんだね。
楽しいんだね。
なら、よし。

消毒して包帯をグルグル巻いてもらった。
トゲは小さかったけど、ほじくられた跡はどうなったんだろう?
怖くて見れない。
翌日、意を決して包帯を解いたら、何もなかったかのようにきれいに治っていた。

さすがプロだ。
しばらく忘れられないくらい激しく痛かったけれど---

全て許した。


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