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冬の香り

柚子を買ってきた。

本当は柿を買いたかったのだけど、
好きな農家さんの柿がもう無かったのだ。

『もしかしたら今日は並んでいるかも・・』
そんな淡い期待が、行っては消えるようになってもう二週間。

今年の柿はもう終わったのだ。


季節も、果物や野菜の旬も、
折り重なるように次々にやってくる。

見つける度に『もうこの時期なんだ!』と嬉しくなり

旬を迎え美味しさを増すと
今年も味わえた幸せに感動する。

少し飽きた頃には味や食感も落ちてゆき

また新たな旬がやってくる。


柿の終わりを納得するように進んで行くと、柚子が少しだけ並んでいた。

その瞬間、柚子が出てきた嬉しさでいっぱいになった。


柚子の香りがこんなにも立つことを
ここに住んで買うようになるまでは知らなかった。

たった一つ柚子があるだけで
なんとも言えない良い香りで部屋が満たされる。

鼻を近付け思い切り吸いこんでも
噎せることも不快に感じることもない

自然な好い香り。


香りを楽しむために置いておき

皮が張りを失い香りが弱くなる頃にいただいて

また新しい柚子を買ってくる。


寒い冬がぱあっと華やぐ

私の冬の香り。


『柿をもっと味わいたかった。』
そんな風に後ろを向いていた心が

柚子のお陰で今 ここに戻ってきた。


雨上がりの朝、
昨日まで涼しくも感じていた風が

はっきりと寒さに変わった。

もうしっかり秋で、これから冬を迎える。


リビングいっぱいに広がる甘く爽やかな香りに心が弾んだ。

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