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血統考察

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記事一覧

トニービン×シャーペンアップの効果を考える

 トニービンとシャーペンアップは親和性の高い関係です。理由は主にふたつあります。  ひとつはどちらもハイペリオンを基調とするヨーロッパ血統仲間であること。トニービンはハイペリオン5×3・5。シャーペンアップは同5×3です。  もうひとつは、トニービンの母・セヴァーンブリッジと、シャーペンアップの父の母・ミクストマリッジがニアリークロスで繋がること。全体がハイペリオン基調というだけではなく、個々の血脈が深く脈絡している点も、良好な関係を築ける一因でしょう。    トニービ

ストームキャット×フレンチデピュティの効果を考える

 ストームキャットとフレンチデピュティは、血統構成に共通点が多い相似な関係です。両者を組み合わせると、「ノーザンダンサー、ボールドルーラー、プリンスキロ、エイトサーティ、ブルページ≒ブルームーン」などが脈絡。アメリカの軽快なスピードを引き出します。    軽快なスピードと言っても、柔らかみや非力さはありません。アメリカ血統らしい、筋肉量に裏付けされたパワースピードがベース。速い流れに対応できる、追走能力を高める効果も期待できます。芝・ダートどちらにも役に立つ配合型です。

キンカメ、ボリクリ、ロブロイ、ハーツのカルテッドがもたらすパワー増幅効果(後編)

  ※前編はこちら キングカメハメハ(セックスアピール)の今後  キングカメハメハは直系がしっかりと繁栄。今年はサートゥルナーリアが産駒をデビューさせますね。シンボリクリスエス、ゼンノロブロイ、ハーツクライのいずれとも問題なく組み合わせることができます。母の父にこれらの血をもつ産駒は要注目です。  一方、母の父キンカメや2代母の父キンカメなど、母方でサポートに回るパターンも変わらず結果を残してくると思います。また個人的に狙ってみたいのが、母の父ルーラーシップ産駒。エピファ

キンカメ、ボリクリ、ロブロイ、ハーツのカルテッドがもたらすパワー増幅効果(前編)

 今回の記事は、4年前に投稿した血統論に関連するお話です。当時はエピファネイアの配合論として書いたのですが、実際はエピファにかぎらず、多くの配合で活用されています。あらためておさらいしつつ、血統界全体の内容として書き直すことにしました。    いまの血統界は、パワー増幅効果をもたらすパターンとして、ある4頭の種牡馬によるカルテッドが存在感をみせています。 キングカメハメハ シンボリクリスエス ゼンノロブロイ ハーツクライ  この4種牡馬はみな血統内にパワー血脈を内

シンボリクリスエス×ロックオブジブラルタルの効果を考える

 シンボリクリスエスにロックオブジブラルタルを組み合わせると、シンボリクリスエスの母であるティーケイに対して、ロックオブジブラルタルのさまざまな血が脈絡。屈強なパワースピードを強化します。具体的に脈絡する血については以下の簡易血統表をご参照ください。ボールドルーラー、プリンスキロ、トムフール、アリバイ、オリンピア、オーエンテューダー、ウォーアドミラル、ラトロワンヌ、エイトサーティーなど細かいところで無数のクロスが発生します。    シンボリクリスエスを父にもつエピファネイア

ビッグアーサーとニジンスキーの親和性を考える

 ビッグアーサー産駒の収得賞金トップ3のトウシンマカオ、ビッグシーザー、ブトンドール。この3頭はいずれも母方に『ニジンスキー』の血を複数もつ共通点があります。  ニジンスキーはかなりメジャーな血。母方の血統内に複数存在すること自体は、それほど珍しくはありません。たまたまトップ3がそうであった可能性もあるでしょう。ただ個人的に、これは偶然ではないとみています。    ニジンスキーという血には、ちょっと面白い効果があります。それは「パワー系・ノーザンダンサー血統のクドさを中和

ブレイディヴェーグのGⅠ勝利にみられる、血統傾向の変遷(3)

 1回目の記事で、ヌレイエフとミスタープロスペクターの血を同時にクロスしているブレイディヴェーグは、過去の成功例とは違う珍しいパターンであることを書きました。2回目の記事では、母の父ディープインパクト産駒の傾向が変わり、牝馬の活躍馬が増えていることを書いています。  一見無関係に思える二つの流れですが、広い視点でみると実は繋がっているのではないかと思うのです。最終回の今回はそのお話しをします。  ですがその前に、もうひとつ別の話に脱線させてください。昨年の5月に、メジャー

ブレイディヴェーグのGⅠ勝利にみられる、血統傾向の変遷(2)

 前回の記事は、ロードカナロアにおけるヌレイエフのクロスがテーマでした。そのなかで、ミスタープロスペクターの血を同時にクロスしているブレイディヴェーグは、過去の成功例とは違う珍しいパターンであることを書いています。ただ個人的に、ブレイディヴェーグのGⅠ勝利は、単なる例外的な事例として片付けてはいけないと考えています。むしろ今の傾向を象徴するものとして、もっと大きな意味があるのではないかと感じるのです。    さていきなりですが、ここからはロードカナロアの配合論や、ヌレイエフ

ブレイディヴェーグのGⅠ勝利にみられる、血統傾向の変遷(1)

 ブレイディヴェーグは『ヌレイエフ』の血をクロスしたロードカナロア産駒。歴史的名馬のアーモンドアイを筆頭に、 レッドルゼル(JBCスプリント)、ジョーカナチャン(アイビスSD)など多くの活躍馬をだす仕掛けです。  このパターンには、ある興味深い傾向があります。それは『ミスタープロスペクター』の血を同時にクロスしないほうが、好成績を残しやすいということ。ヌレイエフのクロスをもつカナロア産駒を、ミスプロの血をクロスしているかどうかで分けて、勝ち馬率を調べました。  該当馬はほ

シニスターミニスターと「ノーザンダンサー×バックパサー」血脈の親和性を考える

 JBCクラシックを勝利したキングズソードは、シニスターミニスターと『デインヒル』の血の組み合わせをもっています。このパターンの牡駒は9頭中6頭が勝ち馬。キングズソードとその全兄・キングズガード(プロキオンS)のほか、フルム(4勝)などの活躍馬をだしています。  今回のお話は、デインヒルのような「ノーザンダンサー×バックパサー」血脈は、シニスターミニスターと親和性が高いのではないか? という推測がテーマです。    デインヒルは父がノーザンダンサー、2代母の父がバックパサ

ソダシ&ママコチャ姉妹にみられる血統的な特殊性

 昨日、ママコチャがスプリンターズSを優勝。その日の夜に全姉・ソダシが引退を発表。一族を応援するファンにとっては、複雑な心境の一日になってしましましたね。  実はソダシがアルテミスSを勝ったころから、血統表をみていて特殊性を感じていたことがあります。  ソダシとママコチャは、クロフネと『ドローン』の血の組み合わせをもつ競走馬です。このパターンはダート適性を高める効果があります。代表例はテイエムジンソク(ダート重賞2勝)、トウショウカズン(大和S)など。該当馬が挙げた勝ち星

シンボリクリスエス×ダイワメジャーの効果を考える

 シンボリクリスエスはパワーに優れた血。ダイワメジャーは突進力を強みとする血。両者を組み合わせることで、パワフルなスピードを強化するパターンです。  この配合にはとても面白い仕掛けが組み込まれています。実はシンボリクリスエスの3代母のヘイルプラウドリーと、ダイワメジャーの3代母であるコンセンティダは、血統構成がよく似ています。両者はロイヤルチャージャー、アリバイ、ウォーアドミラルの血が共通。ニアリークロスによって共鳴することで、パワー増幅効果をより高めているのです。  

シンボリクリスエス×ストームキャットの効果を考える

※24年5月更新  シンボリクリスエスにストームキャットを組み合わせると、シンボリクリスエスの母の父・ゴールドメリディアンと、ストームキャットが「ボールドルーラー+プリンスキロ+クリムゾンサタン」の脈絡によって同調します。    シンボリクリスエスの強靭なパワーと、ストームキャットの軽快なスピードが融合。軽くて力強い(≒非力でない)推進力を増幅することができます。芝馬、ダート馬どちらにも効果があり、優れたパワースピードとして、さまざまな場面で役に立つ仕掛けです。  ロー

キングカメハメハ×サクラユタカオーの効果を考える

※24年8月更新    キングカメハメハにサクラユタカオーを組み合わせると、二つの脈絡が発生します。ひとつはヌレイエフとサクラユタカオーの同調。もうひとつは「ブレイクニー≒サクラユタカオー」のニアリークロスです。 ヌレイエフとサクラユタカオーの同調  キングカメハメハがもつヌレイエフと、サクラユタカオーの血統構成に注目してください。ヌレイエフはハイペリオン4×4のクロスを内包。さらに4代目にはナスルーラの血があります。一方のサクラユタカオーはナスルーラ3×4を内包。さら