登校百景 冬(小学校編)
学校は嫌い。
でも母が言う。
「子どもは学校へ行くのがお仕事です。」
しょうがないから、できるだけ楽しいことを探して歩く。とは言っても楽しいことなんて簡単には見つからない。
それなら自分で作ればいいさ。
雪が積もると除雪車が車道の雪をそいでいく。削られた雪はどこへ?
ーー歩道へ。
だから、歩道が山になる。
場所によっては尾根のきつい山脈が連なり、難所となる。
気をつけて・・・どころじゃない。
「神経を研ぎ澄ませ」。
尾根の上を綱渡りするかのように歩いていく。わずかでも気を緩めれば滑り落ちるか転ぶ。もし車道側に転んだら…恐ろしいことになるわけで。
冬の登校はサバイバルだ。
前方に2人組。1人は小5?小6?わからないけど私よりは上だ。もう1人は私よりも小さい。
体が大きくてガンガン先を行くほうがきっと隊長だ。後ろを一生懸命ついて行くのは隊員1。そっと後ろにつこうかな?隊員2として。こっそり入隊させてもらおう。
隊長は尖った尾根をものともせずガシ、ガシと進む。思い切りがいいな。足場に迷いがない。さすが隊長。
隊員1「犬の足跡あった!」
報告が入りましたね。
「え? ああ。」チラリと確認だけして速度を緩めず進む。
ばかな!
雪道では犬の足跡ほどのご褒美はないでしょうに。隊長もったいないですよ〜!ここは立ち止まってじっくり観察ですよ〜!
・・・・
ほら、指の先までくっきり。
これは《たいへんよくできました》をあげましょう。
隊員1へ。隊員2がしかと確認しました!(心の中で)
一列に並び、かつて歩道だった尾根を行く。
ア、アァ〜!!
隊員1が尾根を滑った!
しかも車道側に。
一大事だ。
慌てて駆け寄ったけど、隊長が一足早かった。機敏に隊員1の体を確保。
おお、やっぱり隊長は頼もしい。
・・・
驚き顔でこちらを見るふたり。
〈誰?こいつ〉
あ、すみません。
なんでもありません。
一行は無言で立ち上がり、再び歩き出した。
あ、犬のオ◯ッコの跡を発見!
隊長に報告したい。
隊員1でもいいから報告したい。
なかなかに深いよ。
※オ◯ッコが温かいから
雪が溶けて黄色い穴があく
いや、いや、いや。
〈なに?こいつ〉
と思われるだけだってば。
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