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若い頃にやった一番衝撃的なアルバイト

あれはたしか20代の終りの頃だった。

舞台が入っては1ヶ月ほど休んでバイトをクビになり、また新しい仕事を探す日々。

その日も新たに警備員のバイトの面接を受けようとしていた。

指定場所のビルの中にたくさんの会社が入っており、どこが面接場所かわからなかった僕は、1階にあった人材派遣会社で場所を聞いてみることにした。

快く教えてくれたおじさんに礼を言って警備員の面接に。しかしどうも条件が合わずそのまま履歴書も返してもらって帰ることにした。

帰りがけにさきほど場所を教えてくれた人材派遣会社のおじさんに一言お礼を言って帰ろうと思った。

ドアを開けるとおじさんは電話をしていた。どうやら仕事の電話のようだった。

僕は小声で「先程はどうも」と言い帰ろうとすると、なにやらおじさんが電話をしながら僕を手招きしている。そしてそこにあるイスに座るよう促した。

僕はなんのことやらわからず言われるがままに座って待っていた。

その間のおじさんの電話の内容はこんな感じだ。

「いや~今人少なくてさ~。厳しいのよ。うんうん。え?今日?今日か~う~ん」

そして突然おじさんが電話しながら僕に尋ねた。

「今日空いてる?」

さらに混乱した僕は「空いては……いますけど……?」

と言うと、おじさんはすかさず電話に戻って

「見つかった見つかった!」

と言って業務連絡のような会話をして電話を切った。

「えっと。名前なんだっけ?」

なんだっけも何もあなたと僕は元々何の関係も無い。

「倉沢です」

「倉沢くんね。履歴書持ってる?」

「いや、さっき面接で返してもらったんで持ってはいますけど」

履歴書を取りあげられると、

「じゃあ行こうか」

とおじさんは言い、僕は地下の駐車場に連れていかれた。

「じゃあ乗って」

車に案内されるとさすがに僕も怖くなって

「すいません、どこ行くんですか?」

と聞いた。

「仕事仕事。探してんでしょ?」

「そりゃまあ」

「じゃあ行こう」

と言って車は走り出した。

そして高速に乗り、どこかわからない場所でファミレスに入り1000円を渡され

「ここで待ってて」

と言っておじさんは帰ってしまった。

しばらくするとまた見知らぬおじさんが

「きみが倉沢君か」

と言ってやってきた。

倉沢の名前が完全に一人歩きしている。

また別の車に乗せられ、最終的に着いたのは千葉県の野田という所にある工場で、

そこで僕は延々と、

ケーキを入れる前の箱に黒い点があるか無いかを仕分けるという、果たしてこの仕事が世の中に必要なのかわからない仕事をやらされたとさ。



これもう拉致だろ!

と言いつつも、その仕事その後4回ぐらいやったけど。

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