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宝塚記念 有力馬血統考察

ドウデュース

 母方のシアトルスルーとゴーンウェストを中心に、アメリカ血統のスピードをたっぷりと補給。ハーツクライ産駒らしい緩さがなく、とくに胸前の発達と、掻き込みの力強さが目を引きます。母の父・ヴィンディケーションは現役時代にBCジュベナイルを勝ち、4戦4勝で米最優秀2歳牡馬になった馬。本馬が2歳でGⅠを勝てたのは、この早熟性のおかげでしょう。また3代内にゴーンウェストの血をもつ馬のGⅠ勝利は、これまでマイルGⅠ(ゴスホークケン、ショウナンアデラ、インティ)と、短距離GⅠ(タワーオブロンドン、モズスーパーフレア)しかいませんでした。ダービーと有馬記念を勝った本馬は、かなりのレアキャラです。
 前述のとおり本馬は米血中心ですが、重要な部分にはしっかりとヨーロッパの血が流れています。3代母のダーリングデイムは、名馬・ダンシングブレーヴと4分の3同血のイトコ。ハーツクライとダンシングブレーヴは好相性(ニックス)の関係で、その理論を応用した配合型になっています。朝日杯FSの走りをみたとき、得体の知れない奥深さを感じました。早熟性がそう錯覚させたのではなく、欧血の底力が垣間見えたのだろうと思っています。
 ギアチェンジ性能が非常に優秀。一瞬でトップスピードに引き上げて加速していきます。ただし性能が良すぎるあまり、鞍上の指示に対しても鋭敏に反応してしまうため、道中で動かしづらい馬ではあります。繊細なタッチで操縦できる名手・武豊だから乗りこなせていますが、かなり乗り難しい馬です。コーナリング性能がすばらしく、3、4コーナーで捲っていく姿は圧巻のひと言。今回は京都の外回りコースなので、その特性がいかせないのは残念ですね。


ジャスティンパレス

 母のパレスルーマーは、血統内にヌレイエフ、ロベルト、リローンチ、ダマスカス(2本)を内蔵。パワーとスタミナを豊富に含んだ繁殖牝馬です。これまで送り出した産駒は、米GⅠ・ベルモントS(ダ2400m)を勝っているパレスマリス(Palace Malice)、ステイヤーズSの勝ち馬・アイアンバローズ、そしてチャンピオン・ステイヤーとなった本馬。とにかく長めの距離で良さがでる血統です。
 血統表の字面的にはジリっぽいタイプを想像させますが、実際の走りからは重々しさを感じません。脚さばきが柔らかく、父・ディープの資質がしっかりと伝わっている印象です。また母がもつリローンチの血が、ディープインパクトと好相性の関係であることもポイントでしょう。配合的な根拠もしっかりとしています。
 昨年の宝塚記念は直線で早々にムチを落としてしまうアクシデントにも見舞われました。それでも最後までジリジリと伸びつづけて3着。まともだったとしても勝ち負けまでは微妙でしたが、がんばったほうだと思います。今年は京都の外回りで開催。しなやかさを兼備したディープ産駒であることを考えると、4角下り坂+直線平坦は好条件。今年はイクイノックスのような怪物はいません。大チャンスではないでしょうか。


ローシャムパーク

 母のレネットグルーヴは、歴史的名牝のエアグルーヴを礎として、そこからサンデーサイレンス、キングカメハメハというA級種牡馬によって紡がれてきた繁殖牝馬。その母にハービンジャーを配して誕生した本馬は、まさにピカピカの良血馬です。ハービンジャー×母の父キングカメハメハの組み合わせは、ブラストワンピース(有馬記念)、モズカッチャン(エリザベス女王杯)などの活躍馬をだしています。しばらく目立った実績がありませんでしたが、今年は本馬とチェルヴィニアがGⅠで活躍。久しぶりに存在感をみせています。
 上品な血統構成であるがゆえ、どことなく繊細で、温室育ちっぽさ感じていた馬です。しかし近走の走りをみて、その印象は大きく変わりました。前走の大阪杯でも、自ら捲りを仕掛ける強気の騎乗。それに応えられるほど、馬自身が成長しています。血統背景から、僕が勝手に先入観をもっていただけかもしれませんが、レースを走るごとに雰囲気が変わり、どんどん強くなっている感じがします。京都・外回りは問題はないですが、スピード型ではないため、馬場はタフ寄りのほうがよさそうです。欲を言えば、例年通りの阪神・内回りで戦いたかったですね。


ベラジオオペラ

 冒頭から話が脱線しますが、ロードカナロアは母の父にアグネスタキオンをもつ牡駒がよく活躍しています。重賞勝ち馬こそいませんが、堅実に走るニックスです。本馬は母の父がハービンジャーなので、上記の馬には該当しません。ただし祖母のエアマグダラが、アグネスタキオンと血統構成が似ているのです。タキオンもエアマグダラも、ともにサンデーサイレンスの直仔。さらに母方にはラジャババとテューダーミンストレルを内包しています。そっくりとまでは言いませんが、軸となる部分はおなじです。もしかしたら本馬は、エアマグダラをアグネスタキオンの代替ニックスのように機能させることで、能力を高めた競走馬なのかもしれません。
 走りからはあまりロードカナロア産駒っぽさを感じません。どちらかと言えばハービンジャー産駒のような雰囲気があります。かちっと芯が入り、均整の取れたフットワーク。大阪杯で叩き合いの末に退けたローシャムパークとは、結構タイプが似ているように感じます。
 機動力に長けたアイドリームドアドリーム牝系の出身。本馬が挙げた重賞3勝(スプリングS、チャレンジC、大阪杯)はいずれも小回りコースです。今年の宝塚記念が京都・外回りに替わることは、本馬にとっては微妙なところでしょう。同条件の京都記念では、外回りの長い直線で機動力がいかしきれず。最後に根負けして、プラダリアに敗れています。


ブローザホーン

 父のエピファネイアは牡駒に対してスタミナを色濃く伝える種牡馬。また3代母のアサーティンも、母としてダイヤモンドS2着のジョーヤマトをだすなど、スタミナに優れた牝祖です。要所となる部分にしっかりとスタミナが入ることで、長めの距離で強いタイプにでました。母の父のデュランダルは現役時代に短距離~マイルで活躍した馬ですが、血統自体はパワーとスタミナを豊富に含んだ構成。本馬においてはエピファや牝系のスタミナを支える“底力”として機能しているようです。母方は全体的にハイペリオンやサンインローの影響が強く、かなり重厚な血統構成になっています。長距離適性が高い競走馬です。
 前走はテーオーロイヤルにこそ完敗でしたが、GⅠでも十分通用することを証明しました。脚さばきはエピファネイアらしい しなやかさを兼備。直線が平坦のほうが、能力を発揮しやすい馬です。とくに京都コースは3戦して、準OP勝ち、日経新春杯勝ち、天皇賞・春2着と滅法得意(※競走中止を除く)。また渋った馬場で4勝を挙げており、過酷な環境も大歓迎。今週末はどうやら雨のようですね。絶好の条件と言えるのではないでしょうか。


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