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暮瀬堂日記〜団栗

 石畳に団栗が落ちていた。見上げるが、櫟(くぬぎ)の枝は無く、道に添って点々と実が転がっていた。集めた実に飽いた子供が捨てて行ったのだろうか、とも思ったが、それらしき姿は見当たらなかった。


 果て、どうしたものだろうか、と団栗を辿って行くと、答えが分かって首肯した。
 
 トラックに剪定した櫟の枝葉が山積みになっていた。ちょうど積み終わったのか、左右にロープをかけて、一服燻らしているところだった。

   切り枝の団栗こぼす庭師かな

 トラックの荷台にどれだけ団栗が転がっているだろうか、などと思案しつつ、手控えを取り出すことにした。


(新暦十月三十日 旧暦九月十四日 霜降の節気 霎時施【こさめときどきふる】候)

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