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山岡緑さんの造形作品によるボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」の再現

山岡緑さんは、広島県福山市在住の造形作家です。「わたし」とは何か?に関わる奥深い造形作品を制作され、広島・岡山を中心に活躍されています。

筆者がはじめて山岡さんとお会いしたのは、岡山市表町のギャラリー、テトラヘロドンで山岡緑 造形展「わたしの中の私」(2021.9.22〜9.27)が開催されたときです。幸運にも、ちょうど在廊されていた山岡さんと作品についてお話しすることができました。
山岡さんは、とても気立てのよい人だったのが印象に残りました。

このとき山岡さんの「ブサネコ」シリーズの中で、内面性に最も温度を感じた個体を購入しました。

山岡緑・作「ブサネコ」2021年 筆者蔵

その後、気にかけてはいたのですが、この個体は、官能性をユーモアの域に昇華できず、デビューの機会がないままでした。

このたび山岡さんは、東京都渋谷区のピカレスギャラリーで開催される、「HOU展」(2023.1.7~1.29)に同じ意匠の個体を用いた作品を出品されました。
山岡さんのインスタグラムによれば、「ヴィーナスの誕生?」という愛らしい、ユーモラスな造形でした。(作品の画像は、こちら

筆者は、賞賛と祝福に東京の会場へ駆けつけるのが、ままなりませんので、山岡さんへのエールを込めて、所蔵するブサネコのデビューを企画しました。

企画に際して、モチーフにしたのは、イタリア・フィレンッェでルネッサンス期に活躍した画家、サンドロ・ボッティチェリ(1445ー1510)による「ヴィーナスの誕生」です。

サンドロ・ボッティチェリ・作「ヴィーナスの誕生」1483年頃 ウフィツィ美術館蔵 1)

絵の画面では、成熟した女性の姿で海の中から生まれた、美と愛の女神ヴィーナスが、貝の上に立っています。ヴィーナスは、海の上を西風の神ゼフィロスが吹きかける優しい風に運ばれて、キプロス島に到着します(ゼフィロスは、大地の女神クロリスを伴っています)。島の岸辺では、季節と時間の女神ホーラが身を包むためのマントをもって駆けつけています。

再現にあたって、ヴィーナスは、筆者が所蔵するブサネコに演じてもらいました。
ここは、日本なので、貝の代わりに、漆器のお椀にのってもらいました。

ゼフィロス、クロリス、ホーラは、それぞれ海野千尋さんの陶布人形に演じてもらいます。

ゼフィロスが身につけている布と、ホーラがもっているマントは、染色作家、川月紅さんによるストールを用いました。

山岡緑「ヴィーナスの誕生?」への共鳴作品「再現・ヴィーナスの誕生」

この空気感はいかがでしょうか?

山岡緑さんのこれからの益々のご活躍をお祈りします。


出演
ヴィーナス:ブサネコ
制作:山岡緑

ゼフィロス:寒がりやさん
クロリス:空を見ている子
ホーラ:ほんのり桃色のお嬢さん
制作:海野千尋

文献
1) 平松洋・著:名画 絶世の美女. 新人物往来社, 2011, P12-13

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