地域名を冠した駅名を探す

前回のエントリ(陸奥国と出羽国)では、駅名が重なりそうな時は旧国名をつける、というルールがあったという話をした。

そこで、旧国名を冠した駅名は何駅あるのか、あるいはどの旧国名が最も使われているのか調べてやろう、と思ったのだが、既に答えがWikipediaに載っていた。考えることは皆同じのようである。

旧国名
https://ja.wikipedia.org/wiki/旧国名#駅名

これを見ていくと、旧国名の仕様が多いのは伊勢、三河、武蔵、上総、信濃、羽前、陸前、越前、越後、紀伊、阿波、伊予、土佐となっている。若干ながら鉄道後進地域に偏っているように見受けられる。
いっぽうで、離島以外で使用が極端に少ない駅もある。但馬は但馬三江駅が駅名改称してゼロ、岩代は1駅、加賀、丹波、丹後、因幡、伯耆は2駅だけだ。なお、上野は「上州○○」という駅が5駅あるが、全てが上信電鉄の駅なので、JR線としてはゼロ駅となる。
北海道は全般的に少なめだが、アイヌ語を語源とする駅名が多いからあまり被ることがないのだろう。また、廃線による廃駅化により駅数が減っている事実もある。日高などはその例で、日高本線の大部分が廃止となった影響でゼロ駅となった。

(余談だが、上記Wikipediaでは、上州のように「その旧国名を表す漢字1文字+州」も旧国名として取り扱っている。この武州、遠州、野州などの「○州~~」は個人的にはかっこいいと思っている。)

しかし、である。日本の駅の中には、「旧国名でないがその地域を表す言葉」を冠する駅名がたくさんある。これについてはWikipediaに載っていないようなので、Wikipediaの「日本の鉄道駅一覧」から、抽出してみることにした。抽出結果TOP5を載せていこうと思う。

第1位 会津 24駅

第1位は納得の会津。もともと会津は、律令制度下では陸奥国会津郡、江戸時代では会津藩。ずっとこの地方は会津と呼ばれてきた。だから岩代なんて地名は知らない使わない、という気概を感じる。
ちなみに岩代国を冠する唯一の駅の岩代清水駅は福島交通にあるので、JR線では岩代を冠する駅名は1つもない。

第2位 伊那 12駅

第2位は信州伊那地方。ここは飯田線が通っているが、飯田線の特徴と言えば、私鉄を買収した路線であるため駅間距離が短い=駅数が多いこと。この影響もあり、12駅も存在している。この伊那も会津同様、信濃国の郡の名前であった。
また、長野県(信濃国)は、県の一体性を取りづらい県として知られており、わざわざ県内の様々な場所が登場する「信濃の国」という県の歌を作っているくらい。そういう県民性だから、「信濃○○」より「伊那○○」を使いたい、という気持ちが優先するのだろう。

第3位 津軽 11駅

津軽も納得のランクイン。津軽は第2位に入ると思っていたが、駅の密集性で伊那地方に負けた感がある。
弘前市を中心とした青森県西部を指すが、広義の津軽地方は青森市も含めるという。ここもかつては津軽郡があり、江戸時代は津軽藩(弘前藩)として津軽氏が支配していた。

第4位 多摩 8駅

ここでは「多磨」も含むこととした。東京都の島部と特別区以外を指す多摩も、由来は多摩郡という武蔵国にあった郡の名前である。郡の名前としては、西多摩郡のみ残っている。
なにぶん都内なので駅の数が多く、狭い範囲だがランクインした印象である。たまプラーザは、あそこは多摩郡ではない気もするのだが、多摩丘陵内にあることから無理矢理入れ込んだ。

第5位 岩手 7駅

旧国名ではなく、現在の都道府県名から岩手が謎のランクイン。といっても、「岩手」は古くから盛岡市を含む一帯の地名として存在していた。だから件名が由来というわけではない。
既に西暦1000年には、陸奥国の中に岩手郡が成立している。江戸時代には盛岡藩に属した。現在でも岩手郡は存在し、岩手町を含む3町で構成されている。

というわけでやはり、古代、江戸、明治時代のどこかで郡名であったものが多い。旧国名を使わない理由は様々だが、地元を表す地名として郡の名前は使われやすいようである。
その他、調査していて気になったものを挙げていくと、

愛知 1駅

現役都道府県名シリーズ、愛知は愛知御津の1駅。今の名古屋市を含む一帯が愛知郡だったが、愛知御津駅は旧三河国の豊川市。場所が全く違うため郡名が由来ではなく、愛知県の御津という意味での愛知御津駅なのであった。

群馬 5駅

現役都道府県名シリーズ、群馬は5駅。現在の前橋市や高崎市を含む群馬郡は平成18年まで存在していたが、群馬を使う理由は旧国名の「上野」を使えないから、という理由が大きいらしい。
すなわち、上野はどうしても「うえの」と読みがち。上野は高崎線列車の起点駅であるから、途中に「上野○○」駅があるとややこしい、という理由のようである。
上信電鉄のように「上州~~」としてもよさそうだけど、「○州~~」という駅名は旧国鉄ではほとんど使われていない実情がある。
また、この地域を上毛地方と読むこともあるが、「上毛」を冠する駅は上越新幹線の上毛高原駅だけとなっている。

木曽 4駅

隣の伊那に比べて意外と少なかった木曽。しかも4駅のうち2駅は木曽地方にはなく、木曽川由来の愛知県にある木曽川駅と木曽川堤駅だった。

ざっと見ていくとこんな感じである。もっと局所的な地名を探すと、代々木や水口があるが、にしても会津は圧倒的に多かった。磐越西線や只見線をのんびり旅してみたいものである。


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