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暮瀬堂日記〜旗魚(かじき)

 鮮魚コーナーに足を向けると、『旬 生めかじき』などのラベルが目につくようになった。高いので中々手を出せないが、この日は脂の乗りに抗えず落手した。


 旗魚は「旗魚鮪」とも呼ばれるが、鮪とは全く違うもので、魚屋や鮨屋に赤身の肉が出回ったので混同されたようである。また、この時期が『旬』なので、冬の季題とされている。

  水揚げの旗魚を叩く夕霰 中迫真
  旗魚跳ぶ銛三本を背に負ひて 井上まこと

 上記ニ句のみが歳時記等に見られるばかりで、他に散見されないのを思えば、俳人には余り馴染みが無かったのかもしれない。

  真旗魚のくの字で銛を受けにけり

 手向けの一句を吟じ、舌鼓を打って味を噛みしめていた。
 

 

(二〇二〇年 十ニ月ニ日 水曜 陰暦十月十八日 小雪の節気 橘始黄【たちばなはじめてきばむ】候)

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