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医薬品の流通

こんにちは。お薬アドバイザーの井田です。

コロナ禍が続く中、ワクチンや治療薬の開発状況等、医薬品が担う役割への期待が強まっていますが、その陰でそれら医薬品がその品質を確保し安定的に病院や開業医、薬局等の医療機関に届けられる仕組みについて、殆どの人は知るところがないのではないでしょうか?

処方箋薬局に行けば当たり前のように医師から処方された医薬品を受け取ることができ、手術や治療で入院したときも必要に応じて何の不思議もなく求められる医薬品がきちっと投与される仕組みが医療現場の向こうで機能しています。
これら医薬品の流通を担っているのは、医薬品卸売業者です。製薬企業から医薬品を仕入れ、厳格に管理された環境のもと適宜医療機関からの需要に対応しています。

業界団体の「日本医薬品卸売業連合会」に加盟している企業は現在約70社ありますが、これらの企業名は日々マスコミでのコマーシャルに流れることもなく、その存在や果たす機能に対する一般の人々の認知度は極めて低いものですが、全国津々浦々、あらゆる医薬品、診断薬、医療機器等を医療機関に届け、日々医療を縁の下から支えています。

医薬品卸売業に求められる必須の条件は1.医薬品の安定供給、2.医薬品の品質管理、3.医薬品の情報提供の3点です。1については多種多様な疾病に対するべく医薬品の種類は一般の消費財に対し比べ物にならない程膨大であり、なおかつ医療機関の求めに応じ常に供給できる体制を備えなければなりません。地震、台風等いかなる自然災害の下でも人命にかかわる医薬品の確実な供給体制が求められます。一般消費財と違い欠品は決して許されません。2については生命関連物質である医療関連品の流通を担う企業として、その貯蔵、保管、試験設備の完備等について法律で厳重にその責務が定められています。さらに取り扱いの難しい医薬品や国際的に複雑な流通環境の中でそれらの品質を確保すべくGDP(Good Distribution Practice)が定められ、厳格に運用されています。3については医療機関に日々直に接する企業として、常時その副作用情報等の安全性情報や品質情報等を提供、収集する立場にあり、医薬品の適正使用への貢献が強く求められています。

一般社会からは目立たない企業活動ですが、以上のように医療の現場では実に大きな役割を担っています。医薬品卸売企業はもともと薬局の外売り部門が店頭売りから分離独立して発展したケースが多く、それぞれの地域に密着した中小企業が多かったのですが、20世紀後半に入り業界内で合従連衡が進み企業も大きくなりました。昨今は医薬品市場の競争激化、新型コロナワクチン配送の業務負担、後発医薬品(ジェネリック医薬品)の品質問題に関わる回収作業等で、経営的にもかなり厳しい状況が続いておりますが、医療を支える企業としての強い自覚と社会へのより高い貢献を追求する経営理念を掲げ、日々経営努力を続けています。

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