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ナッジ・選択の自由

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                    2020/10/09 第591号
        ☆★☆ TIPS通信 ☆★☆
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【 ナッジ・選択の自由 】

こんにちは。リタイヤアドバイザーのタムタムです。

なかなかコロナはおさまりそうにもありませんね。政府はコロナ対策と経済の循環と難しいかじ取りをせまられています。前回の「ナッジ」について、参考文献、個人的見解も含め少し考え方を補足したいと思います。

ナッジには良いムナッジと悪いナッジがあると述べました。そこで再度ナッジの定義を確認します。「ナッジ」とは「選択肢を制限することなしに他人の行動の修正を促す手法」です。ナッジはあくまで選択の自由を尊重しています。「いかなる選択肢も禁止することなく、人々の経済的インセンティブを大きく変更することなく、人々の行動を予測可能な仕方で変更するあらゆる側面の選択アーキテクチャ」として定義されています。

人は、物事を判断するとき、直感で判断する(システム1)こともあるし、よく考えて判断する(システム2)こともある。ナッジとは、すなわち、個人の行動に影響を与えようとするならば、理性的な説得など通じてシステム2に訴えるのではなく、システム1に直接、働きかけなければなりません。
人の判断要素は、熟慮の上での決定だけではなく、習慣的、惰性的な選択もまたその本質的な判断のための構成要素としているため、人はしばしば考えあぐねたあげくにその人らしからぬ、決断を下すこともあると考えられています。

 例えば、肥満は生活習慣病とも言われており、その個人の一回の選択をコントロールすれば良いという問題ではなく、その個人の選択そのものというよりは、その個人の選択が行われる環境を改善するための努力が必要になると考えられています。他の例として、禁煙も似たような問題があると考えられています。そのためには、規制手段による習慣形成が有効であることが知られています。しかし、その効果は長続きしないし、その個人の選択にまかせると効果は徐々に消滅してしまいます。「慣れの問題」などがあるが、敷居を下げる効果はありそうで、生活環境の改善としてとらえる必要があるかもしれません。

ひとりの人間が十分に合理的でないという問題を乗り越えるために求められるものは、その個人に対する社会からの干渉を一足飛びに正当化することではなく個々の主体の関与する意思決定を適切に構造化すること・社会を構成する「個人」の単位を適切に設計することを通じて、「必要な合理的に行動しうる」自分を作り出す可能性を探求することかもしれません。

つまり、他人の力を借りてよい決断をするうちに自分でもよりよい決断を下せるようになると同様に、法の手助けで、人はより賢明な選択ができるとの考え方もあります。選択の自由を尊重するナッジにとって、法で選択の自由を規制することは、本当の意味でのナッジなのでしょうか。しかし、多くの判断ミスや失敗が人間一般の性向によるものならば、法による選択の自由を制限することによる半強制的な支援が必要な場合もあるかもれません。

そこで、今回のコロナ対策について、外出を極力抑えてもらうために「あなたの不必要な外出をしない行動が人の命を救うのですよ」と人々の習慣的な意思決定に訴えています。決して強制ではありません。人々には選択の自由が与えられています。ナッジによる効果はどの程期待できるのでしょうか。海外の一部の国では、その施策では効果が十分期待できないとの考えのもとに、法の手助けによる人々の賢明な選択を誘導する方策がとられています。

人びとの行動の選択の自由を一部制限するこの施策は「ナッジではない」のでしょか。ここで「自由」とはそんなに大切なものなのかという疑問がわいてくると考えられます。非常に難しい問題ですね。ナッジはあくまで選択の自由を尊重していますから。
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