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新型コロナウィルス感染症治療薬「レムデシビル」が米国で承認された件について

コロナウィルスの治療薬として何やら新たな薬が緊急承認されたというニュースを見かけたので個人的な考察を書いてみようと思う。

記事の概要

・ 米国の食品医薬品局(FDA)は、米製薬ギリアド・サイエンシズの抗ウィルス薬「レムデシビル」を新型コロナウイルス感染症治療薬として、緊急使用を承認した
・ 同社のダニエル・オデイ最高経営責任者(CEO)は、トランプ米大統領と会談した
・ 同社は感染者の治療に向け、レムデシビルの薬瓶150万個を無償提供する

レムデシビルの有効性を調べてみた

“FDAが緊急使用を承認!”と文字面だけを追うと「レムデシビルという薬は有効なのだ」と誤解しそうになるのでまず有効性を調べてみた。

BMJ(British Medical Journal:イギリス医師会雑誌)に寄せられた専門家達のコメント
 ・ ある程度の効果はありそうだが、夢の薬ではない。
 ・ 症状軽快までの期間が平均15日から11日に短縮。
 ・ 死亡率には有意差示せず。(8.0% vs 11.6%, P=0.059)
 ・ どのような患者を対象にどの時点で投与すれば有効なのかが不明
 ・  正式な発表、詳細なデータ解析が待たれる中、本当に投与すべき
     かがわからない。
  ・ 中国でのRCT(Randomized Controlled Trial:ランダム比較試験)で
    は有意差示せず。 

上記を読み込んでみると残念ながら現時点の報告で示されているのは症状の改善の早さのみで致死率に統計学的な有意差はついてなさそうだ。
死亡率を下げたり、重症化を防ぐのかどうかがわかるのはこれからで、今時点で劇的に効くといったことがはっきりしているものでないことが判る。

レムデシビルの日本への流通の可能性

レムデシビルは特例承認の対象なので今回のFDAの緊急使用認可の流れを受けて、日本でも使用が承認される流れになる可能性が高い。

特例承認(日本):緊急時に、他国で販売されている日本国内未承認の新薬を、通常よりも簡略化された手続きで承認し、使用を認めること。
 緊急使用認可(米国):緊急性が高いなど一定条件を満たせば特例として認める仕組みで、新薬の有効性を正式に確認した「承認」とは異なる。

薬を売りつけたいアメリカが前向きな臨床試験結果を発表しまくっている一方で、中国の研究チームは効果を確認出来なかったとの論文を発表している。穿った見方になるが、今までのアメリカの事例を見ると今回の緊急使用認可は米国製薬業界の株価対策である可能性もゼロではない。
今回の緊急使用認可に仮に何らかの恣意性が働いているとすると例のごとく、アメリカの圧力に負けて日本が大量購入を強いられるという流れもあり得る。
 日本とアメリカでは、圧倒的な体格の差、肥満の人の割合の多さ、今回の場合はコロナウィルスによる死亡数の差という特別な背景の違い等を認識したうえで使用を判断することが大切だ。

未知のウィルスであるコロナウィルスに対して、何らかの治療薬が存在することは希望につながるが、薬に副作用はつきものなので特例承認を認めるとしても日本での臨床試験の結果を見なければならないし、レムデシビルを薬と判断するにはまだまだ時間がかかると思う。
 
 重要なことは必要性や緊急性等を勘案して、その薬を使用することが、使用しない場合よりも、患者にとっての利益が大きいこと、医療関係者や患者、そして社会全体が副作用について、正確に理解した上で、適切に使用することが大事だと思う。

今後の動向を注意深く見ていきたい。

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