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お気に入りの里山をみつけよう

こんにちは。身近な自然観察アドバイザーのmimosaです。
私が長年通っている里山は、いつ訪れても美しい場所です。なかでも、春から初夏へのこの時期は、生きものたちが活発に動きはじめる、わくわく楽しい季節です。

春の訪れを感じる風景にはいろいろありますが、満開のコバノミツバツツジもその一つです。濃いピンクの花と青空とのコントラストがとても素敵です。ため池の土手に生えるツクシやワラビ、散策路のあちこちには色々な種類のスミレの仲間が咲いています。裏山や周辺の若葉の淡い緑は、葉の成長とともに濃い緑になり、明るい日差しを浴びた葉は、風に吹かれるたびに、きらきらと輝いています。初夏を迎える頃には、田んぼの稲は青々と大きく育ち、その上を滑るように飛ぶツバメは気持ちよさそうです。近くの小川をのぞくとメダカやドジョウが泳いでいます。ため池には葉を広げた水草、草原にはチョウやハチが花の蜜を求めて飛び交います。湿原には、小さな可愛い花を咲かせる食虫植物や、トキソウやカキランが開花しはじめ、そろそろ見頃を迎えているかもしれません。もちろん、その上を飛ぶのは美しいトンボたちです。

里山に広がる、これらの山林や農地、小川、ため池、草原、湿原など、それぞれの自然環境のまとまりと、そこに関わり合って生息・生育している生きもののいる空間を、生態系といいます。多様な生態系が集まった里山という環境もまた一つの生態系で、人間もそのなかの一員です。里山の生態系は、生物多様性を維持するうえでも、とても貴重な環境です。

人為的な影響をほとんど受けていない原生的な自然は、そのまま保護するのが良い自然ですが、二次的な自然、つまり里山は、農耕がはじまった遙か昔から、人が管理し続けて維持されてきた自然です。そのため、里山の保全管理には人手が必要です。しかし、過疎化や高齢化などにより、手入れされなくなった里山環境は衰退し、本来そこに生息・生育していた多様な生きものは、姿を消していきつつあります。現在、里山環境を次世代へつなぐ取り組みが各地で実施されていますが、さまざまな生きものの多様性が失われるスピードに追いついているとは言えません。

コロナ禍で、子どもたちをはじめ、世代を問わず、自然とのふれあいへの欲求度は高まっています。また、リモートワークの普及で、田舎(里山)暮らしも注目されています。里山保全活動というと、「ひたすら作業をして、なんだか厳しそう」というイメージを持つ人も少なくないかもしれません。そんなハードルをぐっと下げて、里山での暮らしを楽しく、五感を使って遊びながら体験する場や、里山ならではの伝統的な食や工芸、丁寧な暮らしに触れられる古民家を活用したカフェなど、気軽に「ちょっと出かけてみよう」と思える場所の選択肢が、さらに増えることが望まれます。里山の魅力を肌で感じる体験が、里山の貴重な生態系や現状に気付くきっかけとなり、より良い方向への糸口になるのではないでしょうか。より多くの人が、お気に入りの里山をみつけて、継続的に関わっていくことで、美しい里山の風景を次世代へ繋げていきたいものです。

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