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照葉樹林帯の自然の営みとその地域の食文化について

こんにちは。自然大好きアドバイザーのE&H(エコ&ヘルス)です。

 今回のテーマを選んだ経緯は、以前NACSの環境問題研究会のメンバーと訪れた宮崎県の綾町で、初めて「照葉樹林帯」という言葉を知ったことです。

 綾町は、1978年に「自給肥料供給施設」を作り、し尿・生ごみを回収リサイクルし、栽培した有機野菜を道の駅や県外にも販売している循環型システムの環境先端地域です。さらに、日本で最大の3500haもの照葉樹林が残っていて、1988年に「自然生態系農業の町」を宣言しています。

 照葉樹とは、常緑広葉樹で葉は光沢があり厚めで、芽は鱗片、毛、ろう質により冬の寒さと乾燥から保護されます。樹種は、サカキ、カシ、ツバキ、シイ、サザンカ、モチノキなどがあります。この樹林帯は、温暖帯のヒマラヤの中腹から亜熱帯北部の日本まで、雨量が夏季多く冬季少なく「照葉樹林帯」と呼ばれています。

 照葉樹林は、自然の森林で生物多様性の宝庫であり、野生のけものや鳥など多くの種類の生息地となっています。高度経済成長期(1966年)には、国による自然林の伐採・植林計画が持ち上がったものの、当時の郷田町長は「自然の営みのすばらしさを知り、自然を破壊してはならない」という強い信念のもと多くの計画賛成派を説得し、苦労の末、1982年に国定公園に指定されるまでにこぎつけて森は保護されました。

 また、照葉樹林帯には特有の文化が広がっていることが知られています。先ずは蚕を飼って繭から絹糸を作る技術、樹液をとり漆器をつくる技術、ワラビやクズなどの野草の根や堅果類(カシなどのドングリ、トチの実)を水にさらしてあく抜きする技法、茶の葉を加工して飲用する習慣、柑橘類やシソ類の栽培、コウジを使う酒の醸造法の存在など、食事文化と関係の深い要素があります。

 その後、ジャポニカ稲の存在、オコワ、モチ、チマキ、納豆や味噌の大豆の発酵食品があること、ナレズシがこの地帯に広く分布することなどの事実が特色として追加されました。祝い事には、赤飯のオコワでもてなす習慣、またモチゴメを粉にして型に入れてウイロウのような食べ物もあります。

このように自然環境がよく似た地域には、共通する文化や習慣が発達していることを興味深く思うと同時に人間も自然の営みの一部であることを強く感じるものです。現在のSDGsに通じるもので、再生可能な自然の存続、生物の多様性の維持が保たれて、その中で人間や動物が生き生きと生存できるものだと感じます。

 私は子供のころ「健全な精神は、健全な肉体に宿る」という言葉(いろいろな説があるようですが!)に惹かれました。現在の社会では、もう一つ加えたいと思います。「健全な精神と肉体は、健全で再生可能な自然環境と健全な生活文化の環境に宿る」と言いたいです。スマホ、ゲ―ム、デジタル社会、コンクリートジャングルでの生活環境では、こころの時代と言われている現在、精神の健全さも保てないのではないでしょうか? 

 人間とチンパンジーは、DNAが2%しか違わないらしいです。チンパンジーのように森の中で生活すれば精神の病は少なくなるのではないでしょうか! 私は、できるだけ自然の環境に身を置いてこころを安らかにするように、また、多面的機能のある里山を守る活動にもより一層、注力していきたいと思っています。       

■参考資料
「栽培植物と農耕の起源」中尾佐助
「照葉樹林文化とは何か」「照葉樹林帯の食文化の講演記録」佐々木高明
「結いのこころ」郷田實、郷田美紀子
「綾町ホームページ」「林野庁ホームページ」
「綾町訪問レポート」NACS神澤佳子

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