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そんなラフなパスタ屋あるかよ

ラフなパスタ屋の話なんだけどね。

まぁ聞いてよ、今日見た夢のお話で、私は彼氏と二人で久しぶりのデートに勤しんでたわけ。

全く何を話したか覚えてないけど、食料品売り場の電気が点滅して商品棚も穴だらけな廃墟みたいなショッピングモールを二人で歩いてた。
コストコのでっかいカートを押しながら、ふと回された手の暖かさなんかを感じて酷く取り乱してみたり。

お菓子売り場でも案の定ろくなものが残ってないし、薄暗くて気味が悪い。けど、そんな圧倒的非日常感に興奮していたりとか。とにかく馬鹿やってたんだよ。

「お腹すいたしなんか食べたいー!あっ、イタリアンイタリアン。ピザ食べましょうピザ」
駐車場の真横、冬の風が扉の開閉とともに流れ込む場所に、随分モダンなイタリアンレストラン。
席を取ろうと店に入った途端、つかつかと先を行く恋人。それに続いて席に着いたら店員さんがやってきて
「久しぶりじゃん。何食うの?」
聞けばここは彼氏の元バ先だったようで、知った顔でメニューを頼む…と思ったら

隣のカウンターの山盛りのナポリタンを手に取って机に置く。そのナポリタンを口に運びつつ
「適当にピザ。マルゲリータとか、六枚切り。いい?」
と私に聞く。

こいつ何???元バ先とはいえなんでこんなに横柄なんだ??????

と思いつつ空腹なのでじゃあそれでと頷いてみた。

「そんでそいつがほんと使えなくてさ」
「俺だったら絶対そんなことしないのに」
「いやほんとにウザイ。マジで」

女より女らしい人の愚痴を淡々と私にきかせる恋人。なんだかそれが信じられなくて、私は目の前の恋人に聞く

「ねぇ、あんた本当に○○だよね?」

そう聞いた途端。周りが静かになって、気づけば二人だけだった。目の前の人はは急に優しくなって

「よくわかったね。違うよ」

と伝票を手に取る。
それを聞いて、私はどうしようもなく悲しくなって泣きじゃくった。本当の恋人を失って、その幻覚を見ていたような、いい夢を見ていてそれが綻んだかのような、そんな気分だった。
伝票に書かれたピザ2枚、1枚1960円の馬鹿みたいに高いぼったくり価格。驚きもしなかった。

「どっちが払う?」

優しい彼が私に問う。
私の頭の中は、払える金額だな、としか思ってなかった。というか払わせて欲しいと思っていた。追悼の気持ちにでもなったつもりなんだろうか。まだ一口も食べていないナポリタンも、なんのピザを頼んだのかも知らない私の空腹の腹に会いたい人に会えた安堵と嘘っぱちだったやるせなさが広がっていった。


そうして目が覚めた


目が覚めたら時刻は8時30分。完全なる遅刻である。泣き腫らした目はかわいて開きずらくて仕方ない。また夢の中で泣いて、それとリンクして現実でも泣いていたようだ。

恋人は、昨日と一昨日共通テストを受けてきたばかりである。全て終わったら、一緒にパスタ屋に行こう。ピザも食べよう。私が払うから。


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