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小説 オーズ Parallel Ankh 12

復活のコアメダルの続きを(勝手に)描いた2次創作です。あくまで続編であることをご理解下さい

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映司の火葬から数日後、街の復興が始まっている中で俺は信吾に呼び出された

「アンク悪いな、呼び出して。少し話がしたくてさ」
「構わん、要件はなんだ」

俺の隣に座り込む信吾はしばらくの沈黙の後に口を開いた

「ここ最近調子はどうだ?しっかり規則正しい生活送れてるか?」

「っは、どの口が言ってんだか。いっつも寝坊してるお前よりは随分とマシだがな」

「おいおい、それは言わない約束だろ?…まぁでも、少しは元気になったみたいで良かったよ」

あの日以降俺は信吾と比奈の奴の提案通り、一緒の部屋で暮らしている。2人が仕事の時は1人で過ごす、それも悪くない時間だった。アイス食い放題だしな

「それはそうとさ、アンク。鴻上さんの言ってた事だけど…後藤くんも嘘はついてないみたいだし、やっぱり一回行ってみたらどうかな、別の世界」

「あのなぁ、言ったろ。そっちの映司に会っても意味ねぇんだよ。そもそも少しずつ癒えてきてる心の傷を抉ろうとすんな、このバカが」

あたかも人間かの様に心という表現を使ったが、実際俺はグリードだ。だが心があるかは別として俺には感情、そして命がある

「そうなんだけどさ、映司くんの事だから、別の世界でもきっと無茶して色んな人を助けようとしてると思うんだよ」

確かに映司は自己犠牲が酷すぎる。自分の事は二の次で、必ず目の前の手が届く奴を何があっても守ろうとする。あのガキもその1人だったからな

「別世界の映司くんがこっちの映司くんと同じ運命を辿るのはアンクも嫌だろ?だからそうなる前にアンクなら止められるんじゃないかなって」

「…だが後藤が行った世界は映司じゃなく比奈の奴がオーズになった世界だと言ってた。だから必ずしも映司がこの運命を辿るとも限らねぇ」

つまり映司がオーズになり、俺が映司と一緒に戦っていた別の世界。そんな世界にピンポイントで行く必要があると言うわけだ

「まぁ、そう簡単に別世界に行けるとも限らないし、あくまで理想だけどね。俺の話したかった事はこれだけ。じゃあ仕事に戻るよ、また夜な」

「…腹も減ったし、食いモンでも食いに行くか」

人目につかない所で信吾の擬態を解いた俺は翼を羽ばたかせクスクシエに向かった…とは言っても今は小さな公園での出張営業だが

「あら、アンクちゃん。少しは元気になった?」
「お陰様でな。取り敢えずアイス1本寄越せ」

知世子の奴は籠一杯に詰まったアイスキャンディーを俺に渡した

「1本と言わずにたくさん食べていいのよ?そろそろ来ると思って色んな味用意しといたんだから」

俺が1本目のアイスを食べていると、知世子の奴がこっちを見ながら話しかけてきた

「アンクちゃん、これからはずっと比奈ちゃん達と暮らすのよね?うち今私だけで人手不足なの。映司くんみたいにバイト、経験してみない?楽しいわよっ」

「っは、下らねぇ。鶏肉出す店を手伝ってたまるか」

「んもう、楽しいのに〜…でもアンクちゃん、私は後藤くんの言ってた別世界の事、真剣に考えてみてもいいんじゃないかなぁって思うのよ」

お前も信吾と同じか、そんな事を思いながら1本目を食べ終え、2本目を頬張る

「信吾にも同じ事を言われたが、そんなに俺が映司に会いたい様に見えんのか?」

「私や信吾さんがどれだけアンクちゃんと一緒に居たと思ってるのよ。こういうのは眼でわかるのよ」

知世子の奴が俺の眼を覗き込む。視線を逸らし、2本目のアイスを黙々と食い続ける

「きっとすぐに戻って来れるんだから、一回試しに行ってみればいいじゃないの。大事なのはまず行動する事よ?」

「っ…あぁ、確かにそうかもな…今日の夜、信吾に話をしてみる、じゃあな」

そう言って俺はアイスを全部持って信吾達の家へと帰った。勿論アイスの金は知世子の奴持ちだがな


その日の夜、夕飯を食ってる時の事

「信吾、昼の件だが、明日俺を鴻上の所に連れてけ」
「アンクとお兄ちゃん何話してたの?」

比奈の奴が食い気味に尋ねる

「前に言ってた別世界の話だ。きっと別世界でも映司くんは無茶してるんじゃないかって。まぁ、うん、分かったよ。明日の朝ちゃんと起きろよ?」

「お前がだよ!」
「…それはお兄ちゃんでしょ!」

俺と比奈の奴が声を揃えて信吾に言う。その様子に信吾も比奈の奴も笑っている。何だ、この暖かい気持ちは…全く映司の奴、こんな感情まで教えやがって

そして次の日、案の定寝坊した信吾を叩き起こして俺達は予定通り鴻上の元へと向かった。到着すると既に後藤が鴻上と話していた

「会長、本当にもう隠してる事は何もないですよね?今黙ってても罪が重くなるだけです」

「後藤くん、私がないと言っているんだ。そろそろ信じて貰えないかね…おや、これは…アンクくん!」

鴻上は奴に全く似合わない白黒の服を着ていた

「っは、全くいい格好だなぁ?鴻上」

「ここに来たという事は、そういう事だね?アンクくん、君は必ず火野くんに会いたいと言うと思ったよ」

俺と信吾、そして後藤を目の前に鴻上は言葉を続けた

「世界の移動にはアンクくんのエタニティメダル、そして後藤くん、君のバースドライバーXが必要だ」

「俺のドライバーも必要なのか…まぁでも、今後はもう使わないだろうし、アンクになら預けてもいい」

後藤は常に携帯していたのかドライバーを俺に渡した

「後藤くんの話通りなら向こうの世界でエネルギーが充填されない限りこっちの世界に戻る事は出来ない、それで合っているね?後藤くん」

「ああ、それで間違いない。だがアンク、承知の上だろうがこれは賭けだ。そもそも火野がオーズでないと、エタニティメダルにエネルギーは充填されない」

確かにこの3枚は俺と映司の欲望の塊。このメダルに充填するエネルギーは同等のものでないといけない

「その時はその時だ。俺は俺なりにそっちの世界で生きていく」

「素晴らしい!その実験には是非私も立ち合わ…」

鴻上の発言を遮る様に後藤と信吾は声を揃えて言った

「「駄目です」」

鴻上がまたがっかりしている。此奴のこの顔は何でこんなに満たされるんだろうな、本当に

「アンク、実験はいつ頃始める?」
「そんなの今日の夜でいい」

「じゃあ仕事が終わったら集まる様に比奈達にも声を掛けておくよ。折角なら皆で見送りたいしね」

そうして俺は今夜、別世界へ旅立つ事になった
(上手く行けばの話だがな)。


信吾達の仕事もそろそろ終わる頃、俺は早くも待ち合わせ場所の映司の墓の前に着いた。そこには既に比奈の奴の姿があった

「アンク…お兄ちゃんから聞いたよ、行っちゃうんだね…」

「あぁ、別世界の映司がこっちの映司と同じ運命を辿る可能性があるなら、俺はそれを止めたい」

「そっか、それがアンクのやりたい事なんだね…」

比奈の奴が俯きがちで言葉を紡ぐと、奴の目から涙が伝った

「やっとアンクも戻ってきたのに、2人とも居なくなっちゃうなんて…私も一緒に行っちゃ駄目かな…?折角会えたのに…私、アンクと離れたくないよ…」

こんな弱々しく泣いている比奈の奴は初めて見た。数日前の俺なら見ている事しか出来なかっただろう

だが映司を看取った日、お前から貰った温もりを今度は俺が返す番だ。俺は自分に似付かず比奈の奴を抱きしめた

「お前は連れてけねぇ、けど心配すんな」

そう告げしばらくの間嗚咽する比奈の奴の背中を撫で続けた。これでいいんだよな、信吾、映司


そして時刻は20時。もうすぐ実験が始まる


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