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『帰って来た橋本治展』に行って来た▶チャーリー

みなさんは「気になる作家」がいますか?

「気になる作家」というのは作品が出たらすぐに読むという「お気に入り作家」ではなく、むしろ沢山読んでいる訳ではない、なかなかタイミングが合わない、本屋で「あ、そうだ!」と思い出して棚を探しても、そんな時に限って棚に無いので、全然読んでなかったりする、でも時々思い出しては、なんか気になっている(いた)作家のことです。

横浜市の「港の見える丘公園」のそばにある県立神奈川近代文学館で3月30日から「帰ってきた橋本治展」が開催されています。(6月2日まで)

橋本治さんは自分にとって「気になる作家」なので、行って来ました。

橋本治さんが東大在学中にその名を世に知ろしめすことになった1968年(昭和43年)の東大駒場祭のポスターの原画はもちろん、イラストレーター、作家、脚本家、評論家とマルチで活躍した橋本治さんの原画、生原稿の数々から、教則本出版やショーまで催した手編みセーター、一時期ハマって店の服を全部買っていたというヴェルサーチの服など多数展示されており、「人間・橋本治」の展示としてなかなか見応えがありました。

展示でも詳しく取り上げられてましたが1977年に発表した「桃尻娘」という小説が橋本治さんの作家デビュー作でした。
主人公は女子高生。彼女の自然な口語体で語られるちょっとポップな青春小説です。

橋本治さんはこの作品で『小説現代新人賞』の佳作を受賞しました。
東大出身、既にイラストレーターとしても有名だった男性が、女子高生の言葉で小説を書いたというのは今だったら珍しくないかもしれません。でも当時は話題性充分だったようです。
一方で選考員の間ではこの作品に肯定的な人は少なく、選考員の一人だった野坂昭之氏だけが推したという事も今回の展示で知りました。

「桃尻娘」はヒットし、続編も出て、主人公の女性だけでなく、彼女の同級生の男子、同姓に興味のある男子、ちょっと天然なお嬢さんなども登場し、それぞれのストーリーが語られます。

僕も出版からしばらくして、おそらく高校生の頃、80年代初期にこの作品を読みました。

なにか魅かれるものを感じました。

が、それがなんだったのか?なぜひかれたのか?

同じ10代としての共感だけではなく、同じ10代として理解しきれないところもある登場人物の心情が気になったのか?
転校生と話したら、今までの友だちと全然タイプが違う、みたいな新鮮さと戸惑い?

いずれにせよ、そこから、橋本治さんは自分の「気になる作家」になりました。

残念ながら橋本治さんは2019年に亡くなられました。

その時には久しぶりに橋本治作品を読みたくなり「蝶のゆくえ」という短編集を読んで、後に「朝の横浜読書会」で紹介しました。

横浜読書会には2021年から「源氏物語」を読む読書会がありますが、そこに初めて参加する時に自分は橋本治訳の「窯変 源氏物語」を選んだ理由も、「気になる作家」だったからだと思います。

そんな橋本治さんが今再び取り上げられている…。

気になる作家の気になる展示でした。

みなさんの参加をお待ちしています。

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【投稿者】チャーリー

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