【刀ステ】2.5次元デビューしたら推しがラーメンの屋台をやっていてショックだった


タイトルを読んで「あいつか……」となったベテラン審神者の方、記事にアクセスいただきありがとうございます。舞台『刀剣乱舞』シリーズ。非常に面白かったです。

タイトルを読んで「そんなことある??」と不審に思った皆様、舞台『刀剣乱舞』シリーズのアーカイブ配信を購入してみてください。非常に面白いです。

言いたいことは以上です。では解散。

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と、終わらせてしまうには勿体ないぐらいに、刀ステこと舞台『刀剣乱舞』シリーズが面白かった!

そうです。先日、DMM動画で開催された1日1本無料配信ウィークで刀ステをはじめて観たクチです。もっと言うと、2.5次元と呼ばれるジャンルにがっつり足を踏み入れたのもこれが初めてでした。

僕は、刀剣乱舞のゲーム自体は検非違使から虎徹さんがドロップしないのが辛くて引退してしまっています。初期のころですねコレ。
しかしながら、眉目秀麗な男たちが豪華絢爛な衣装に身を包んで戦うというコンテンツそのもののイメージには吸引力があり、図録やキーホルダーを買ったり、アニメの活撃・花丸や実写映画版は履修して「すげぇ面白いな!」と楽しんでいました。

そんなこんなで、舞台というジャンルにはなじみがないものの、過去のメディアミックスがすこぶる面白かったので舞台もきっと面白いんだろうな。と軽い気持ちで無料配信実況に参加。その結果……

※舞台『刀剣乱舞』義伝 暁の独眼竜 伊達政宗の老衰シーンを見た際のツイート
もういい年の男が平日の夜23時に泣いてしまった。

こんなことになりました。マジでいままでのメディアミックスで一番面白かったんじゃないか?
アーカイブ配信ゆえに三時間ぐらいある舞台を休憩無しで観るのは結構キツかったです。それを一週間続けたので体力もヤバかったです。しかし、無理を押してでも結末を知りたくなる物語がそこにはあった。

スゴいんですよ刀ステ。尺が長いなら長いなりにキャラの掘り下げが深いし。ふだん観る90~100分前後の単発映画とは比べ物にならないロングパスを繋いだりするし。「時代劇」と「タイムスリップして歴史を守るSF」を両立しているし。映画版と違って謎のエナジードリンクとか出さないし……。

本当なら一本ごとに感想を書くべきなんですが、それだととても僕の文章力ではまとまりません。なので、僕が素敵だと思った刀ステの要素をいくつか抜粋してコメントしていきたいと思います。

一応、未見の方はネタバレに注意




イケメンはウジウジしてても許される

僕が刀剣乱舞のメディアミックスとどう付き合っていくのかを決定づけたのが、アニメ『刀剣乱舞-花丸-』の第二話「言いたいことなんて…、何もない」です。織田信長にゆかりのある、へし切長谷部・宗三左文字・薬研藤四郎の3振りがお茶の間で元カレである信長トークに花をさかせるあの回です。

面倒くさいことこの上ない男たちが辛気臭い話をする回なのですが、同時にその面倒くさい男たちが己の葛藤をいかに自覚し、折り合いをつけていくのか……。そういうテーマに刀剣乱舞の真髄を見たように思います。

そんなこんなで、この刀ステにおいてもメインキャラのウジウジっぷりが半端ない。元カレに未練たらたらなへし切長谷部や不動行光はもちろんのこと、今回は写しコンプレックスの山姥切国広が実質的な主人公になっているし、復讐シンドロームの小夜左文字まで合流しました。ゲーム本編のプレー時間が短い僕でもわかるトラブルの予感しかない組み合わせ……。

初っ端の虚伝 燃ゆる本能寺からアクセル全開です。本来なら誉れ高い近侍という役職を与えられた山姥切国広はプレッシャーに耐え切れず、舞台のすみっコで体育座りでうずくまってしまいます。ヤバイですよね、湿度が。ただでさえ部下の不動行光は「どうせおれはダメ刀だよバーカ!」と最悪な開き直りをしている状況で、隊長の山姥切国広は「そうせ俺なんか……」と塞ぎこんでいる。

でも、この山姥切国広という男の恐ろしいところは、そんな風にしょぼくれて座っているだけでなんかやたらとエモい絵面が完成してしまうところにあります。反則でしょ……。

そんな反則男子を取り巻く環境もなかなか!極まっていて、主にメンタルが安定している三日月宗近や鶴丸国永といった刀剣男子が隊員のカウンセリングに奔走しています。そうまでされては、観客である僕も「めんどくせーな!お前ら!」とは迂闊に言えず、いつのまにか後方で腕を組んで見守る体勢になっているのでした。


イケメンに話しかけられるとドキドキする

ところで、皆さんは男にウケる男キャラというとどんな奴らを想像するでしょうか?いろいろパターンはあるのでしょうが、僕が実際に見聞きした事例を挙げると『グランブルーファンタジー』のパーシヴァルとか『アークナイツ』のシルバーアッシュなどでしょうか。彼らに共通しているのは顔とスタイルと家柄が良くて、文武に秀でたスパダリ……というところ。なるほど、あんな強くて完璧な男が自分を特別扱いしてくれたり、二人きりの時にだけみせる表情があるというのは悪くありませんね。

が、前述したとおり刀ステのメインキャラは完璧超人ではなく、なんか煮え切らないイケメンが基本。そう簡単に絆されたりしないぞ!と余裕をぶっこいていたのですが、これがとんでもない間違いでした。

初っ端の虚伝 燃ゆる本能寺からアクセル全開です。山姥切国広が出陣の結果を審神者に報告する終盤のシーンですよ。それまで刀ステにおける審神者という存在はことづてに伝令が下されるぐらいで、ゲームほど「審神者=あなた(プレーヤー)」という点は協調されてなかったんですよね。それが、この任務報告のシーンに限っては「山姥切が報告をしている審神者とは、あなた(=観客)である」としか考えられない構造になっている。めっちゃカメラ目線で話しかけてくる。山姥切国広が僕に向かって話しかけてきている。完全に壁のシミとして物語を俯瞰しているつもりだったので、思わぬ襲撃にビックリしていました。

刀ステの山姥切国広は初めから完成されたスパダリではありません。しかし、任務を通じて一皮むけた“いい顔つき”になった男がとつぜん、二人だけの密室で……「俺のことを美しいとか、そういことをいうんじゃない!」と、ツンデレを仕掛けてくる。すげぇなこのシチュエーション。

いわゆる乙女ゲー的なスタイルの作品で、イケメンが主人公の女の子の耳元で甘い言葉を囁いて女の子が「どひゃああああ!?」となっているシーンは何度か見てきましたが、実際に自分がやられる立場になるとヤバいな。とても勉強になりました。おまけに刀ステの山姥切国広は、事前にプレッシャーに負けそうな弱った姿をみせているというギャップがあったので終盤での奇襲は心臓に悪かったです。


イケメン受肉した刀たちの光と陰

ここまではキャラクターの性格や感情についての話でしたが、刀ステの物語の出来も非常に良かったと思っています。作中で是とされることと、非とされることが一貫していてまったくブレないんですよね。

西暦2205年。
歴史の改変を目論む「歴史修正主義者」によって過去への攻撃が始まった。
時の政府は、それを阻止するため「審神者(さにわ)」なる者を各時代へと送り出す。
審神者なる者とは、眠っている物の想い、心を目覚めさせ、自ら戦う力を与え、振るわせる、技を持つ者。
その技によって生み出された付喪神「刀剣男士」と共に歴史を守るため、審神者なる者は過去に飛ぶ――。

ゲーム本編でも印象的だった口上は、この刀ステでも幾度となく繰り返され、刀剣男子というのは「正しい歴史の守護者」であると同時に「人の心と身体を得た人外」であると強調してきます。

「せっかく人のかたちになれたんだから、いっぱいご飯食べたり、いままでできなかったことをしよう!」と、おおよそのところではポジティブな要素で描かれる刀剣男子の“顕現”なのですが、なにごとにも別の見方が、側面があると描かれるのがこの刀ステです。

初っ端の虚伝 燃ゆる本能寺からアクセル全開です。不動行光が「せっかく自分の意志で戦えるかたちを得て、タイムスリップもできるようになったので本能寺の変を阻止して織田信長を生きのびさせよう!」と任務放棄。ついには、バカな真似をやめろ!と止めにきた味方を刺してしまうところまで行ってしまいます。

この不動行光の行動は完全に否定的なものとして描かれています。つづく義伝 暁の独眼竜では史実キャラである伊達政宗が「時間遡行軍を利用して関ヶ原の戦いへ介入。家康も光成もぜんぶブチのめしてオレが天下をとる!」という暴挙にでますが、刀剣男子の活躍によって阻止されました。

人間だろうが、刀剣男子だろうが「すでに済んだ物語を書き換えたり、無かったことにしてはいけない」ということが2作を通じ描かれるわけです。それもそのはず、刀剣男子とは歴史の守護者なのだから……。

山姥切国広が写しであること。へし切り長谷部が主の家臣でもない武将に下賜されたこと。不動行光が主を守れなかったこと。小夜左文字が復讐に使われた刀であること。そのどれも否定することはできない。けれども、今の彼らには人の身体があり、心がある。己の過去に向き合い、誰も知らない未来へ向かっていける。新たな物語を紡いでいける。そんな前向きなメッセージを受け取り、苦難に立ち向かう刀剣男子の姿には感じ入るものがありました。

まぁ、終盤は逆にその紡がれた新たな物語によってしんどくなるのですが。


葛藤とは無縁なラーメン屋

死闘に次ぐ死闘で満身創痍になりながらも、なんとか勝利を勝ち取った刀剣男子たち。だがその代償はあまりにも大きかった……。

みたいなナレーションが入ってもおかしくない超シリアスやってたのに。いきなりあのラーメン光忠ですよ。余韻ゼロ。これが俺の推しか???
いやでも、みっちゃんは元からそういうところあるよな……。花丸の印象とかもはやオープニングでトマト切ってる人だし。

なんだかこれまで刀ステの湿っぽい部分を語ってしまったけれど、腹をかかえてゲラゲラ笑えるシーンもめちゃくちゃ多かったですよね。スタッフは舞台1本につきコントをふたつみっつ挟まないと死んじゃう病気を患っているし、慈伝 日日の葉よ散るらむという福利厚生回もあった。

思えば、初っ端の虚伝 燃ゆる本能寺からアクセル全開でしたね。おはぎの宴……。あのアドリブ合戦・軍議コントだけを収録した円盤などが発売されているときいて、刀ステの底知れなさを思い知りました。

だいたいこのコントを仕掛けてくるのは三日月宗近を筆頭に、あんまり思い詰めていない鶴丸国永や博多藤四郎といったパリピでしたね。あんまり悩んでいないので、メインキャラの山姥切国広たちに比べると出番が少なめなのですが、要所要所で仲間に対するリスペクトや任務へのプロ意識を見せてくれたりするので侮れない。

シリアスをやっているときと、ギャグに全力な時の温度差がひどくて風邪をひきそうになるんですが、そのどちらも面白いというか、その両方があってこその刀ステ!みたいになっているのがスゴイですよね。

ゲームのファンからしたら面白いストーリーはもちろんですが、好きなキャラの色んな表情やモーションを見たいものです。キャラとキャラの、なんかわちゃわちゃした掛け合いを延々とみていたい……という欲求に応えてくれる。ゲーム中のアイテムやシステムに関連したワードも台詞の節々に散りばめられていてファンサービスが非常に旺盛。今もまさに現行コンテンツとして新たな企画が続いてるというのにも納得。どれも熱量と出来栄えの舞台でした。


そんなこんなで、無料配信+維伝アーカイブのレンタル視聴をした怒涛の一週間。楽しかったし、面白い大型コンテンツを発見できたことも嬉しかった。次の舞台はぜひともリアルタイムでの鑑賞をしてみたいですね。きけば、こんどの最新作は昨今の感染症流行の影響をうけ、当初の計画とは違う形態での公開となるようで。果たしてチケットご用意されるかはわかりませんが、なにかしらの形で公式にお金を入れていきたいと思います。

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