私のベッドに寝に来て欲しい。
私は椎間板すべり症である。
腰の痛みで目が覚めることもしばしば。
なので、腰が落ち込まないハードタイプのベッドに買い換えた。
家具屋のベッドコーナーで試し寝して選んだ。
横になった途端「寝ないで!」と突き飛ばされて拒絶されたような硬いベッドもあった。
私はそのベッドよりワンランク柔らかい物を選んだ。
配送されたハードタイプのベッドは畳で直寝しているような寝心地だった。
横になると全身痛い。
こんなのだったっけ?
スプリングがもう少しだけでも柔らかくなって欲しい。
スプリングがヘタるのは数年かかりそうだが、
ヘタるといい感じの柔らかさになるはず。
この『スプリング、ヘタって欲しい願望』が日に日に大きくなって行く。
「関取に一週間寝に来て欲しい」
かなりヘタるはずだ。
実はこの『関取案』根拠もあり、無謀でもないのだ。
歩いて十数分の町工場が、とある相撲部屋のタニマチをやっていて、
大阪場所になると、敷地中に◯◯部屋とノボリが立つ。
そしてその町工場の隣りは知り合いのトリミングサロンだ。
トリミングサロンの店長の懐柔術はすごい。
町工場との間に入ってくれるだろう。
無茶なことを面白がる性格である。
「お相撲さんに寝に行ってやってもらえませんか」
それが実現したとしよう。
幕下力士が下っ端の付き人を連れて来る事になるだろう。
まずは力士をリビングに案内する。
しかしリビングのソファに座らないで欲しい。
ちょうどいい硬さのソファなのだ。
ソファはヘタってはダメだ。
座らないでくださいと書いた紙を貼ろう。
しかし、さすがに失礼だから、ソファはサンルームに放り出しておこう。
ソファの代わりの座布団がない。
敷布団を買いに行って座布団代わりにしよう。
座卓もない。
犬のケージに布を被せて代わりとしよう。
そして茶菓子だ。
私が単位1とすると、力士は単位100くらいだろう。
まんじゅうを私は2個、単位2、食べるとすると、
力士は単位200。
200個は食べるだろう。
付き人も含めて茶菓子は400個。
洋菓子の場合は10号ホールケーキを選択。
直径30cmの10号ホールケーキを、予測では20個は食すだろう。
付き人含めて40個。
緑茶や紅茶は50〜100杯は飲むのではないか。
恐らく、湯呑み茶碗がおちょこのように見えるだろう。
茶類は付き人を含めて200杯。
食事すると言われたら、ちゃんこする大鍋がない。
食堂を廃業した知人に借りよう。
米は何升何で炊けばいいか。
風呂に入るとなると、
うちは極小風呂で、力士は身体が入らないだろう。
車庫でビニールシートを敷いて行水するしかない。
近所中が見物に来るから、隠すものが必要だ。
行水のあとのバスタオル、
タオルケットでまかなうしかない。
すべての単位が大きい。
大型生命体に対応した経験がない。
相撲部屋では便座も割れると聞く。
便座の予備も用意。
ひとまず、トリミングサロンの店長に打診。
ヘタりに向かって前進あるのみ。