見出し画像

暮瀬堂日記〜無季である烏賊

 生のスルメ烏賊が安かったので二杯購う。最近よく並んでいるので秋の季語だったか、と思い季寄せをめくれば、「烏賊」単独での季題は見当たらなかった。「花烏賊」は春、「烏賊釣・烏賊釣船・烏賊釣火」は夏、秋だと「烏賊干す」が記載されていた。
「螢烏賊」は春の季語なので単独で成り立つが、「烏賊」は季感が弱いのか、確かに『旬』のラベルを見かけたことがない。

  烏賊の眼を塩辛にして月見酒


 今年の仲秋の名月は十月一日なので、月見にしては早い句となるが、烏賊の眼との組み合わせは合うのではないだろうか、と一句を戯れた。
 烏賊に二個しか無い眼玉は貴重なもので、私の中の三大珍味の一つである。烏賊の眼を噛みしめるとき、潮の香りが口の中に弾けるのだが、正しく眼福のようなひと時である。

   噛みしめる烏賊の目玉に濁り酒

 フレッシュな濁酒に、たちまち塩辛は無くなってしまった。

※濁り酒・濁酒(どぶろく)……新米を炊いて作ることから仲秋の季語とされた。かつて濁酒といえば密造酒が殆どであった。

※くれぐれもアニサキスに注意して下さい。

(新暦九月十二日 旧暦七月二十五日 白露の節気 鶺鴒鳴【せきれいなく】候)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?