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庭には何を植えますか

こんにちは、身近な自然観察アドバイザーのmimosaです。

一昨年の夏(2019年8月)、「庭の管理はしていますか」というタイトルでメルマガを書きました。樹木は伸び放題、草ぼうぼうの庭を植木屋さんに依頼してきれいにリセットしてもらい、その後は自分で手入れしながら管理していこう、と思っていました。あれから2年経ちましたが、家族のケアの時間が増えたことや仕事もそれなりに忙しかったことなどで、そのもくろみは実現できませんでした。放置し続けた庭は、すっかり元の木阿弥どころか、さらに成長した樹木でうっそうとして、暗くじめじめした近寄りがたい場所になってしまいました。

前回のメルマガでは、夏になるとつる植物のノウゼンカズラに庭のほぼ半分が覆われて、一日花なので、連日歩道に落下する花の掃除が大変であることを書きました。一昨年に強めの剪定をしたので、昨年は花が少なめでしたが、今年はすっかり勢いを取り戻し、完全復活です。鮮やかなオレンジ色の花がたわわに咲き誇り、毎日100~200以上の花が散っても、つぼみは無数に付いており、次々に開く美しい花を長期間楽しむことができます。管理する側にはとても厄介ですが、その生命力の強さには感心させられます。

ノウゼンカズラとともに、庭全体を暗くしているのは、クロガネモチです。半世紀以上前に、最初に庭を整備した植木屋さんが、よかれと勝手に植えた木で、枝を四方八方に広げて照りのある濃い緑の葉を密に付けています。高さは4メートル以上、木の太さも根元は30センチ近くあるでしょうか。常緑樹といえども葉は落ちますが、掃除はしていませんので、根元周辺に茶色くくすんだ落ち葉が汚く積もっています。常緑樹の葉は、厚みがあり樹脂が多いためか、落葉樹の葉に比べると微生物などによって分解されにくいようです。それでも、この落葉が時間をかけて堆肥となり、木の養分になっているのでしょう。

改めてクロガネモチについて調べてみたところ、日本原産のモチノキの仲間で、モチノキ科モチノキ属、高さ10~20メートルになる常緑高木とのこと。高木を狭い庭に植えるのはどうなのかと思いましたが、刈り込みに耐えるので、ある程度小さく保つことができるのだそうです。また、クロガネモチは、その名が「苦労がなく金持ち」に通じるため、縁起のいい木とされていることを知って、植木屋さんが選んだことにも納得できました。

生物多様性などの観点からみても、個人的な好みでも、庭に植える植物は、住んでいる地域に昔から自生していた植物を植えるのが理想です。鳥類や昆虫類などは、公園や社寺林、街路樹、各庭の草や木を点々とたどりながら移動するので、遠く離れた里山との繋がりができます。地域の里山の馴染みの植物を植えることは在来の生きものにとっても好ましく、昔から生育・生息している生きものにとって棲みやすい環境は、人にとっても住みやすい環境なのだと思います。

色とりどりの園芸種、バラやハーブなどを植えるのも楽しいですが、できれば里山でふつうに見られる在来の植物、例えば、ノアザミ、ホタルブクロ、ホトトギス、オミナエシ、ツリガネニンジンなどを家の庭に植えてみるのも素敵だと思います。ただし、これらの里山で普通に見られそうな植物でさえも、都道府県や市町によっては、絶滅危惧種などに指定されている場合がありますので、採取する場合は十分な注意が必要です。そのような心配のなさそうな、ありふれた道ばたの草花、スミレ類やハコベ、ドクダミなど、可愛いと感じた野の花を寄せ植えにして飾っても風情がありますね。

気をつけたいのは、希少なランの仲間をはじめとする、人気の山野草をネットなどで購入する場合です。可憐で美しい見た目だけで選ぶのではなく、これらについても絶滅の危険性を調べておくことが大事です。また、苗の採種場所など出所や履歴(トレーサビリティー)を確認できる場合はチェックしておきましょう。地域の植物園などには、園芸店が併設されていることもよくありますので、実際に植物を見て、栽培環境や植える時期など育て方の基本を尋ねながら選ぶのもいいかもしれません。

我が家の庭の植物たちについては、今後、植木屋さんとも相談しながら、残すか伐るかなど検討していくつもりです。今は、狭いながらもせっかくの庭が懸案事項になってしまっているのは残念なことです。一番身近な自然である庭は、眺めると安心して、ほっとできる懐かしい場所であってほしいものです。これから、少しずつ手入れして、理想に近づけていきたいと思っています。

参考データベース:日本のレッドデータ検索システム http://jpnrdb.com/

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