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暮瀬堂日記〜炭火の狂句

 気がつけば師走である。
 年の明ける頃から、不穏なうごめきが武漢で始まったかと思うと、瞬く間に巷に新型ヴィルスが蔓延してしまった。治まりの見えない混乱は、末法末世の靄の中に居るかのようである。

 朝夕には寒気が弥増し、乾燥した手指には胼(ひび)が広がり、吐き出す息は白さを増している。
 炉開の炭火も混乱して、火花を走らせるのではないか。

  師走ころ名ばかり気にし炭火跳ぶ

 時には狂句風にと思い、一句をたわぶれてみた。


(二〇二〇年 十ニ月朔日 火曜 陰暦十月十七日 小雪の節気 朔風払葉【きたかぜこのはをはらう】候)

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