【ACVI小噺】身体を得たエアちゃんの話【コーラルキメた】

昔からACシリーズはちょくちょく見てた紅月です
今回は記事ではなくACVIのちょっとしたショートショートを書こうかと
時系列的にはチャプター2でエアちゃんが語りかけてきたちょっと後になります


「621、俺はしばらく野暮用で外す」
聞こえてきたのはよく聞くウォルターの声
コーラルの集積地?を探すらしい、難しいことは俺には分からない
そのまま部屋に戻ろうとしてあることに気がつく
「ウォルター、なに、かかえてる?」
「これか?素体だ」
マネキンのような何かをウォルターは抱えてどこかへ向かおうとしていた
「そたい?」
「人間が乗る前のAC用の人形だ、その後は強化人間に移行したがな、まだ残っていたとは」
よく見れば手と足がボロボロだ、これを使うのは大変だから人じゃなきゃ耐えられなかったのかもしれない
【レイヴン】
「え?なに?」
突如脳裏に響くのはつい最近聞こえるようになった声、エア
喋り方から多分女の人なんだろうけど姿が見えないから幻聴だと思われてる
【私からひとつお願いがあります、あの素体を貰ってくれませんか?】
「なににつかうの?」
【少なくとも貴方の迷惑にはなりませんので】
「621、どうした?また幻聴か?」
「うん、ウォルター。それ、どうする?」
「これは旧友に売ろうと思ってる、損傷は軽微だ、直せば使える」
「なら、おれ、買いたい」
服の内側からカードを取りだしてウォルターの前に見せる
「それ、買う、ウォルター、値段分、持っていって」
「……」
一瞬ウォルターは怪訝そうな顔をした
それはそうかも、手や足の壊れた人形なんて何に使うのか分からないし治し方も分からない
だけどエアが使いたがってるし悪いようにはしないって言ってるからそれは信じたい
「わかった、ならそれは持っていけ」
「いいの?」
「お前の働きにはずいぶん助けられている、その報酬代わりだ」
そう言うとウォルターは素体を置いてその場を去っていった
「ありがとう、ウォルター」
悪く言うやつは多い、あのスッラもウォルターに酷いことを言った
でもウォルターが居なければ俺も生き残ることは出来なかった、だから俺は味方だ
誰がなんと言おうと、俺だけはウォルターを裏切らない
【レイヴン、今日はもう休んでください】
「これはどうする?」
【秘密です、明日になれば分かりますよ】
「ウォルターを悲しませないでね」
【はい、それは約束します】
よかった、それなら安心だ
用意してくれたベッドに身体を横たわらせてゆっくり目を閉じる
しばらく休めと言ってくれたし少しだけ甘えさせてもらおう

「レイヴン、起きてください。レイヴン」
微睡みに浮かんでは沈む中で聞いたことのある声が耳に届く
「エア?」
「はい、私です。ゆっくりと目を開けてみてください」
身体を起こしながら目を開くとそこには
「おはようございます、レイヴン。どうでしょうかこの身体は」
細身でスレンダーな身体に雪原のように白く長い髪、その内側に最近よく見るコーラルみたいな薄い赤の少女がそこにいた
「えっと、エア?」
「はい、昨日ウォルターから貰った素体をコーティングしました。ちなみに髪はそれっぽいもので代用です」
「凄いけど、なんで?」
「そ、それは……」
そう聞くとエアはすこしだけバツが悪そうに顔を背けた
「レイヴンにだけは私の声が届きます、ですがそれを幻聴と捉えて欲しくなくて、我儘でしたよね」
「ううん、そんな事ない。俺も我儘言う、ウォルターに無茶も言う、だけどウォルターは許してくれる、だから俺も許す、エアの我儘を許す」
ウォルターにはずっと助けられてばっかりだ
仕事のこと、機体のこと、だいぶ我儘を言ってる
それに比べたらずっと安いものだ
「レイヴン……」
「ところで機体には乗れるの?」
「いえ、多少コーティングこそしましたがやはり手足の損傷は激しく、操縦桿を握るのは難しいですね」
「そうか、残念だね」
「えぇ、ですがそれ以外のところで私は貴方をサポートします。なのでまずは食事にしましょう」

その後、この関係はウォルターが戻ってきても続いた
凄く驚いてたみたいだけど受け入れてくれたみたいで今は2人でサポートをして貰ってる
傭兵は大変だけどこの2人がいれば何とかなる
そんなことを考えながら俺は今日もコーラルを巡る戦いに身を投じ続けていく
2人が笑う顔が見たいから

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