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暮瀬堂日記〜雁の来るころ

  真っ青に晴れわたり
  太陽も見えない
  澄んだ空だった
  そこに落雁の群があらわれ
  空に一線を引きながら
  稜線の裏に消えた

  けれども
  消えたのは雁だけで
  線は残っていた
  ちょうど
  太陽の沈むあたりである

  地上では
  日時計につながれた牛が
  畑を耕しながら一周すると
  めくれあがった線の中から
  落雁の群が戻ってきた
  線は群に列なると
  陽の昇るあたりに向かった

  地上では
  日が暮れても
  牛は黙々と
  時を耕していた
 
 そろそろ雁の来る季節であるなあ、と空を眺めていると、そんなことが脳裡をよぎった。

(新暦十月九日 旧暦八月ニ十三日 寒露の節気 鴻雁来【こうがんきたる】候)

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