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ロサンゼルス空港で別室送りにされた話

コロナ前に書いた「ノリと勢いで地球の裏側にいった備忘録」をやっとnoteにアップした。すごく中途半端だけど。
旅行の最中の衝撃的な出来事は多々あれど、それは私の旅のお土産であり、皆さんが現地に行って体験してほしい…とかカッコいい事を言って詳細を書かなかったんだけど(詳細書く前に力尽きた)、これだけは書いておきたい…と思ったエピソードが一つあった。

そう、帰り道のトランジットでロサンゼルスの空港に着いたときの話だ。
私は入国審査に引っかかり、所謂「別室送り」になってしまった。
それの理由がいまだにわからず腹立つな…おい…と思ってるので、書いておかねば!と思った。こんな理不尽に拘束されるなんて日本人ではありえないことだ…本当にいまだに理由がわからない。
あと、別室送りになったらネットで「ロサンゼルス 別室送り」とか「空港 通れない」とか散々調べたので、こんな私の経験ものちの人の一助に…は、ならないとおもうけど、参考程度になればと思って書いておく。

南米のリマからロサンゼルスへ長時間フライトし、ロサンゼルスから韓国のインチョン、韓国から日本へ…と、安さを追求した結果トランジットだらけになっていた。
ロスから韓国行へのトランジットは6時間ほど。荷物とって、買い物して、ごはん食べて…とかしていたら、まあそこまで退屈はするまいと思っていた。

なんせ帰り道なので気持ちも大きい。
行きはESTAの受付機械にしどろもどろし、「とにかく何を聞かれてもSightseeing!と繰り返せばいい…」と恐々行ったが、周りは日本人のツアー客がいるし、もう旅行のラストスパート、今まで幾多の国の入国審査を潜り抜けてきたのだから捕まる要素はゼロ!と思っていた。

反対に同じ列の後ろに並んでいる日本人ツアー客の人たちは添乗員さんに「行きも通ったけど心配だわ…捕まったらどうしましょう…」とか不安そうにしていた。高齢者の方が多そうなツアーだったからだろう。添乗員さんも慣れているのか「何かあれば私が通訳しますから。でもきっとすぐに通してくれますよ」と安心させるように言っていた。素晴らしい。添乗員付きツアーはああいうところがいいなぁ…とか思いつつ、友人2人とおしゃべりしつつ、入国審査へ行った。友人2人が最初に通り、わたしもさっさと通るぞ…と思った時だった。入国審査官がじっと私の顔をみて、なにかを喋った。
「ん?」
あまりの早口でなにを言われたのかわからないが、「どの空港から来たんだ」的なことっぽいなと思った私は「リマからだよ」と答えたつもりだ。
何しに来た?と聞かれたので「観光だよ、LAはトランジット」と答えたつもりだ。
そうしたら、少し考えこんだ審査官が隣の審査官を呼び、もう1人審査官がやってきた。なにやら2人で私の事をじろじろみながら話している。

他の人たちが一瞬で通されるところを数分とはいえ色々聞かれて足止めを食らっているので後ろの団体客の「えっ、どうして捕まってるの?」とか「あんなに色々聞かれても答えられないわ」とかいう添乗員さんへの訴えが聞こえていた。

これ以上注目されるのも嫌なのでなんとかこの場所を恙無く終わらせたいと、ひたすら私は笑顔を絶やさずに審査官を見ていた。
とりあえずニコニコしてたら通してくれるだろ。女性だし。と思ってこれでもかというほど「私は無害な日本人!ニコニコ!」と言わんばかりに、無言で楽しそうに微笑んでいた。
呼ばれた方の審査官は苦笑いで何事かを呼んだ審査官と話している。
その間も私はひたすら微笑んでいた。とにかく無害アピールだ。
私は世界の中でも無害と名高い日本人!とばかりに微笑んでいた。
だって捕まる理由が思い浮かばないのだから、
こんなことがないようにマチュピチュでもパスポートにスタンプを押すようなことはしなかったし(※マチュピチュでは記念スタンプをパスポートに押す人が多い。現地のガイドは「問題ない」と言い張っていたが、パスポートに関係ないスタンプを押すのは怖くて私は回避済み)怪しげなものは持ち込んでいない…
強いて言えばコカ茶(コカインの原料であるコカの葉のお茶。南米では高山病対策にめっちゃ飲む)をがぶ飲みしていたが、すでにウユニを発って10時間以上。コカ茶だってすでに排出しているしお土産には買っていない。
(やばいなぁ…これ、マジでコカ茶で捕まっていたら、麻薬中毒みたいな扱いになるのか?でも用心してウユニ後半からはコカ茶も控えたし…)などと本気でコカ茶の所為かと心配しだしたとき、入国審査官はおもむろに言った。

『写真と顔が違う』

…What?
いや、ほんとに頭の上に?が飛んでいた。

「今までの国、全部問題なく通ってきたよ…?」
『いや、写真と全然顔が違う』
「はああああ???」
いくらアジア人の顔が見わけがつかないからって、こんな場所でそれを発揮させてもらっても困る。
「同じ顔!です!」
『いや、違う。あちらへ行きなさい』

あちら、と指さされたのが物々しい雰囲気の警察官が警備する扉…
すごい、本当に映画にでてくるようなアメリカのポリスやん…
その扉は入国検査の出口のゲートの正面にある。
右に通ればそのまま荷物のピックアップなのに…。
ゲートの前では先に通った友人たちが心配そうに見ている。
友人「何?!何どうしたの!?」
私「…顔が違うっていわれた…」
友人「は!?今までなんの問題もなかったじゃない」
係員『喋るな!』
みたいな感じで私はあれよあれよと別室へ…

パスポートは警察に引き渡され、あれがないと帰れない。
パスポートが没収ってこんなに心細いとは思わなかった。
おまけにこの『別室』、モバイル端末の利用は不可どころか電波がシャットダウンされていて外とは隔離されている。
病院の待合室みたいな雰囲気の中、屈強なポリスメン達は部屋の要所にいる。
連れてこられた人は皆無言で、無音のアメフト放送だけが頭上のモニターで延々と流れている。トイレや自動販売機はこの中にあるのでとりあえず脱水の心配はなさそう。でもトイレ行くたびにポリス達にめっちゃ睨まれるから動きたくねえ…。
病院の待合室のような部屋の壁側にはアクリル板で区切られた受付のような場所があり、順番が来たらそこで事情聴取をされるわけだが別に「何番の方~」みたいな番号が割り振られているわけでもないし、どんな順番で呼ばれているかもわからない。
小さな声はこちらには届かないが、まあ皆さんすごい大声で怒鳴ってるからベンチに座る私たちにまで色々聞こえてくる。
私は英語がめちゃくちゃできるわけではないがなんとなく雰囲気では「持ち込み禁止物を持ち込もうとして止められてる人」とか「不法滞在を疑われている人」とかが多い感じがした。
まあ30分もすれば呼ばれるだろうと思っていたが1時間近く待っても何もない。

時折、便名を大声で連呼しながら入ってくる航空会社の人間がおり、「なんだありゃ?」と思っていたが、私の乗っていた飛行機の便名を連呼していたので恐る恐る寄っていくと、航空会社の人たちは持ち主が別室隔離されてしまいターンテーブルに取り残された荷物をこの部屋の外まで持ってくる役目だったらしい。私が名前を告げると「君の荷物は君の友達がピックアップして持ってるよ」といわれた。
ありがとう友人!でも、私がここから出れない限りは友人たちも動けない…。貴重品は手元にあるから最悪スーツケースはなしでも帰れるけど…と思いながら、本当に早くここから出ねばと思った。
屈強なポリスメンたちに「友達が待ってるんです…トランジット…」と泣きそうな声で必死に訴えたが「トランジット?何時の飛行機?」と聞かれ、5時間近い余裕があると知ると「そのまま待って」としか言われない。
無音のアメフトをぼーっと見つめるが時間が全然過ぎない…。
本当に最後の最後まで拷問みたいな時間だった。
だってスマホも触れないし、電波がないならいいだろうと電子書籍を読もうとしたらタブレットも取り上げられそうになる。
本当に泣きそうだった。

一方そのころ友人たちは、私の荷物をターンテーブルから取り上げたものの、1時間くらいで出てくるだろうと思ったのに2時間以上経っても出てこないことに「どうしよう…」となっていたらしい。
荷物を持ってトランジットのため次のターミナルで待つか、比較的近いここで待つかの二択で悩んでいた。
ネットで別室送りになった人たちのレポートを漁ってみてもひどい人だと3時間以上も拘束されたと書かれている。でもどちらかというと入国で引っかかる人がほとんどなのに、連れていかれた私はトランジット…、同じ境遇という人がみつからず困り果てたそうだ。
しかも最後の一言が「顔が違うって言われた…」ですからね、そりゃ困りますよな。
トランジットで顔が違うって言われた人のために私はこのnoteをかいている。

別室で泣きそうになっていた私だったが、結局3時間後にいきなり名前を呼ばれて、面接ブースへ行った。
担当の警察官は気のよさそうなおじさんだったが、さっきこのおじさんが前の親子連れととんでもない口論をしていたのを見ていたのでかなりビビッていたし、もうニコニコするしかないとひたすらニコニコしていた。(でも後からアメリカ住まいの長い友人に聞いたら、アジア人の意味ない笑顔は何考えてるかわかんなくて怖い、と言われたのでこれが捕まった一因なのでは…と思わなくもない)
英語であまりに複雑なことを聞かれたら本気でわからない。
ただ、この3時間の別室待機で「どうやら英語が話せない時は通訳を呼んでくれるらしい」という事を察していたので、(スペイン語圏の人とかが良く通訳呼ばれていた)何かあれば通訳を要求しようと開き直っていた。

質問はすごく単純だった。
『どこから来たの?』『目的は?』
想定問答内なので軽く答えていると、『この次はどこに行くのか?』と聞かれた。
「韓国だよ!」というと変な顔をされる。
『アメリカのどこの都市に滞在するの?』
「トランジットだよ」
まあパスポートの記録だけじゃわかんないもんねぇ…と思って答えたらこう言われた。

『なんで君、ここにいるの?』

わたしのほうがききてーよ。

「…パスポートの顔と私の顔が違うって言われた」
『HAHAHAHAHA!…じゃあ、通っていいよ。はいパスポート』

あっさりとパスポートを返された。
そしてパスポートを返されたならさっさと出ていけとばかりに入り口の警察官に追い出され、私は先ほどと同じ出口から別室の前に放り出された。
あれほど人通りが多かった入国審査はちょうど時間が微妙だったのか誰もいない。
部屋を出たとたんに電波が復活して、ラインが友人たちから届いていた。
友人たちはまだターンテーブルのところで待っていてくれた。
流石にそろそろ移動しようかと話していたよ、と苦笑いされ、返事が返せなかったことを謝ったら「色んな人の体験談みてたら、電波が通じない部屋だって書かれていたから大丈夫」と笑っていた。
拘束時間3時間でやっと入国審査エリアから脱出し、無事にトランジットできたのでした…。

結局、なんで捕まったんだよ!!!と怒っていたのですが、あくまで推測ですがTwitterにて言われたのは
・最近、いくら最強のパスポートを持ってるとはいえ、日本人をスルーしすぎるのは平等性から良くないとかで1日に何人かは日本人を別室送りにするみたいなノルマがあるらしい(あくまで噂)
・①団体旅行じゃない ②時間がある ③英語がめちゃくちゃペラペラというほどではなく言い返すほどの語学力は無いけど、こっちが言ってる事はなんとなく理解できて、通訳を呼ぶほどのレベルではなくやり取りができそう。みたいな人間は捕まる可能性があるとか言われた。

あくまで推測と噂であるのでそこのとこ突っ込まないでほしい。私も『んなわけあるか』とは思ってる。でも顔が違うとかいうわけ分からない言いがかりより、納得してしまったので推測の1つで置いておく。

凄い体験だった。
どう見ても密輸入……みたいな品を並べるおっさんがいたり、『あはは、期限切れたパスポート持ってたら捕まっちゃったー』とか笑う中国人女子と隣同士になったり、人種の坩堝の米国の中でもなかなか濃い人達と出会った3時間だった。
もう二度と行きたくねえけど。

いつか『顔が違う!』って言われた人のためにこのノートをおいとく。
きっと間違いだから大丈夫だよ!と。

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