原在加さんのフクロウとヌートリア
画像は、どちらもフクロウの置物です。見かけは異質な物同士なのに、並べてみると、不思議としっくりと馴染んだ風景になります。
左側の木彫りのフクロウは、北海道大雪山を旅した折、アイヌ伝統の舞踊や祭事を行う集団の露店で購入したものです。自然の木切れの形を生かして、木と対話しながら、即興的に彫像してあります。鋭く清廉な精神性と、霊力の存在を感じますので、本物のアイヌの手工芸品であると信じます。
右側の小さな陶器のピッチャーは、倉敷市真備町の陶芸家・原 在加さんの作品です。真備町の豪雨災害でアトリエが被災し、元の場所に復興したアトリエで製作した最新作です。
フクロウを造形してあるのかどうかは、作者に確認していないので定かではありませんが、体を垂直に起こした立ち姿は、前かがみとなるヒヨコや小鳥ではなくて、フクロウのしるしです。ずんぐりむっくりの胴体につぶらな瞳が描かれており、一見、ゆるキャラのようです。しかし、その姿には、真っ直ぐな気質と、どっしりとした不動性を感じます。
番外編
原在加さんの、ヌートリアをモチーフにした、歯ブラシ立てと箸置きです。並べると、親子のように見えます。
ヌートリアは、南アメリカ原産の水辺に住む哺乳類です。毛皮を採るために輸入して養殖されていた個体が、放たれて日本で野生化しました。今では、侵略的外来種として駆除の対象になっていて、決して人気のキャラクターになれないレッテルを貼られています。
原さんのヌートリアは、子どもはあどけない表情をしていますが、親は、少し首を傾げて哀しい表情をしています。眺めていると、私たちが生きている間に遭遇するどうにもならなさを、抱きしめて生きて行けそうです。
日用品に込められた、人を支えてくれる哀しみが、原・作品の、工芸品を越えたアート性と言えます。
(2021年7月13日)
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