介護にかかわるストレス(2)~介護うつ、介護ロス~

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                       2020/04/17 第566号
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【 介護にかかわるストレス(2)~介護うつ、介護ロス~ 】

こんにちは、メンタルアドバイザーのにんじんです。

高齢化社会の中で、私たちはいつか親を介護し、自分自身も老後を迎え介護される時が来ることになります。
今、問題になっている介護に伴うストレス、その結果の介護うつ、或いは介護した方を見送った後の喪失感からいつまでも抜け出せなくなるいわゆる介護ロスなどに陥らない為にはどうすればいいのでしょうか。

介護のため、仕事も辞め親の介護に専念する、或いは他の家族の反対を押し切り一人で引き受けてしまい孤立するなどの家族間のトラブル、時間や経済的な介護の辛さなどから大きなストレスが生まれます。親のためにと一生懸命頑張ることは素晴らしいことですが、本当にそれでいいのでしょうか。本当に介護される親が望んでいることでしょうか。むしろ親は自分亡き後、介護してくれた者たちが、これからの人生を活き活き送って行って欲しいと願っているのではないでしょうか。4人の親を見送って、私はそう考えるようになりました。

それぞれのご家庭の事情もいろいろだと思われますが、介護のストレスを少しでも回避することができればと思います。 かつて、私達夫婦も介護に明け暮れた日々がありました。ご参考になればと当時を思い出しつつ、関西と博多とに離れた私達の遠距離介護について書いてみます。

遠距離介護のきっかけは、親のアルツハイマー型認知症の相談をした医師のアドバイスでした。医師に「あなた方は身内で何としても介護をしようと考えているでしょう。その気持ちは大事だけれど、家族で何としても介護しようと頑張るのは考えもの。一般に皆さんは最初、頑張って介護を始めるが、しばらくするとストレス・不満が溜まり険悪な言葉のぶつけ合いが起こる。認知症の人にとって周りのその状態はとても不安で症状が悪化してしまう。悪化すると介護者のストレスはさらに高まるといった悪循環に陥ることが多いのです。家族で何が何でも介護しなければと考えるよりも、プロに任せられる事はプロに任せなさい。家族が笑顔で顔を合わせることができるのが一番。」と言われました。医師の言葉は新鮮でした。

「プロに任せる」とはどういうことなのか、夫やその兄弟と共に、まず介護制度の勉強を始めました。幸い消費生活アドバイザーで介護福祉士の資格をもつ友人に沢山の助言をもらい、区役所の担当者に相談に行き、デイケアやグループホームそして介護施設に見学に行き、どんな選択肢があるかなど介護について一から学びました。結局、できるだけ環境を変えず、母はこれまで生活した家でヘルパーの援助とデイケアなどのサービスを受けて過ごすことを選び、私達は週末に帰る遠距離介護から始めました。幸い素晴らしいケアマネージャーに出会い、たくさんのことを教えられました。

もう一つ感謝したことは、亡き父が母の老後資金をしっかり残してくれたことです。使いやすいリフォームも、倒れて入院することになっても、一人暮らしが無理になって施設に入所する時も、週末ごとに帰省する新幹線や高速などの交通費も心配なく支出できたのは、この老後資金があったからです。私達も自分たちの老後にむけて見習いたいことだと思いました。

家での生活が無理になって、ケアマネージャーの助言もあり、母の実家の近くの介護施設を選びました。そこは窓の外には幼いころ遊んだ山や川の風景が広がっているところでした。週末、夫は母と近くの施設にいる母の妹を車に乗せて、母たちが子供の頃に遠足で行った思い出の地などをめぐり、思い出話しの聞き役をやっていました。母は穏やかな環境のおかげか、認知症もあまり進行せず、施設の介護士の方々にも大事にされ、介護する方もされる方も、余裕をもって老いの時間を紡いでいくことができました。

母と共に過ごした8年間が終わった時の虚脱感はもちろん忘れません。これが介護ロスというのかと自覚したものです。ただ、介護だけに100%の時間をさかず、仕事やボランティア、そして友人との付き合いなどの時間を維持しながら来ましたので、時と共にいつの間にか虚脱感は消えて、穏やかに見送れたという気持ちになれました。

介護はプロの手を借りながら、介護だけにのめり込まず自分の為の時間も残して、出来るだけゆったりと進めていくことかと思います。老後資金のこと、
介護制度をよく知ることも大切です。そして何より、一人で抱え込まずに困った時は誰かに相談すること、つらい時は誰かに話を聞いてもらうことかと思います。私たちの経験がお役に立てば幸いです。=============================================
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