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ブレイディヴェーグのGⅠ勝利にみられる、血統傾向の変遷(1)

 ブレイディヴェーグは『ヌレイエフ』の血をクロスしたロードカナロア産駒。歴史的名馬のアーモンドアイを筆頭に、 レッドルゼル(JBCスプリント)、ジョーカナチャン(アイビスSD)など多くの活躍馬をだす仕掛けです。

 このパターンには、ある興味深い傾向があります。それは『ミスタープロスペクター』の血を同時にクロスしないほうが、好成績を残しやすいということ。ヌレイエフのクロスをもつカナロア産駒を、ミスプロの血をクロスしているかどうかで分けて、勝ち馬率を調べました。

ヌレイエフ+ミスプロを同時にクロス・・・36.4%(24/66頭)
ヌレイエフだけをクロス・・・50.8%(33/65頭)

※23年11月現在の勝ち馬率


 該当馬はほぼ等しいですが、勝ち馬の数に差があることがわかります。23年11月時点で、収得賞金1600万以上を稼いでいる活躍馬15頭に、ミスプロの同時クロス馬は4頭しかいません。
 

 おなじヌレイエフのクロスもちなのに、ミスプロのクロスを併用するかどうかで違いがでる理由。それはおそらく、ミスプロを絡めることが「キングマンボの増幅」に繋がるからでしょう。キングマンボは父ミスタープロスペクター×母の父ヌレイエフという構成。つまり両方の血を同時にクロスすると、キングマンボの包括的な増幅へと変わってしまうのです。

 ヌレイエフはパワーとともに持続力を兼備しており、重厚な切れ味を伝えます。一方、そのヌレイエフを母の父にもつキングマンボは、パワーを伝える点こそ共通するものの、父のミスプロからアメリカ血統らしい淡白なスピードも受け継いでいます。その影響でヌレイエフ本来の持続力は薄れ、突進的なパワースピード色が濃くなっています。

 おそらくロードカナロア産駒がヌレイエフの補強で求めているのは、持続的な切れ味なのでしょう。ヌレイエフだけをクロスして、それを引き出すことができれば恩恵となる。しかしミスプロを同時にクロスして、キングマンボの増幅にすり替えてしまうと、欲しかったヌレイエフの要素が薄れてしまい効果半減。このような作用がミスプロの有無によって起こっているようです。
 

 ところが今回エリザベス女王杯を勝ったブレイディヴェーグは、ミスプロのクロスを同時にもつ馬。成功パターンから外れた、珍しいほうの存在なのです。これまで該当馬によるOPクラスの勝利がないなか、OPどころかいきなりGⅠを制覇。カナロアのヌレイエフクロスという視点でみれば、驚きの大きい出来事でした。

 もちろん過去の傾向が絶対ではなく、ましてや特定の血だけですべてが決まるものでもありません。こういう馬が現れたとしても、まったく不思議ではないでしょう。ただ個人的に、今回のブレイディヴェーグのGⅠ勝利は、単なる例外的な事例として片付けてはいけないと考えています。むしろ今の傾向を象徴するものとして、もっと大きな意味があるのではないかと感じるのです。


※以下の記事につづきます


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