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吉田秋生と鎌倉▶Yuning


吉田秋生(あきみ)といえば鎌倉であろう。

知っている作品に「BANANA FISH」を挙げるか、「海街diary」を挙げるかでだいぶ世代がわかれるが、私にとって最も印象深く鎌倉を感じさせる彼女の作品は「ラヴァーズ・キス」である。

江ノ島水族館でゲットしたクラゲちゃんと、おもちゃの木の電車を添えて。


この文庫版の装丁がまずもって素晴らしい。
江ノ電色のカバーと踏切の写真。
夏の鎌倉の、降るような蝉しぐれが聞こえてきそうである。
 

***

 
「ラヴァーズ・キス」は、鎌倉の県立高校を舞台にしたオムニバス形式の青春恋物語だが、あの壮大な長編「BANANA FISH」完結後に連載された作品として、前作の余韻がすごすぎて読めなかったという人と、だからこそすごくハマれたという人にわかれたそうだ。
 
メインのカップルは朋章と里伽子で、明け方の海辺で最悪の出会い方をした二人だったが、やがて互いの心の傷に触れ、過去の痛みを分かち合うことでかけがえのない恋人となる――。

…とまあ、そこはいいのだ。いや、このメインのストーリーも大変良いのだが、私が吉田秋生の手腕に唸らされたのは、その後に続く二つのストーリーである。一つは、朋章の部活の後輩であるメガネの鷺沢くんと、さらにその後輩であるネアカ関西弁の緒方くん。もう一つは、里伽子の親友である美樹と、里伽子の妹の依里子。姉妹は、関係がうまくいっていない。
 
朋章と里伽子は将来を誓い合った仲だ。そのかげで、鷺沢は朋章に、緒方は鷺沢に恋している。また、美樹は決して言わぬが里伽子に秘めた恋を、依里子は美樹に想いを抱く。そして、クラスメイトである緒方と依里子はお互いに報われない恋をしていることを知り、最高の友情を築く。
 
たった6つのエピソードで、少しずつ重なって語られる登場人物たちのまっすぐな想い。やがてそれらは数珠のようにつながり、同級生だったり、姉妹だったり、先輩後輩だったり、幼馴染だったりする中で、切ないけれども前向きな気持ちで、彼らはそれぞれの明日を生きる。
 

***

 
「ラヴァーズ・キス」に関しては、もう一つ思い出がある。本作は2003年に映画化されており、私の強い推薦により同期の女子会(というか単なる部屋飲み)でそれを鑑賞することになったのだが、その映画があまりにつまらなくて皆寝てしまった。あの時、もう一本借りてあったスティーブン・キング原作の「ミスト」にしとけば良かったと今でも後悔している。
 
でも吉田秋生の原作は本当に最高です…!!
ぜひ、鎌倉の海辺に座って読んでみてください。

 
今日は鎌倉の話でしたが、横浜でお待ちしてます♪


【投稿者】Yuning



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