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関西の乗ったことがない路線 神戸市営地下鉄

神戸市営地下鉄は、西神・山手線と海岸線、北神線の3つの路線で案内され、路線長は38.1㎞。日本の地下鉄路線として京都市や福岡市よりは大きく、横浜市、札幌市より少し小さい中堅的規模の路線網を持っている。

実運用上は西神・山手線と北神線は直通運転しているので、2系統と考えてもいいかもしれない。

1977年に西神線の最初の区間である新長田駅~名谷駅間が開業、1983年に山手線の新長田駅~大倉山駅が開業、西神・山手線として一体運行を開始。その後両方向へ延伸し、1987年に西神中央駅~新神戸駅の区間が全通した。

谷上駅を出る北神線、西神・山手線。

1988年には現在の北神線にあたる、北神急行電鉄線が新神戸駅~谷上駅の間で開業。北神急行電鉄線は全長7.5kmの路線に対して駅は新神戸駅と谷上駅の1駅のみ、六甲山地をぶち抜く7,226mの北神トンネルがほとんどを占める。六甲山地北側に広がっていたベッドタウンや有馬温泉の観光客で混雑していた神戸電鉄線の混雑緩和と三ノ宮駅方面を短絡する目的で神戸電鉄や阪急電鉄などが出資して建設された。開業後も膨大な建設費用に対する金利負担が厳しく高額な運賃もあいまって利用者が伸び悩んでいたが、紆余曲折を経て2020年に神戸市営地下鉄へ譲渡され市営地下鉄の北神線となった。開業当初から今でも継続して西神・山手線との直通運転をしている。

解釈が分かれる日本一標高の高い地下鉄駅。地下鉄の駅ならここ谷上駅だけど、地下にある地下鉄駅だと仙台市営地下鉄の八木山動物公園駅になる。
神戸電鉄との共用だしどう見ても地上駅の谷上駅。

西神・山手線は実質的に神戸市北区から西区までをU字に結び、六甲山地の北側から、新神戸駅や三ノ宮駅、県庁、下町となる湊川や新長田、西神ニュータウンと神戸市の最重要幹線となった。特にこれ以外の鉄道路線の無い西区の西神ニュータウン方面は、阪神大震災の影響が軽微だったためベッドタウンとして人口が増加を続けている。沿線は住宅地をはじめ、市営総合体育館や陸上競技、オリックスの準本拠地のほっともっとフィールドなどある総合運動公園駅や、兵庫県立大学をはじめ高校・大学・専門学校などが集積する学園都市駅など公共性の高い路線とも機能している。この日は日曜日の夕方ということもあって、西神中央駅方面は多種多様な利用者でかなり混雑していた。

せいしんちゅうおうです。
新神戸。新幹線との接続駅。北神線の境目で一部が新神戸駅で折り返す。
JR線、阪急線、阪神線、ポートライナーとの乗り換え駅で現神戸の中心駅。利用数でも神戸市営地下鉄でダントツ1位。
一番最初に開業した区間でもある新長田駅。開業当初から国鉄山陽本線(JR神戸線)との接続駅。
西神中央駅前広場。西区の区役所、周辺からのバス路線も集結するターミナル。

北神線が市営地下鉄に編入される前に神戸電鉄線方面から三ノ宮駅に行こうとすると、北神急行電鉄線と市営地下鉄で2回初乗りが加算されかなり割高になる。神戸市側としても、市営地下鉄の一体運賃で大幅な値下げとなり利用者増加で神戸市北部活性化を期待しての政策となった。私も市営地下鉄になる前に有馬温泉へ行くのに利用したことがあるけど、元々高い市営地下鉄+北神急行電鉄線分で運賃の高さに乗り換え案内を二度見したくらい。

海岸線は2001年に三宮・花時計前駅と新長田駅の間で開業。この路線は名前の通り神戸市中心部の海よりを通り、新長田駅で西神・山手線やJR線に接続している。以前は同じルートに市電が走っており、港湾工業都市労働者で混雑していたとのこと。

海岸線はホームドアがない地下鉄として今時珍しい。混雑していないのでコスト削減で現状設置計画は無し。車両は鉄輪式リニアモーター式。1990年以降の日本地下鉄はOsaka Metro今里筋線や福岡、仙台など。
閑散とした三宮・花時計前駅
元々は神戸市役所前にあったのが建て替えに伴い移転し、移転先で恒久設置となった。
移転先の東遊園地。三宮・花時計前駅からも5分くらい離れて、もはや花時計前とは?という状況。

海岸線については日本有数の赤字路線として失敗とはっきりと言われている路線でもある。根本原因として路線長が短く、JR神戸線各駅にそれなりに近いエリア通っていて、三宮・花時計前駅がJR線や阪急線の三ノ宮駅本体から離れていて5分以上歩かないといけないところ。予測できないことで工事開始後に震災の影響で沿線人口も減少してしまった。海岸線の当初計画は13万人/日を計画していたのに対して2022年度の利用者で約4.5万人/日と4割にも満たない達成状況。2022年度収支は約47億円の収入に対して費用は73億円で26億円の赤字。減価償却費を除いたランニング収支すら3~4億円の赤字という状況。公共事業なので減価償却を除いて黒字であれば、社会的意義はあると言えど、それもままならない状態。実際この日初めて海岸線に乗ったのだけど、ガラガラだった。

和田岬駅。海岸線では一番利用者が多くJR和田岬線との接続駅。ただJR和田岬線は兵庫駅と和田岬駅の1駅区間、休日1日3本とネタに事欠かないため実質日常で乗り換える人はいないと思う。
新長田駅そばの広場に実寸大鉄人28号像。原作者の横山光輝の出生地が神戸市須磨区とは言っても新長田駅のそばだったことから。
横山光輝にちなんで三国志でも町おこしをしている。

西神・山手線の利用者が2022年度で約24万人/日、北神線が1駅区間で3.2万人/日に対して、海岸線は4.5万人/日。神戸市営地下鉄事業としてはコロナ禍の影響を除けば西神・山手線の黒字で海岸線の赤字を補填して収支トントンというくらいの状況。

神戸市営地下鉄の前身は路面電車の市電がベースで鉄道空白地帯の神戸市西部の西神地区へのアクセス路線として計画がすすめられたため、現在の神戸市中心の三ノ宮駅から西側に路線網が伸びている。三ノ宮駅から東側は阪神電車、阪急電車のエリアで大阪圏としての性格が濃くなるため、市営交通としては趣旨がずれる。横浜市営地下鉄と似ている位置づけだと思う。

そういえば今年はオリックスにヴィッセルと神戸の年。ラグビーのコベルコも競合だし頑張ってもらいたい。

現代において神戸というとイメージするのがやはり三ノ宮駅や南京町、ポートタワー、ハーバーランドなどなのに対して、明治以降の神戸の中心はJR神戸駅が東海道線の終点だったことからもわかるよう三ノ宮よりも西よりで、JR神戸駅に隣接する湊川や新開地などは神戸を代表する繁華街だった。そもそも神戸という町が日本経済の停滞の中で国際港湾としての地位失墜、鉄鋼や造船といった神戸を代表していた重厚長大産業の衰退、それに拍車をかけた天災が重なり町が衰退しているといっても過言ではない状況。神戸とその郊外を結ぶ私鉄の神戸電鉄や山陽電鉄は市中心部を横切らず三ノ宮方面にターミナルを設置しなかった。一方で大阪圏の路線である阪急線や阪神線は神戸中心の東端の三ノ宮が起点となり、沿線は大阪圏のベッドタウンとしては発展している皮肉な状況。新長田や新開地付近を歩いても平成で止まったような町が広がっている感覚は拭えない。

そんな社会的には頭に入っていた知識をもとに、今回は神戸市営地下鉄と神戸電鉄線を乗りつぶして改めて職住都市としての神戸を垣間見た気がする体験となった。


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