マガジンのカバー画像

「川柳句会こんとん」第一期

15
運営しているクリエイター

記事一覧

「月報こんとん」12月号

作品松尾優汰「こんとんの眠りに」

メリークリスマス不用品回収車

それでも内臓がある私の十二月

また噓をついて内臓がこぼれだす

人身事故以後にぎやかな電車内

To be continued. の文字がならぶ枕もと

子供はやがて邪悪に未成年は成年に

ぜんぶ失敗して内臓だけがある

みんな私の脂身を食べようとしない

そして骨も残らずで笑える 笑うな

でも川柳は微笑んでるだけ

二三川練

もっとみる

「月報こんとん」11月号

作品松尾優汰「繁栄の昭和」

犠飛をはなってもたどりつけない真夏

幸せなら棘皮動物を裏がえそう

こずえ液化する幼児のかたちへと

硝子の自殺者くだけちる断崖

輪廻のやがてぶさいくな猫になる

共産主義という亡霊をつれまわす

檸檬からしぼりだす廿世紀

祖母はいまも時計のなかでうずくまる

繁栄の昭和は蜘蛛で子を散らす

小鳥をうみつづける小鳥のうるんだ眼

二三川練「おれのもの」

一点を

もっとみる

「月報こんとん」10月号

作品松尾優汰「それぞれの魚」

三鷹市の鷹に喰わせる妻の遺体

葬送のなか打楽器をわたされる

祭囃子にかき消される断末魔

沈黙は金貨うめつくされる駅

貝に耳あてても罵詈にみちている

鏡よ鏡わたしは私の詩の神さま

スノードームでこごえる私の影

兄は執拗に何度でも焼けおちる

敗北に似ている栗も音楽も

仲間にいれてくださいと蔓つよくにぎる

二三川練「おまえのはなし」

通天閣ぜんぶおま

もっとみる

「月報こんとん」9月号

作品松尾優汰「魚の名前」

帰らなくちゃ帰らなくちゃと這う靴下

失望されながら寝巻になりながら

暴動のさなか貴女の髪がきれい

副作用ばかりあらわれる夢のなか

かわかしてから来歴をふみ潰す

あたたかい拍手を浴びて干からびる

悪人なので僕も銅像も影がながい

罪の数だけ落花生をいただきます

やぶれた背中からこぼれだす銀貨

いくつもの駄作にいくつもの背骨

二三川練「仮面」

月天心次の

もっとみる

「月報こんとん」8月号

作品松尾優汰「笑う逃亡者」

良心の呵責から降るロリポップ

きみの悪意に八月が千個ある

ではないひとの悲鳴のさなかSuicaをかざす

警ら隊につづいて笛を吹いている

ぼくのせいですが袋からあふれそうだ

「あやまちばかりでした」と蓄音機がとまる

嬉しいぼくも楽しいぼくも大嫌い

視界から消えないwww.bandicam.com

わたしの傷口からあふれだす写真

ぼくの感嘆符はだれにもわ

もっとみる

「月報こんとん」7月号

作品松尾優汰「対決」

加害者の名簿にぼくも載っている

きみに剣おれに攪拌棒 勝負

万年筆の先から紳士たれている

白龍だと思ってました眉毛でした

初恋のあいまは単語帳をよめ

火事だ アイスキャンデー売りが駆けつける

悪口のなかににぎやかな喫茶店

抱きしめられた人から蝶になって飛ぶ

どうしても埋まらない太宰治の手

松明をわってふたりでゆく凍土

二三川練「歴史」

先鋒は壁から生え

もっとみる

「月報こんとん」6月号

作品松尾優汰「檻のなか」

わるい子もいい子も今日は檻のなか

みんなさみしい近鉄ファンだよ

キング・オブ・ルーキー夢がかなう砂漠

鈴を鳴らせばあなたに逢える

空席に優汰ばっかりやってくる

なみだの瓶にうきわを浮かべて

きみは五月だから大丈夫ですよ

なぜならばきみは彁だから

蝶でない理由をひとつずつ燃やし

ボーイフレンドは燃ゆる燈取蛾

二三川練「愛玩」

血判の指はあたしで血はあ

もっとみる

「月報こんとん」春文フリ特別号

作品ゲスト  細村星一郎「スウィート・オーシャン」

門をくぐって以来全部が寿司

海亀が嘘の高度で嗚咽する

やさしさの艦隊が来る赤い岸

32ビットで迫る死んだ魚群

不規則に溜池斬ってしまえば

モノクロの花が咲き乱れる臭気

鉛製のラクダが青い雲に届く

二光年先の小さなソーセージ

衛星が日本舞踊に現れる

ピンクな海に落雁の降る島だらけ

松尾優汰「高校生川柳――17歳・現役高校生が綴

もっとみる

「月報こんとん」4月号

作品松尾優汰「キャリー・ザット・ウェイト」

大人たちは〠の帽子をかぶっていた

不登校生徒やセレクション柳論

今日で二月も終り 卒の字を可愛くして帰る

敵意むきだしでうれしい花いちもんめ

たすけてと叫べば飛んでくる優汰

  そうさ,重荷を背負ってくんだ
      重荷を背負ってくんだ ずっと

お祈りのかたちでポイにすくわれる

あれば まだ 捨てられるのに 恋に恋

BANG BAN

もっとみる

「月報こんとん」3月号

作品松尾優汰「小麦粉の加工」

Too Late To Die 能面が降りやまない

反撥も先輩風に吹かれ ひらく

しぼんでくおれをみている おれと 目があってしまう

お姉ちゃんが いれば 砂場に埋めて 隠す

遠い声 作中主体とすれちがう

玻璃の薔薇 かわいい かわいい魚屋さん

金色の血しぶき エルサゲート 裸婦像

生きてゐる小平次 ぜん ぜん ぜんまい まわるかぎり

無機仏 あらわ

もっとみる

「月報こんとん」2月号

作品松尾優汰「セカンド・アルバム」

モータウン・ビートではじまった倫理

どうもどうも、銀のエンゼルを渡す

おんなのこに恋するおんなのこ 赤 酸性

大喜利が苦手 噓が、嘘になる

はせをにわびて座席をたおす

取り皿へ分けずに恥部を手で隠す

あまずっぱい青春 奴隷は動産です

どういたしましてと電熱機が熱い

生きるのは苦しいね 舌で、さくらんぼを結ぶ

セカンド・アルバムを生きなおす子

もっとみる

「月報こんとん」1月号

作品松尾優汰「蒙霧升降」

霧の中にいるみたいだ。霧が見えないだけでね。自分以外の人がどんな風に眺めたかはわかるよ。
――ウンベルト・エーコ『女王ロアーナ、神秘の炎』

裏声で校歌斉唱 持久走の拍手

とかいって著者近影ではかっこつけちゃって

けけけと笑ったあなたも笑った

ざァんねんここからも学級会でしたァ

グループをつくれなかった季語が来る

O型だから輸血できるよ

肋骨を調弦

もっとみる

第1回「川柳句会こんとん」大賞発表など

大賞発表投句者番号7  松尾優汰さん
投句者番号17 二三川練さん

全23名の方にご投句いただいたなかから、川柳句会こんとんにて一年間川柳を共に発表するのは上記のお二人に決定しました。
ありがとうございました。
「月報こんとん」1月号の発行は1月末を予定しています。お楽しみに。

また、「第1回川柳句会こんとんから10句」に入選した句の作者の方々は以下の通りです。

葉るまげどんの葉ての葉ざくら

もっとみる

第1回「川柳句会こんとん」結果速報

2021年10月1日から11月30日までに投句を募った第1回「川柳句会こんとん」では、23名もの方に川柳10句を作って送っていただきました。
本当にありがとうございました。

【詠草一覧】
https://docs.google.com/spreadsheets/d/1iTNGk1XwA5-KRSZx60iEEToRZ7NwjUCr5dE-UlY7zko/edit#gid=0

さっそく句評に入り

もっとみる