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米国株・全世界株系投資信託の複利効果の見通しについて

某SNSでの話題を元に、一度だけちょっと深く考察するだけの文章です。
今回は、何回か前、「投資信託の複利効果は本当に起こりえるのか?」と題して語りました内容について、補足といいますか、現状の私の考えをもう少し詳しくお話していきたいと思います。
投資信託について複利効果を唱えることに疑問符を抱いていた方の元記事については、こちらをどうぞ。

……と。その前に。
投資について語るとき、私がかならずやっている前置きを、改めてこちらでもさせていただきます。

本稿は、投資それ自体を推奨する目的で書かれてはおりません。
投資をなさる場合は自己責任で、かつ生活資金には手を付けず、余剰資金で行うことを頭の片隅にでも留めておいて下さい。

なお、仮に投資初心者で、「投資を始めたい」と思っておられる方は、

山崎元、水瀬ケンイチ著 「難しいことは分かりませんが、お金の増やし方を教えて下さい!」

を一冊、隅から隅まで読み終わってからでも遅くはありません。
では、本編です。

……さて。
元記事を書いておられる鈴木雅光さんの記事については、私は以前にもなんどか当たったことがあるのですが、正直その著書のなかに外貨投資を勧めるものがあり、その時点で一般の人に金融を勧める人間として適切でない、という判断は下しておりました。(もちろん我が敬愛する山崎元先生は、外貨預金などの外貨投資はするべきではない! と著書のなかではっきりと述べておられます)

ただ、この鈴木雅光さんの元記事には、私の中の「投資信託の複利効果における疑問」と、ややリンクする部分もないわけではないのです。いいところをついてるな、という箇所もあります。その一つが、記事内にある、「元本となる投資信託の『基準価額(株でいう株価。時価総額を発行単位で割ったもの)』」は日々変動している」という指摘です。
基準価額は下がることもあるのだから、下がったところから利率計算をしたらその時点での利益は指数関数的に減るだろう、ということです。

実は、その通りなのです。
私は以前、個別株投資に手をつけていた時代に(山崎先生の教えを忘れ、こんな浮気をしているから損失をかぶるんです)「十倍株の見つけ方は存在する」という内容を唱えている評論家さんがあり、その方の著書を読んだことがあるのですが、その方の言によると、アメリカの実力ある機関投資家(ファンドマネージャー等)は、ROEに着目する、という話でした。
ROEとは自己資本利益率のことで……ああああ話が長くなる。やめましょう。詳しく知りたい方は「『予想』のいらない株式投資法」をお読みください。ただし、実行してみよう、とは思わないことです。生兵法は大けがの元です。金融においては、とくに。
で、何が言いたいかといいますと、ROEの詳しい説明は今おいておくとしまして、向こうの機関投資家たちは、このROEが「増加」をしていないと納得しない、というのです。
ROEは指数で、この指数が増加する、ということは、実は営業利益率は「指数関数的に増加」している、ということになります。つまり。
私は、「投資信託の複利効果は本当に起こりえるのか?」の項で、株価が指数関数的に高騰していく個別株なんて、そんな都合のいいものそうそうない、と申しましたが、あちらではそんな「都合のいい株」しか相手にしたくない、というのです。
ですから、向こうの機関投資家は逆説的に、企業の成長率が下がる「営業利益率の低下」を微妙に嫌い、何より「最終赤字」を蛇蝎のごとく嫌います。利益率の低下ならまだ許せるが赤字は許せん、ということでした。

これを上記、鈴木氏のいう「複利効果の疑問」に当てはめると、
「基準価額が低下した投資信託商品は複利効果をマイナスに発揮する」
ということになります。
そして。その指摘はかなり、いいところをついているのです。

ですが。
ここからが主題です。

実は、直近10年間でのS&P500指数は、およそ2.7倍となっております。
(仮に、本稿のトップに貼り付けたグラフの通り、2010年、およそ14年前と比べるなら、実に5.4倍近く、となります)
仮に、このS&P500の増加率を、複利効果が発揮されていると仮定した指数関数だと考えてみますと、年率約14.7%のリターンをもたらしている、ということになります。
逆に、仮に増加率を、単利効果しか発揮されていないと仮定した単調増加関数だと仮定すると、年率は27.3%という破格の数字となります。

ちなみに、S&P500という指数が生まれた1957年から見てみますと、年率は10.7%、という計算になります。指数関数的に見た場合です。

言ってみればですね。
仮にS&P500という指数だけ見てれば、という話にはなるのですが、複利効果を発揮していると仮定してさえ、世界成長率を年間5%と見積もった場合より、高い利益率だということなのですよ。

いまから6年前、あるいはそれ以前から投資、それも米国株式への分散投資を行っていた方ならわかると思うのですが、年利5%、よくて7%と思い始めた投資信託の利益率が、実は予想よりかなり「よい成績」をたたき出していることに肌感覚で気づいていると思います。

この10年の間にはトランプ政権の発足、中国経済の発展と翳り、イスラムのタリバン問題等の中東紛争、コロナ禍、世界的なインフレ傾向、ロシアウクライナ戦争、イスラエルのガザ地区攻撃等、世界的な問題を多く含んでおり、そのたびに世界経済は影響を受けてきた上で、これです。

ただおそらくこれは、アメリカ経済の一種の「バブル的側面」が影響はしていると思います。つまり、世界的成長を超えてアメリカ経済が「上げすぎている」「評価されすぎている」傾向にあるのでは、とも思えます。

そういう、「リスク(リスクという言葉には、上ブレも下ブレも含みます)」を含めて、全世界株式の投資信託が、世界経済の成長率である5%と同じ、年率5%のリターンをたたき出すだろう、という推測は、現実的でない、ということはないのです。

言ってみれば。
鈴木雅光さんが言っているような程度の「下ブレのリスク」は、「年率5%」という根拠の中には、すでに織り込み済みで計算されつくしている上で発言されている、ということが言いたいわけです。

すでに織り込んであるリスクを、「織り込んでないもの」と仮定して、さらにリスクとして計算すれば、それは「おびえすぎ」というものです。
計算結果も間違って出てきます。
いわば。

妥当なものは、妥当なのだ。
そういう、ありきたりな結論で、本稿は終わらせていただきます。

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