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時代の鏡

オペラを含むクラシック音楽が、難しいとか、つまらないと感じる方が多いのは、当たり前のことだと思います。

それぞれの時代に作られているアート(音楽だけでなく、絵画、建築、書、ファッション他)というのは、その時代を反映しているので、時代が古いものは、背景を知らないとわからないことも多いからです。もちろん、現在まで残っている作品というのは、普遍性のあるものや、人間性の本質的なところをつくものが、多々あります。ですが、『日々消費されていく娯楽』として創られたものもありました。

オペラというのは総合芸術と言われ、あがめ奉られていますが、19世紀のオペラは、現在のテレビやYouTube、あるいはNetflix他、の中にあるドラマのようなものだったのです。一つ違うのは、オペラ座で見なければならないので、人に会う社交場も兼ねていたところでしょうか?

当時のオペラについて、里中満智子作オペラマンガ『ニーベルングの指輪・上巻』の岡田曉生さんの解説から、19世紀のオペラについて、抜粋させて頂きます。

台本は、専門のシナリオライターが担当するのが常で、彼らは右から左へと手際よく、紋切り型の(独創的でもなければあまり芸術的価値があるとも言えない)ストーリーを仕上げて、作曲家に手渡します。そして、作曲家は、決められた期日までに、これまた手際よく適当な音楽をつけてさっさと作曲してしまう。十九世紀のオペラは、こんな具合に作られていました。別に複雑で凝ったストーリーを提供する必要はなかった。当時の聴衆がオペラに求めていたのは、今日のハリウッド映画の観客の大半と同じく、「紋切り型のヒーローとヒロインの甘ったるい恋の物語」程度のオキラクな娯楽であって、下手に凝った大規模なものを作っても、逆に観客ウケが悪くなってしまうリスクさえあったのです。

これを考えると、現時点で売れている娯楽作品が、後世、どのように残っていくのか、また、どのように評価されるのか、楽しみです。楽しみって、もちろん、私が万が一、次回も地球上に生まれ変われた時に、このことを覚えていれば、の話ですが(笑)。

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