暮瀬堂日記〜水鉄砲
公園の近くを通ると、トネリコの花が満開であった。枝先を簪(かんざし)のように飾る様に、ひと時目を奪われていた。
すると、父親に連れられた二人の幼子が現れ、水道で水をつめはじめた。程無く、振り返って辺りを見回すと、勢いよくトネリコの花に狙いを定めたのだった。
トネリコの花を撃ち抜く水鉄砲
何本かの簪は千々に砕けて地面に散らばってしまった。
人気が無くなった後、花を拾い上げると、白粉の様な香りが漂った。暫し目を閉じ、左褄の面影に思いを馳せていた。
久々に撃たれてみたし水鉄砲
水鉄砲むかし撃たれし胸の音
(旧暦六月十九日 立秋の節気 涼風至る候)
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