レジ袋有料化は有効か?パート2

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                       2020/07/17 第579号
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【 レジ袋有料化は有効か?パート2 】

暮らしいきいきアドバイザーの晴兵衛です。

7月から小売店で無償配布されていたレジ袋が有料になりました。
しかし、そこには有料化の除外対象が3種類あります。

1.プラスティックフィルムの厚さが50μm以上のもの
2.海洋生分解性プラスティックの配合率が100%のもの
3.バイオマス素材の配合率が25%以上のもの

これらは今後も無償で配布してもよいことになります。

フィルムの厚さが50μm以上のものは、レジ袋としてリユースが可能という理由です。海洋生分解性プラスティック、バイオマス素材というのは、いきなり登場してきますが、耳慣れない言葉です。

まず、海洋生分解性プラスティックから説明します。読んで字の通り、海の微生物によって分解される素材でエステル系、セルロース系などがありますが流通量はごくわずかです。

なぜこのようなカテゴリーの素材が登場したのでしょうか。

死んだ海洋生物の胃から、レジ袋と思われるプラスティックの塊が出てきた事例が何件か報告されたことは周知のとおりです。であれば、海洋微生物の働きで、分解してしまうものであれば、もし間違って投棄されても海洋生物に影響を及ぼさないだろうという理由です。ただ、ここで注目すべきは、出来た製品が定められた試験法をクリアすれば、使われる原料は、天然由来も石油原料でも使用可能ということです。
海洋生分解性プラスティックを平易な言葉に置き換えると、「海洋で蓄積されないプラスティック」になります。

バイオマスとは、現存する生物が、太陽のエネルギーを使って水と二酸化炭素から作り出す全てのものを指します。(化石資源以外)
これらの資源から最終的に作り出される素材をバイオマス素材といいます。身近な例では、トウモロコシ、砂糖きびから作られる工業用エタノール、菜種から作られるディーゼル用燃料があります。バイオマス原料で出来たポリエチレン、PET等も有りますが、見た目は石油系と全く区別はつきません。

過去に排出された二酸化炭素を吸収してバイオマスとなり、それを出発原料としてプラスティク素材を作ります。これがやがて廃棄されて、焼却炉で燃やされて、二酸化炭素として排出されます。回りくどい言い方ですが、過去に吸収された二酸化炭素と同量をまた排出しますのでプラスマイナスゼロ、即ち、「カーボンニュートラル プラスティック」になります。

前回でも述べましたが、いずれのプラスティックレジ袋も日本が誇る先端技術であり、本来は付加価値をつけて販売してもおかしくない商品です。因みに、ホームセンターで販売されている無地のレジ袋(普通サイズ)は、100枚入りで200円程度ですので、1枚当たり約2円です。

従来から無償で配布されている低コストのものを有償化し、生産量もわずかである海洋生分解、バイオマス素材は高コストにも拘わらず無償とする訳で、経済原則からすると、極めて歪な関係となります。

日本全体で廃棄されるプラスティックは、年間900万トンです。そのうち、レジ袋は20万トンで全体の約2%に過ぎません。日本が大量の廃プラスティックを輸出していた中国が、2018年に廃プラスティックの輸入禁止に踏み切りました。その為、日本の廃プラスティックは行き場を失いつつあります。

レジ袋の有料化は、プラスティックゴミ削減の特効薬とはなりませんが、消費者一人ひとりがこのような規制に至った背景を理解し、消費スタイルの見直しをする機会としなくてはなりません。

【参考資料】
・水産工学【研究論文】海水中における生分解性プラスティックの分解
・筆者講演資料「みんなではじめよう!エシカル消費」徳島
・「プラスティック資源循環をめぐる最近の動向」経済産業省
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