暮瀬堂日記〜武蔵野陵と蛇穴に入る
「土方と近藤が育った所に行きたい」
と言う家人の言葉を耳にし、日野の「新選組のふるさと歴史館」に赴く。
一時間半ほど車を走らせ到着すると、なんと、前日から臨時休業となっていた。では「土方歳三資料館」はどうだろか、と調べて見ると、やんぬるかな、こちらも休みである。
「近くまで来たのだから、八王子城跡に行って見よう」
と更に三十分車を走らせる。
坂道を昇り里山のような風景が続くと、行き止まりになり駐車場と資料館があった。城郭・城壁跡を見るには、歩いて登らねばならなかった。
「せっかく来たのだから…」
とはならないのが、いいところで、暑いから帰ろう、とすぐに来た道を戻ったが、『多摩御陵入口』の交差点を目にして、
「せっかくだから行って見ようか」
と信号を左折した。
大正天皇皇后両陵墓、昭和天皇皇后両陵墓があり、昭和天皇が斂葬されてからは『武蔵野陵』に改称されている。
家人は行かないと言うので、私だけ行ってみることにした。
四〇〇メートルくらい歩いただろうか、陽炎の漂う先に巨大な墳墓が出現した。するとその時、草むらの中に蛇の這って行くのが目に入った。どこかに塒(ねぐら)があるのだろうか。
みさゝぎを巡りて穴に蛇入る
冬を凌ぐ巣穴を探すために、陵(みささぎ)を探索して来たのかもしれない。そう思いつつ、激動波乱の人生を生きた昭和天皇陵に礼拝したのだった。
※蛇穴に入る……へびあなにいる。「蛇穴を出づ」(仲春)、「蛇衣を脱ぐ」(仲夏)、そして、蛇は寒さを凌ぐために、また穴に入るのである。仲秋の季語。
(新暦九月九日 旧暦七月二十ニ日 白露の節気 草露白【くさのつゆしろし】候)
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