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お試しなのに2回目の商品が届く?

こんにちは。旅のアドバイザーのさくらです。

今回は旅のお話はお休みして、最近増えているインターネット通販の「定期購入」トラブルについて書きます。

スマートフォンやパソコンで、SNSやInstagram、YouTube、検索サイトを見ている時に「お試し半額 定期縛りなし」「お試し80%オフ 二回目は送りません」という広告を見かけませんか? 紹介してる商品は、化粧品・ダイエットサプリ・育毛剤・男性用強壮剤・シャンプーなどが多いようです。

気になった商品が安価で試せると思って注文すると、1か月後に同じ商品が高い請求書と共に届き、驚いて販売元に連絡すると定期購入になっているので、返品できないと言われたという相談が消費生活センターに多く寄せられています。相談者の年齢は10代から80歳代まで男女を問わずです。

商品を定期的に送る契約を「定期購入」と呼び、日常的に使用している商品や水などの重いものであれば便利なシステムです。しかし「お試し」という言葉から定期購入の契約になるとは通常思いませんよね。この心理を利用し、うまく法の抜け穴をついたダークパターンの広告が溢れています。

インターネット通販は特定商取引法で通信販売としての規制があります。10年ほど前から「お試し80%オフ」という広告を見て注文したら、実際は5回の受け取りが条件となっていた。2回目が送られてきて驚いて電話したら、
・5回受け取らないと解約できない
・2回目の代金を払ったら中途解約に応じる
・5回の受け取りを条件として1回目を格安にしている。1回でやめるなら定価との差額を払え
と言われます。根拠として「利用規約にきちんと書いてある」という悪質業者が横行し、軽い気持ちで80%オフの1回限りのお試しを注文したつもりが、数万円を払うことになったという被害が多く出ました。

通信販売は、クーリング・オフの対象外ですし、インターネット通販は利用規約などに明記してあれば、規約の内容を含めた契約条件で申し込みをしたとみなすので、不良品以外は返品・交換には応じないと書かれていれば有効ですし、5回の受け取りが条件ですと書いてあれば、見ていなかったでは済まされないのです。でも現実は利用規約や返品・解約条件までよく確認して注文する人は少数派です。

そこで、平成28年に特定商取引法を改正し、定期購入契約においては、受取回数、各回の代金、消費者が支払うことになる代金の総額を「注文する」というボタンの近く(スクロールしなくても見える範囲)に明記するよう義務付けました。これでお試しと思ったら定期購入だったというトラブルは少し減りましたし、消費生活センターも実際に注文画面を確認し、支払総額などの記載がなされていない場合は、特定商取引法違反を理由に解約に応じるよう斡旋が可能でした。

しかし、最近は回数縛りのない定期購入というサブスクリプションのような手法に進化しています。5回の受け取りが条件なら、上記の様な支払総額等の明記が義務です。そこで1回でやめることができるが、消費者がやめると連絡しなければ2回目以降も自動的に送るという契約内容です。広告画面には「定期お試し初回 500円 90%オフ 送料無料」等と記載し、広告画面や利用規約、注文画面等にも、2回目以降も自動的に送る、2回目以降は商品代金5000円、送料500円、やめたい場合は次回発送日の○日前までに電話でカスタマーセンターに連絡くださいと書かれています。その上、1回目の商品の納品書等にも「次回発送予定日 ○月○日」とまで書いてあることが多いのですが、消費者は「お試し」なので1回限りという思い込みから、注文する際や1回目の商品が届いたときにも、「2回目」「次回」という言葉に全く目が留まらず、2回目が届いて驚くことになります。

他にもアフィリエイト広告動画で「2回目は送りません」と何度か流した後に最後は「簡単な手続きで2回目は送りません」になります。「簡単な手続き=自分で解約すると期限までに電話する」ことなのですが、2回目は送ってこないと頭に刷り込まれているので、注文画面や利用規約、納品書に「2回目」「次回発送日」という言葉があっても気が付かないのです。

このように人の心理を巧みに利用して、消費者を騙し、判断を誤らせる仕組みはダークパターンのひとつです。ダークパターンについては国民生活センターが発行する「国民生活 2024年3月号」に解説記事が掲載されていますので参考にしてください。
https://www.kokusen.go.jp/pdf_dl/wko/wko-202403.pdf

お試し広告を見て心が動いたとき、見て欲しいチェックリストを国民生活センターが作っています。とても分かりやすく1枚に纏められているので、ぜひ回りの方にもご紹介ください。
・見守り新鮮情報 第487号 国民生活センター発行
「その申し込み、定期購入ではありませんか? 最終確認画面チェックリスト」
https://www.kokusen.go.jp/mimamori/pdf/shinsen487.pdf

中には、本当にお試しで1回しか送ってこないところもあります。誰もがよく知る企業も多く含まれています。初回無料や半額で確かにお試しは出来るのですが、そのあとに「使われてどうでしたか?」という電話がかかってきます。とても丁寧な対応なのですが、1か月だけでは効果が分かりにくいのでしばらく続けてみられませんかと、巧みに継続を勧められます。企業側からすると無料や半額で商品を配ってばかりでは赤字ですから、無料や格安で試してもらって、一定数以上が気に入って継続してくれれば採算が取れるという計算のうえでお試しキャンペーンをしているのですから、当然の行動と言えます。

格安でお試しだけで終わろうと思っている消費者と、利益を追求する企業との駆け引きに巻きこまれたくなければ、お試しには手を出さないのもひとつの選択肢だと思います。

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