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小説 オーズ Parallel Ankh 17

復活のコアメダルの続きを(勝手に)描いた2次創作です。あくまで続編であることをご理解下さい

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鴻上の言葉に湊は首を傾げていた。そうか、こいつは時間を超えた事で映司を知ったんだ。元の運命を知らないのは当然だ

鴻上の言葉には正直納得半分、呆れ半分といった所だった。映司の根っこの部分が変わっていないのは、青い奴に無闇に突っ込んだ時点で分かっていた

「運命って、どういうこと?」
「…映司が2021年に死ぬ運命だ」

俺の言葉に湊は酷く動揺した。自分の明日を守ると誓ってくれた男と、未来に戻っても会えないという現実を受け入れられないのだろう

「そんな、嘘付くなよ。オーズが死ぬわけない!」

「俺は映司の運命を変えるために時間を、世界を超えてきた。俺達がどんだけ頑張っても、映司の明日は変えられなかったってわけだ」

やはり2021年で直接根本を止めるしか無さそうだ。もう後藤から貰ったコアメダルを使う以外に、残された時間移動の手段はない

「アンクくん、世界を超えたとはどういう事かね?」

「俺は、この世界とは別の世界からやって来た。別の世界でお前が作った、このドライバーを使ってな」

そう言って俺は鴻上の目の前でバースドライバーXを見せた。鴻上の瞳孔がみるみる大きくなる

「そんな、これを別世界の私が!?…素晴らしい!実に素晴らしいよ!!もっと詳しく話を聞かせてくれたまえ!」

「向こうで映司を殺したお前に、話す事はない」

俺はドライバーをしまい、足を進めたが、湊がそれを止めた

「ちょっと待って…って事はアンクがこっちに来た理由って…」

「私が、火野くんを殺めた…?まさか、アンクくん…君はもう一度火野くんに会うために、世界を超えてきたというのかね?」

「そういう事だ。映司が同じ運命を辿らない様にするためにな」

気付くと俺の目には涙が溜まっていた。やっぱりあの日の事を思い出すと、現実から目を背けたくなる

「アンクくん…向こうの私が何をして火野くんを殺めたかは知らないが、本当にすまない…この通りだ、許してくれたまえ……」

再び振り返るとそこには湊の横で土下座をする鴻上の姿があった。あんなにプライドの高い奴が土下座か…向こうの鴻上よりスカっとさせてくれやがる

「お前が土下座しようが映司は戻ってこない。俺は今から2021年に飛んで直接映司を救ってくる」

「俺も一緒に連れてってくれ!」

湊が叫ぶと、鴻上が頭を上げた

「私も何か力になりたい…どんなコアメダルでも用意してみせる…だから、頼む……」

「お前の作ったコアメダルが、何度映司を危険に晒したと思ってんだ!こいつだってそうだ!お前がこいつを復元して、800年前の王を復活させたから!!」

俺の怒りの叫びに鴻上は硬直し、驚愕していた

「私が…ご先祖様を…?その、コアメダルで…?っ、という事はそれは…まさか」

「あぁ、あっちのお前の言葉を借りるなら、始まりの3枚ってやつだ」

話に上手く溶け込めない湊が俺に疑問をぶつける

「始まりの3枚って…?」

「古代オーズ、つまり私のご先祖様が初めての変身に使った、10枚目のコアメダルだよ…」

湊はあまりの情報量に頭が追いついていないようだった。そんな中でコアメダルの変化に気付いたのか、次は鴻上が俺に疑問をぶつけた

「だが、なぜその3枚は黒色なのかね?それじゃまるでノブナガの…」

「お前が言ったんだろ、時間を戻るとコアメダルに何か影響があってもおかしくないってな。あと、ノブナガって誰だ」

鴻上が俺を見て話を続ける

「なるほど…元のアンクくんの世界では起こり得なかった歴史ということだね…かつて私が生み出したホムンクルス、それがノブナガだ」

つまりこいつは人造コアメダルの前に人造人間を作っていた、という事か。お前が欲望のままに何でも作るせいで、どれだけの被害があったか計り知れねぇ

「ノブナガは黒色のサソリ・カニ・エビのコアメダルを使って、グリードに近しい存在に生まれ変わった。しかし彼は火野くんの手によって鎮められた」

「このコアメダルのことか、色は違うけどな」

鴻上は再び驚愕していた

「そんな、なぜ君が…それは私がどれだけの時間を掛けても作れなかったコアメダル!」

そういえば後藤がバースドライバーXの実験中に飛ばされた時、こいつが黒くなったとか言ってたが、こいつの言ってるのはそれの事なのか…?

「アンクくん、頼む…一生の頼みだ…私の実験に四六時中張り付いてでもいい…そのコアメダルと始まりの3枚、私に研究させてくれ…!」

「馬鹿か…無理に決まってんだろ、お前がどんな危険な事をするかも分からん」

しかし鴻上は諦めきれないのか再び頭を下げ叫んだ。今の鴻上がどんだけの歳かは知らんが、この歳のジジイにしては多分最大の声量だろう

「必ず過去の火野くんを救う手掛かりを見つけると誓う!私が道を踏み外した時は殺してくれてもいい!」

鴻上は更に言葉を続けた

「向こうの私がやった報いは私が受ける!湊くんも私を見張っててくれて構わない、だから…アンクくん、頼む…!」

俺だけじゃなく湊も困惑していた。こいつがプライドを捨ててまでここまで頭を下げるとはな。だが俺の考えは変わらなかった

「駄目だ、俺はtakeは好きだが、giveは嫌いだ。それに、仮にお前が作ったコアメダルを映司が使えたとしても、今回ばかりははい駄目でしたじゃ済まされん」

「アンク、俺からもお願い…オーズのためにも、研究させてあげてくれないかな…オーズの事は何があっても俺が守るから…だから…」

ついさっき仮面ライダーになった奴がよくそんな台詞を言えたもんだな…が、湊が映司の意思を継いだのも事実。腹立つが、仕方ねぇか

「おい、鴻上。俺はずっとお前と一緒に居ると殺意が湧くんでな。1週間以内に終わらなかったら、俺はお前を消す」

「アンクくん、それじゃあ…!」

鴻上は立ち上がり深々と頭を下げた。その隣で湊も嬉しそうに喜んでいる

「ありがとう、俺も見張り手伝うから…だから、絶対にオーズを救おう!」

「当たり前だ」


そうして俺と湊と鴻上の2051年での生活が幕を開けた。約束通り俺と湊は交互に鴻上を見張り、その中で鴻上は実験を続けた

この1週間で湊と決めた事が2つある。1つは鴻上の見張りを緩めないために、2人は別々で時間を超えるということ

そしてもう1つ、湊は2021年ではなく、再び2011年を目指して映司の手助けをするということだった

鴻上は人造コアメダルは一度世界移動にエネルギーを使うと、それ以降は時間移動しか出来ないだろうという予測を立てていた

さらに時間移動の場合、充填したエネルギーは数回耐えられる可能性があるとの事だった

そして鴻上は約束通り1週間以内で、映司を救う手掛かりになるであろうコアメダルを、始まりの3枚をベースに作り上げた

「マスターガラ、これで私は貴方をも超えただろう。貴方の作った始まりの3枚改め、スーパータトバのコアメダルを持ってすればね」

「何がスーパーなのか良く分からんが、こいつを早速映司に届けてもらうぞ、湊」

湊は頷き、鴻上からサソリ・カニ・エビとスーパータトバのコアメダルを預かった。バースドライバーXを腰に身に付け、3枚のコアメダルを装填する

「アンク、オーズの事は任せて!行ってくる…!」

湊がダイヤルを回すと、鴻上の予想通り奴の目の前に何度も見て来た虚無が現れた。そして湊は腰に巻くドライバーをアクアドライバーに変えて虚無へと消えた

「幸運を祈る、湊くん、火野くん…!」

そしてこの出来事がきっかけで、俺や映司の運命の歯車が大きく動き出す事となった


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