巣立ち
どうしても子どもが欲しくて そして生まれて来てくれた息子と 2人で生きて来た
完全なる自由な子育てだった
ある夏の日
冬に北海道に行きたい いいでしょう⁈
と息子から言われた
会いたい人がいる と
まだ高校3年 しかも受験生
まさか 本当になるとは思わず 最初は軽く答えていた
日が経つごとに 現実味が増して 具体的になっていく
小さいうちから1人で飛行機に乗せたことも 北海道に行かせたこともある
普通の子より 行動範囲も広いし 冒険もさせて来た
けど 今回は一番の冒険 だって ネットでしか知らない人に会うのだから
受験も頑張り合格し バイトもして旅費もため 何から何まで準備を整えていく息子
それは もう立派なものだった
反対する要素が一つも見当たらない
社会では殺人事件が起きたばかりだった
どうしよう…
腹をくくろう
飛行機とホテルは 手配してあげた
行動の形跡を把握するため
そして わたしも最初に一目会うのが条件
生一本なのは 親譲りか 子どもの個性か
両方とれる大胆さ
わたしだって散々スレスレを生きてきた
彼の父親もそうだ
どうしても生まれて来た我が子
その子も同じようなひとりの人生の旅に出ようとしている
いつでも 何かあれば引き受ける
そう わたしはどうしても あなたの母になりたかったのだから
あなたの父親と出会ったのも
それは 元旦の朝のこと
行ってらっしゃい
飛行機は北へ飛び立つ
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