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小説 オーズ Parallel Ankh 9

復活のコアメダルの続きを(勝手に)描いた2次創作です。あくまで続編であることをご理解下さい

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後藤くんが戻って来た後、私達はしばらく話をしていた。何でも後藤くんは人造コアメダルがエネルギーを暴走させた末、別世界に飛ばされたのだという

何とも信じ難い話だったが、後藤くんは嘘をつける人間ではない。私は後藤くんの話を信じる事にした

不安があるとすれば、王との戦いで再び別世界に飛ばされないかだが、後藤くん曰くエネルギーは十分に充填されているため大丈夫らしい

「後藤くん、先程里中くん達と話していたのだが、泉刑事や火野くん達もレジスタンスに誘う事にしたよ」

「信吾さんには俺から話しておきます。比奈ちゃんには多分信吾さんから伝わるんで」

「素晴らしい!火野くんには私が声を掛けておくよ」

話が終わると後藤くんは家族の元へと帰って行った

私が王の部屋に戻ると驚くべきことに、エネルギー転移装置に装填されていたタココアが粉々に砕け散り、タカ・トラ・バッタコアの錬成が終わっていた

恐らく人造コアメダルのエネルギーが暴走した影響により、この3枚が共鳴し実験が予定よりも早く終了したのだろう

しかしこれで火野くんもタトバコンボに変身できる。あのメダルを使うにしても、久々に戦闘する体の感覚を思い出して貰わないといけないからね

私は早速火野くんに電話を掛けた

「火野くん、約3ヶ月ぶりと言った所だね」

「鴻上さん、その節はどうも。…もしかしてアンクの事、何か分かったんですか?」

「そうといえばそうだが、今日本は非常にまずい状況でね。800年前の王とグリードが蘇ったのだよ!」

火野くんは電話口の向こうで暫く黙り込んだ後に冷静な声色で一言呟き、電話を切った

「今すぐ帰国します」


その2日後、火野くんは財団に現れた

「鴻上さん、どうしてここまでの被害になってるのに声掛けてくれなかったんですか!」

「君には今オーズの力はないだろう」

「ほら、この間言ってた俺の欲望から作ったコアメダル!あれはもしグリード達が復活した時に、俺が使うためにって…」

焦る火野くんに私はタカ・トラ・バッタコアを見せながら言葉を続ける

「いや、今はこれで戦ってくれたまえ。あのコアメダルには危険が潜んでいる可能性があるからね」

「危険…?まぁ分かりました。今比奈ちゃん達がカザリと接触しそうなんですよね?取り敢えず行って…」

「待ちたまえ!…アンクくんの事だが、安易な復活は諦めた方が良いかもしれない」

背中を向けて部屋を出ようとしていた火野くんの脚が止まる

「どういう事ですか?」

「君の願いを叶えるには、相応の覚悟と代償が必要だという事だよ。その意味については自分でじっくり考えたまえ」

火野くんは一瞬悩んだ素振りを見せるも頷き、無言で部屋を後にした

「火野くん、君の願いはきっと叶う。君自身の欲望を忘れない限り」



比奈ちゃんや知世子さんの元へ向かってる途中、俺は旅の途中で出逢った色んな人達を思い出していた

それだけじゃない。10年前の戦いの日々で関わった全ての人達の事も。勿論お前の事もだよ、アンク

鴻上さんの言ってた事はどういう事なんだろう…アンクを元に戻すのに必要な覚悟と代償…あいつの欲していたもの…

『お前の欲しい物ってなんだ!人間か!』
『もっと単純だ…世界を確かに味わえる物…命だ!』

アンクが命を手に入れるための代償…それってやっぱり、俺の…

そんな事を考えながら走っていると、少女が一人で泣いているのを見かけた。俺は放ってはおけなかった

「キミ、1人?お父さんかお母さんは?」

少女は泣きながら首を横に振る。恐らく戦いに巻き込まれてしまったのだろう

「もう大丈夫だよ、俺がついてるからね」

少女が潤んだ目で俺の目の奥を覗いた

「でも俺今から行く所があるんだ。戻ってくるまで隠れててくれないかな?怖いかもしれないけど、絶対離れちゃダメだよ?大丈夫、すぐに戻ってくるからね」

俺は少女の手を掴み、物陰へと移動した

「キミの事は俺が絶対守ってみせる。だから少しだけ待っててね」

少女の頭を撫で俺は比奈ちゃん達の方へ急いだ


(復活のコアメダル序章前半)


諸々の報告を知世子さんに任せた俺は、比奈ちゃんと一緒に少女の元へと向かった

随分と怖かったのだろう。少女は1人その場に座り込み蹲っていた

「お待たせ、怖かったよね。でも、もう大丈夫だよ」

俺は少女を抱きしめ、少女の背を撫でた

「映司くん、この子は…?」

「比奈ちゃん達の所へ向かう途中、1人で泣いてたんだ。放っておけなくてさ」

比奈ちゃんが納得した様子で頷き、少女の頭を撫でる

「じゃあ皆でレジスタンスに戻りましょうか」

少女は泣き止み、微かな笑みを浮かべて頷いた

レジスタンスには後藤さんや伊達さんといった、かつて一緒に戦った仲間が居るらしい。みんな、元気だといいな

すぐにでも顔を合わせたい所だったが、俺は少女と暗くなるまでたくさん話をして、たくさん遊んだ


(復活のコアメダル序章後半)


それから約2ヶ月、俺は後藤さんや伊達さんと一緒に戦った。戦いの中でグリードから何枚かコアメダルを奪う事もできた

だけど、王がグリードに力を与えたのだろう。グリードが完全体の姿から変わる事は無かった

「火野が来て損害がぐっと減ったな、後藤ちゃん」

「はい、コアメダルも着々と集まって来てますし、このまま行けば王を倒すのも夢じゃない」

「このまま力を合わせて頑張りましょう!俺は今日向こうの基地に行くので、また夜には戻ります」

俺が向かう先はあの少女の元だった。現在レジスタンスは本部ともう一つ、別の場所に基地を構えている

そしてこれがレジスタンスの皆と交わす最後の言葉になる


少女と合流するため、もう一つの基地に向かっている途中、大きな爆音が響く。基地の方からだった

最悪の事態を想定し俺は急いで基地へ向かった。あの子も、他の皆も危ない

俺が到着した時には既に基地は崩壊し、中には物陰が1つだけあった

「遅かったな…ここの人間は全員、私が始末させて貰ったよ」

「古代オーズ…お前だけは絶対に許さない…変身!」

タトバコンボに変身した俺は王へと戦いを挑んだ。戦いは暫く均衡状態が続いたが、じわじわと俺にダメージが蓄積していく

「後藤さんと伊達さんに、知らせなきゃなのに…」

「待ってても奴等は来ない。グリードと一緒に貴様らの戦力も分散する…これが今回の我らの目的だ」

となると、向こうの皆も危ない…早く倒すなり巻くなりしないと…意識が皆へと移った隙に渾身の一撃を喰らった俺は変身解除に追い込まれた

「まだ立ち上がるか…ん…?」

そこにはあの少女の姿があった。生きていたんだ。俺が来ないからきっと外へ出て…でも、良かった…

古代オーズが攻撃を構えた。まずい…!このままだとまた、繋いだ手が…俺は無意識のうちに少女の元に走っていた

「やめろー!!!」

間一髪少女への攻撃を防げたものの、その代償として俺の背中に古代オーズの攻撃が直撃した

「うわあぁぁぁ!!…っ、はぁ…大丈夫だよ」

少女の恐怖心を取っ払うため俺は笑顔で少女を抱きしめる

「…消えろ」


火野くんが危ない!カンドロイドで王との接触を監視していた私は自分の作ったコアメダルを持って外へと飛び出した。頼む、間に合ってくれたまえ…

私が現場に着いた時には既に古代オーズの姿はなかった。そこには血塗れで倒れた火野くんの姿があった


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